追及者 1
今の国の課題は大きく3つある。
1つは国政。王が回復していない状態であるため、その娘であるソラン姫が執り行う。そしてその援助をするのが執事の役目だ。
2つ目。囚人達を再び塔に戻すこと。これは主にニラードが指揮を行い、ニールを始め捜索隊を結成して脱獄者の再幽閉に努めている。
3つ目。国力の強化。これは今回の件に関わらずこの国が恒常的に抱えている問題ではあるのだが、優秀な兵士が育たない。以前のような奇襲を受けた際に同じような惨状を生んではならないと必死である。主にジャニーが国防を担当しつつ、ヲサイヤが教官となって兵士を鍛えている。
スニークはこれらの仕事の全ての補佐を言い任されている。この為それぞれの事情についてしっかり把握している必要こそあったが、彼らがあまり仕事を譲りたがらないのか、業務量を押し付けることに抵抗を感じているのか、スニークにまで仕事が回ってくることはあまりない。暇であるといえば暇ではあるのだが、いつどんな仕事が舞い込んでくるのか予測がつかないのでゆっくりはしていられないというわけだ。
ただ、彼の心の中にあるのはそういったことではなくて、黒魔法使い達についてのこの国のけじめのつけ方であった。
腑に落ちない点がある。まず、「敵の親玉を倒すことでこの国は守られた」と表面上なってはいるが、その姿、つまり死体を私は確認してもいないし、その顛末がどうなっているのかも情報が入ってこない。次に、飽く迄奇襲を防いだというだけで黒魔法使い達は生き残りが少なくとも2人がいるということだ。彼らを討伐することを考えなくてもいいのか?また同じことが起こりはしないか?それが懸念材料だ。それに、私が葬ったはずの黒魔法使いでさえ、あの時しっかりとその死を確認する余裕まではなかった。地中深くに押しやってはいるだろうが、もし押しつぶされずに生存していたならば助かっている可能性は十分にある。
こういったことを考え始めるとキリがないのだが、今辛うじて余裕があり動けるこの状況下でできることはありそうだ。
当日、ヲサイヤを訪れることは難しかったので、翌日都合を付けて彼に会った。
「本題に入るが」スニークは扉側の椅子に座って話を持ち掛けた。
「お前は前回の黒魔法使いの死体を確認したか?」
「していない」ヲサイヤは窓の外を見ている。
「さして興味もなかったからな。あの奇襲の際、俺も少し気が動転していたからな。自分のことを考えるのに精一杯だった」
「何か特別なことがあったのか?」
「いや、俺個人に係る問題だ。ともかく、敵の中に精神を乱すことのできる黒魔法使いがいてな。認めたくはないが、危ないところだった」
「そいつは仕留めていないんだったな」
「ああ、だからこそ対策は考えなければならん」
「そこは私も同じ気持ちだ」
ヲサイヤは窓に向けている身体をこちらに向けた。スニークは話し続ける。
「私が城に帰ってきたとき、問題は全て片付いていたように見えたが、課題はいくらでもある」
「何が言いたい」
「以前、国を挙げてイカゴに遠征をした時があったな。そこで黒魔法使いは殲滅されたのではなかったか?」