追跡者 3
「ほう」
「驚きやしたか」男が板に手を当てる。その板は手の中へ吸収されていった。
「不思議な術を使うな」
「そうでしょう。あっしにしか使えません」
「魔導士か」
「そう呼ばれてもいますかね」
魔導士?話に聞いたことがある。これもかなりヤバい魔法使いだ。脱獄してきた人たちの中に、魔導士なんかいなかったはずだけど、これは野良なのか?
「その盾。何でできているか気になるところだが、俺自身で確かめてみる必要がありそうだ」
「教えてもいいですが、ご自身で体験してみても良いですかなあ」
男は手を竜使いに向ける。恐らく、先ほどと同じ種類のものが出てくるだろう。
「あっしも試したいんでさあ。竜使いを相手に自分の力をね」
やはり先ほどと同じ物質が出てきた。無数に鋭利な刃物の束となって、竜使いに襲い掛かっていく。
「くっ」
二人の距離が近かったためか、竜使いは回避をうまくする必要があった。ベールを展開しつつ、束の中心部から避ける形で身を逸らした。
「お見事!」
竜使いは腕を抑えている。血が垂れているようだ。流石に近距離では分が悪い術だったようだ。
「さあ次は、そのベールも破壊できるかな!」
先ほどよりも多い束が竜使いを襲う。未知の物質に対し、どれほど守りの魔法が通用するのか、それ次第で運命は決まる。
だが、ドラゴンが前に立ちはだかった。自身の身体を竜使いの前に入り込ませ、その鱗で刃物を弾いた。それも、完全無傷である。
「さすがにドラゴンには無理かあ」言葉のわりに落胆している様子は見えない。
ドラゴンは尾で男をなぎ払った。尾の鞭に直撃し、地面を削るように叩きつけられる。
「いってえ」
男はまたも立ち上がった。身体には先ほどの物質が纏われている。
「生身なら死んでましたね」
「お前、その物質」自身の傷口、そして地に突き刺さっているうちの一本を取り上げて観察している。
「分かりやしたか」
「鉛か」