追跡者 3
まずどうしても目を背けられないのがそのドラゴンである。巨体をゆったりと構えながらその羽根を休めている。それでいて、瞳はまっすぐ前の異邦人に見据えられている。ドラゴンの前に立っているのは竜使い。ここからだとあまりよく見えない。森のラグに生まれていたら・・・!
特筆すべきは彼らと対峙している男だ。あまり怖がらない様子で向かっている。彼らと落ち合っていたのか?関係者?よし、空気の振動に集中だ。何を話しているのか把握する。
「・・・どうしてここにいるのが分かったのかと聞いている」
「だって、あんだけの影が見えたら気になるでしょうよ。降りていったのもこの辺りだし。後は勘で歩いて来ただけ」
「それは知っている。興味をもって多少は近づいてくる輩はいる。だが大体は我らを見るなり恐れおののいてどこかへ消えてしまう。取るに足らない者たちだ。だから敢えて殺すことまではしていない。お前は死にたいのか?」
「死にたくはねえなあー」
「だが遅い。近づいて来た理由が分かればそれでいい。好奇心だな。後は用済みだ。お前を殺さなければならない。いくぞスコウグ」
ドラゴンは目を一層輝かせる。どうやってこの獲物をいたぶるかを考えている目だ。
「おお怖い怖い」
男はゆっくりと後ずさる。ドラゴンは少し口に空気を含み、1方向に吐きだした。空気の塊だが、骨まで砕けそうな勢いだ。
ドピュンっ
「速っ」
男にぶつかった空気の玉は勢いを落とし、後方の木々をなぎ倒していった。男は無事なのか?どんな威力なんだ?
煙の中から現れた男は無傷のようであった。それどころか少し嬉しそうでもある。
「お!守られた!守られた!」
男の体の前には何か板状のものが突き立てられている。何だあれは。木?