親友
「おっはよー! おにいちゃん! 起きて! 今日はミルフィーユ魔法学院の入学試験でしょ!」
シアラの元気な声が、部屋中に響き渡る。
「んーーー、まだ寝れる……あと五分……」
布団をかぶったまま微動だにしないミケチ。しかし——。
ドスッ!
シアラの強烈な蹴りが、容赦なくミケチの腹にめり込む。
「ぐへぇ……」
「だから言ったでしょ! いつもギリギリまで寝てるから、全部の予定がギリギリになるの!」
朝からシアラの小言が炸裂するが、ミケチはむしろニコニコしている。そう、彼は重度のシスコンだった。怒っているシアラさえも、可愛くて仕方がない。
「おいおい、シアラの蹴りは相変わらず容赦ないな……」
「むしろ手加減してるんだけど?」
「ほんと? もう一回試してみようかな?」
「調子乗るな、バカお兄ちゃん!」
ふくれっ面のシアラを見て、ミケチは満足そうに笑いながら、ようやく布団をはねのけた。
眠い目をこすりつつ、ゆっくり階段を降りる。
「ミケチ、おはよう〜!」
「おはようございます! ミアお母様! どうしたんですか、このご馳走は?」
食堂に入ると、テーブルの上には豪華な朝食がずらりと並んでいた。キラキラと輝くスクランブルエッグ、湯気の立つスープ、ジューシーなベーコン、そして焼きたてのパン。まるで宴のような朝食だ。
「今日は名門ミルフィーユ魔法学院の入学試験でしょ! 試験に合格できるよう、腕によりをかけて作ったのよ!」
「ミアお母様……朝からこんなに食べられないです……」
「ふぇぇ……そんなぁ……朝から一生懸命作ったのに……」
母親が今にも泣きそうな顔をする。
「おいミケチ、お母さんが一生懸命作ったのになにぬかしとんじゃ」
「はぃぃ……いただきます!」
父親ルーグの圧に負け、ミケチはすかさずご飯をかき込む。
「んぐっ、んぐっ……美味しい!」
「うむ、それでいい」
ルーグは満足そうにうなずく。食卓の雰囲気は、いつものように賑やかだった。
しかし——。
「おにいちゃん! 時間時間! 遅刻するよ!」
シアラの声に、ミケチは思わず時計を見る。
「やばっ! 待ち合わせに遅刻する!」
急いで玄関へ向かうミケチ。だが、そこで立ち止まり、くるりと振り返る。
「シアラ! いってきますのチューして〜!」
「きもい! はやく行け!」
シアラの拳が飛んでくる前に、ミケチは素早く玄関を飛び出した。
玄関を出ると、一人の少年が待っていた。
「ミケチ! 遅いぞ!」
鋭いツッコミを入れたのはノヴァ。近所に住む幼馴染で、小さい頃から毎日遊んだり、魔法の特訓をしたりしてきた親友だ。
「ごめんごめん! 入学試験、頑張ろうな!」
「おう! 俺たちなら余裕だ!」
ミルフィーユ魔法学院——この学校は、ノヴァの父親オマールが設立し、その息子であるノヴァと、オマールの旧友であるルーグの息子ミケチは、当然のように入学試験を受けることになっていた。
だが、この学園は名門中の名門。入学試験の難易度は非常に高く、簡単には入れないと言われている。
「なぁノヴァ、ミルフィーユ魔法学院の入学試験って実技試験なんだろ? どんな内容か、親父さんから聞いてない?」
「それがさ……うちの親父、そういうとこマジでしっかりしててさ。『息子だからって特別扱いはしない』とか言って、何も教えてくれねぇんだよ!」
「オマールさんらしいな……」
二人が話しているうちに、目の前に巨大な学園が姿を現す。
荘厳な門、高くそびえる塔、敷地内を飛び交う魔導士たち——まるで別世界のような光景だった。
「なぁミケチ……周り、みんな強そうだな……試験、大丈夫かな……?」
ノヴァが少し不安そうに呟く。
「おいおい、さっきまでの威勢はどこいったんだよ? 大丈夫だって! 僕たちならきっと合格できる!」
「……昨晩、親父にな……『息子だからって容赦はしない。お前もお前の友達も、入学基準を満たさなければ、問答無用で不合格にする』って言われたんだよ……」
「ノヴァの親父さん、厳しいな……まあでも、僕たちなら大丈夫!」
「……そうだな。ありがとう、ミケチ!」
ノヴァが拳を握りしめ、決意を固める。
学校の入り口に立つとたくさんの受験生たちが試験会場へと向かっている。 皆強者そうな人たちばかり、
すると1人の女の子がが声をかけてきた
「君達すごくつよそうだね!!私ウィズリーっていうの!よろしく!君たちの名前おしえてよ!」
「僕はミケチこっちは幼い頃からの幼馴染で親友のノヴァ!よろしくね!」
「ミケチ!ノヴァ!よろしくね!試験お互い頑張ろう
!一緒に学校生活送れるのたのしみにしてる!」
と言いセカセカと走っていった。
すると——。
「あっ、向こうで試験の説明が始まるみたいだぞ! 早く行こう!」
「おう!」
二人は試験会場へと駆け出した。
——ミルフィーユ魔法学院入学試験、ついに開始。
果たしてノヴァとミケチ二人は、無事に合格できるのか——。