追跡者 4
「ああ。まず、『竜使いの証』がなければいけない。これは先天的・後天的に手に入れることのできるものだが、今のお前にはどちらも入手不可能だ」
「入手って、それはモノなんですか?」
「違うな。なんて言うかその、遺伝子みたいなものだ」
「親から引き継がれるってこと?」
「それがまず一つだ。『竜使いの証』をもった親が子に引き継ぐことを選択することができる。それで生まれてきた子には、親の意思で竜使いの証が宿る。お前の親が竜使いでなければ、まず竜使いにはなれないだろう」
「そんな・・・」
「後天的な方法というのが、竜使いの数がこの世界で極端に少ない場合だ」
「つまり?」
「先ほど、子に引き継ぐことを『選択することができる』と言ったろう。選択しない場合も当然あるわけで、その場合親が死んだらその『竜使いの証』は永遠に葬られることになる。そうなった場合に、何故だか分からないが、この世界の竜使いに適した誰かの体に証が宿ることがあるらしい」
「だったらそれに賭けるしか・・・!」
「確率はかなり低いだろうな。まず、この世界の竜使いの数を把握できていないだろう。仮に分かってその竜使いを殺したとしても、次の証がお前に宿る保証はない」
「絶望的なんですね・・・」
「まあ仕方ないさ。今の自分にできる力で頑張るしかない。この世界のドラゴンたちのこと、しっかり見せてやるからさ」
「わかりました・・・」
これで帰る理由ができた。サントに付いて行けば自分も竜使いになれると思っていたが、それもできないと分かった以上、あまり長居をしている時間はない。
「ニール、次はお前の話を聞かせてくれよ」
「僕の話なんて興味あるんですか?」
「随分長い間塔にいたからね。今の世界のこと、少しでも知りたいんだ」
「分かりました」
「君の故郷には、ドラゴンはいるのかい?」
「いないです。だから初めてドラゴンを見た時感動しました」
「そうか、王都だったら確かにドラゴンは寄りつかないだろうからな」
「違うんです。故郷はルーハイってところなんですけど、ルー様が昔いたドラゴンを全て滅ぼしたからいないんですって」
「ルー様?」
「僕の故郷に伝わる神様です。昔はいたみたいなんですけどね」
「ルーハイか、名前は聞いたことがあるが、行ったことはない」
「主にどの辺りで活動してたんですか?」
「この島の中央部、そして東側さ。やっぱり西には近付きづらいからね」
「そんなに王都が怖いんですね・・・」
「ドラゴン達が怖がる。そして俺も、一度捕まってしまった嫌な思い出があるからな」
サントは苦笑した。
「一つ、聞いていいですか・・・?」
「なんだい」