追跡者 3
「それがそれほどのものか、本当に分かっているのか?今の指標は良く分からないが、ここにいる部隊では足止めにすらならない様子だが」
「なのであまり危険な目には遭わせられません」
「事態が事態だからな。何かしらの被害は起こるだろう。それだけの怪物だ」
「それで・・・その、少し様子を見に行ってみたいんです」
「正気か?応援を待って、無闇に刺激をせずに待機する局面だぞ。そこを敢えて突っ込むなど考えられん。絶対に行くでない」
「分かりました・・・」
以降、部隊はただ待っている時間が流れた。特に大きな変化もなく、粗方探索も終えた頃である。
ニール達3人が、少しドラゴンの行った方向へと歩みを進めている時。異変が起こったのはその時だった。瞬間的にニールの感覚が捕らえたのは、強風のような、衝撃波のような激しい振動であった。
「!?」あっちだ。このまま真っすぐの方角にその源泉はある。禍々しい雰囲気が立ち込めていて、こう感じるということは今僕達が立っている空間も既にその範疇だ。隠れ蓑を脱いだのか?それで一気にここまでの範囲が縄張りとして復活したようなそんな直感であった。しかし、隣二人は何も感じられていない様子であった。
「あなたたち二人は戻ってください」
「戻るって、何か見つけたのですか?」やはり彼らは気付いていない。
「恐らくドラゴンが目覚めています。この位置も既にばれてしまっているでしょう。警戒を解くためにこの範囲から出る必要がある。あの拠点までは届かないと思います」
「隊長は残られるのですか?」
「僕なら気配を削ることができる。少し様子を見てみたいんです。大丈夫。絶対に気付かれない」
ニールは二人と別れ、更に森の中を進んでいく。今のところドラゴンが大きな動きをする気配はない。それはそれで気になるところだ。なぜ何も行動を起こさないのに、隠れるという動作を取りやめたのか?確認しておく必要がありそうだ。もう少しすれば目的地へと着く。ああ、あの花には怒られるだろう。そういえば、あの花の今の主人格である人物の元の名前は何だったのだろう・・・?
ニールの言った通り、二人は拠点に戻っていった。ニールは空気を吸い込む。湿度や温度、明るさなど、空気の特徴をしっかり味わう。そして得た情報を自身の身体へと同化していく。
これで僕も森の一部だ。
彼の感じる、重い空気へと一歩ずつ足を進めていく。どんどん雰囲気が重たくなっていく。なぜこれ程までに多い?しかも複雑な様子だ。何かいろいろなものが混ざっていて、それぞれの主張が大きいだけに完全にも混ざり合わないような感じ。確かドラゴンの他に竜使いもいるのであろうから、その気配なのだろう。
一歩、また一歩・・・それでも確実に源の方へと進んでいく。視界が明るくなっていく。開けた場所があるようだ。いや、ドラゴン自身の巨体で作り上げたものだろう。辺りの木々はめちゃくちゃに折れ曲がっている。漸くその空間にいる存在を目でも確認できるような位置に差し掛かった時、やっと違和感の正体に気付いた。
(まだ別の何かがいる・・!)