追跡者 2
一度森を抜け、少し開けた視界に出る。木があまり生えていない。そのため空からの日差しが入って来て少し暖かい。今日の休憩場所及び今後の拠点にするのにはもってこいの地形だ。一同腰を下ろす。勿論円形で皆外を向く陣営だ。15人が円の外を向いて見張り、5人は中で寝たり記録を残したり、自由に活動していていい。
暫くその場に慣れると、今度はこの円を中心に探索を始めるようになる。2人1組5チームが常に外部を探索し、残りの10人は同じように円を作り各々休憩や記録に勤しむようになった。
「ニールさん、こっちに来てください!」
ニールは起こされた。森の中ではなく、広場内を探索していたメンバーに声をかけられたのである。
「どうしたのですか?」
「なんか変な花があるんですよ」
「花?見たことがないというだけのただの花なのでは?」
「そうではないんです、話しかけてくるんですよ」
「話しかけてくる?」話に聞くより実際に体験してみた方が早い。ニール達は話のあった花園の方へと歩いて行く。
確かに変と言えば変だ。全体的な色が灰色で、正直綺麗な印象はない。それに、同じ種類の花の集まりかと思えば、そうでもないらしい。微妙に一つひとつが違って見える。
「こいつです」
仲間が指さした方を見る。これも何とも言えない普通の花と言えば花だが、少し丈が長く分かり易い。
「これが話すんですか?」ニールは耳を澄ませた。
「これって言ったりこいつって言ったり。できれば名前で呼んで欲しいのだがね」
確かにその花から声が聞こえた。どこからその音が流れてくるのかさっぱり分からないが、この一番背の高い花が何か言っているのは分かった。
「話せるんですか?」
「まあな。驚くのも無理はないが」
「あなたはその。。。花ですよね?」
「そうだ。花だが、人格は人間のものだ」
「人間の?」
「そう。中身は人間、と言った方が分かり易いな」
「何かの魔法で花にされた、とかですか?」
「違う。元々花なのだ。人格が宿った花というわけだな。厳密には、実際に存在した私の人格、記憶が移されているのだ」
「よく分からないですね・・・」
「奇妙な話だろう。どの部分を切り取っても簡単には理解できないだろうが、部分部分を繋ぎ合わせると分かってくる。この花園は記憶の集まりだ。一人ひとりの記憶が合わさってこのような記憶の集合体を作っている。提供された古今東西の知識が集まり、一つの脳のようなものとして存在している。そしてそのデータを司るのが、最後にこの記憶にアクセスしたものの人格であるのだ」
「つまり、今僕が話をしている人というのは・・・?」
「ああ、実在していた人物の人格だ。詳しい話はできないがな」
「最後にその人がここに来たのはいつなんです?」