追跡者 1
「戻りました」
ニール達一行は、王都の脱塔者対策チーム室へと帰還した。
「おかえり!どうだった?」
忙しなく動いていたニラードだったが、彼らの様子を見て近づいて来た。
「ダメでした。姿も何の手がかりも見つかりませんでした」
「そうだったの・・・お疲れ。もう別の場所に行っちゃったのかもね。次の目撃情報を待ちましょう。暫く休んでいって」
ニラードは作業に戻る。彼女は彼女でやることがかなり多く、他の脱塔者の対策に追われている。リーダーとして情報をまとめつつ、捜索に出ている他のチームから目撃情報があり次第早急に部隊を編成し現地に向かうのが彼女の主な使命である。よく観察していなかったが、彼女も確実に疲れているだろう。それが任務に悪影響をもたらさないといいけど・・
自分も自分で、精神的には疲れているが休もうという気はあまり起きなかった。心の癒しの魔法を自身にかける。ほんの少しだけ休みながら、次できることを考えよう。他の兵士たちが休み終わるまでに暫く時間があるだろう。
脱塔者の数はかなり多い。塔の上の階に幽閉されていた者から、地下に閉ざされていた者たちまで合わせると、とても休んでいようという気持ちにはなれなった。自主的に戻ってきた者もいたが、多くは捕らえ損ねてしまった状態だ。市内に身を潜めたものや、島中に散らばっていった者までが国にとっての脅威である。もし、その中の1人でも、ルーハイをその隠れ場所に選んでしまったら・・・
故郷は絶対に守らなければならない。その為には一日でも早く自体の終息をもたらさねば。
ニールは街に繰り出した。行動が大事だ。常に目を光らせながらパトロールをする。何かおかしな人物や行動はないか。神経を集中させるんだ。賑やかさの中に、逆に静けさを保ってボロを出さないようにしている何かがあったら、それはかなり怪しい。いろいろ観察していく中で、ヒントを一つひとつ見つけていこう。
この前通ったこの通路。2週間でそこまで変わったところはない。出店が変わらぬ面持ちで並んでいる。
・・あれ、あの店、この間来た時にはなかったはずだけど・・・
「すみません、これは何を売っているんですか?」ニールは見知らぬ店主に声をかける。
追及者 1
カツン、カツンと乾いた音が廊下に響き渡る。その音のペースは、この城内を歩く人々の平均的なペースよりも幾分速い。
時刻は昼を回った頃である。午後しなくてはいけない仕事は特にはない。だが、やらなければならないことは多くある。今後自分がどう立ち振る舞っていくのかを考えていく時期にきている。
その盲目の男は自室に戻った。何だ?今にしかできないことはあるのだろうか。国王と、私たちのリーダーが目覚めないうちにしかできない動きは?
いや、あまりないな。スニークは考え直す。例え国王やユハが眠っている状態で隙があるとはいえ、執事の目が光っているうちは変な行動は取れない。なるべく自然な形で情報を集めなければ。