追及者 2
黒魔法使い達については、この国の上層部の人間が隠している部分があるということはまず間違いないだろう。
イカゴへの遠征の唯一の生還者であるユハと話をしたい気持ちはあったが、変に勘ぐっていることを悟られてはまずい。ただでさえ、私は彼らに疑われてしまっている節がある。あまり信用されていないのだ。
こちらが疑っていることを相手に悟られれば、更に問題が隠されることになりかねない。スムーズに事を運ぶためには、協力者の存在が必要であった。
「で、私が選ばれたってわけ!?」
ニラードは少し不満な様子だ。
「知ってる!?私、この城の中で1番か2番目に忙しいんだけど!」
「今の時期しか動けないのだ。王とユハの意識がないうちに動けるところは動きたい」
「まあ、アンタの方から頼ってくれてるところは嬉しいんだけどね。こっちもやること盛りだくさんなの!だからできないことはできないってハッキリ言うわよ!?」
「ああ、それでいい。城の中で王の側に染まっていない人間はそういないからな」
「でも、もうちょっと簡単な方法はない訳?ヲサイヤはどうだったの?」
「あいつの立ち位置はよく分からない。元々は王家に忠誠を誓う部隊にいた筈なのだが、どうも最近揺らぎが見え始めているのだ。自分の欲というか、彼独特の野望のようなものに惑わされている」
「元々周りが見えなくなるところはあったけどね。でもアンタ程協調性のない人間じゃなかったねえ」
ニラードはくすっと笑っている。もしこういう立場でなかったのなら、彼女は笑う前にぶっとばされていることだろう。
「この国が国民に真実を隠しているのだとすれば、それがそもそもの問題になるだろう。それが明らかにできる立場にあるのは、私たちしかいない」
「アンタの思い過ごしじゃないといいけどね。もし失敗したら、関係性を修復するのは難しいわよ?それに何より、相手方がかなりやり手じゃない」
「そうだな。構造としては、私、お前を始めとする国民サイドに対し、王や執事、ユハを含む王家の人間が背いているといったところだろう」
「話を大きくしすぎな感はあるけどね。結局アンタがやりたいことは、自分の知りたいことを調査するってことでしょ?」
「そうだ。そしてそれを国民に知らしめる必要がある」
「どうしてそんなことにこだわるわけ?」
「長い間隠されていた情報によって、私達夫婦が滅びの道を辿ったからだ」
スニークの周りに重い空気が漂い始める。ここからは、誰も知らない二人の過去の物語へとコマが進んでいく。
「神が創ったこの世界が間違っていると、この私が証明し続けてやる。そして最後に、神の首を捻じ切って ゴミ溜めの隣に飾ってやる」