追跡者 3
「で、そのドラゴンをこれからどうする」
「できることなら、人に危害を加える前に抑えておきたいのですが」
「抑える、というと?」
「原則、脱獄者には一切の法的保護が解除されます。生きたまま捕らえるもよし、殺すもよしといったところです。可能だと思いますか?」
「それは無理だろうな」
「やはりそうですか・・・」
「君の記憶から読み取った経験と努力を基に今の力を推測した。残念ながら、私がこれまで記憶をもらってきた魔法使いの中でも低い方だ。そして、君が務めているこのチームの力を総合しても到底及ばないことだろう」
「ただ観察していることしかできないのですか・・!」
「まあ待って欲しい。城に戻れば力のある魔法使いはいるのだろう?」
「はい。ただできるだけ自分たちの力で何か進捗を生みたかったのです」
「欲を出さないほうがいい。全員死ぬぞ」
ニールは考え直した。いや、考え直すまでもない。最初から勝てないと決まっている相手だ。そんな相手の情報を得ても、有益に活かせる実力が無いことを悔やんだ。
「それに、どこにいるのかも分からない相手だ。それを探すことがまず困難だろう」
「この辺りに隠れている可能性があるんですよね」
「ああ、どこかに降り立ったきり、空を飛んでいる様子がない。長い間休んでいるのだろう。空気と同化しているせいで見つからないだけで、このすぐ近くにいる可能性もある」
「僕達が通ってきた方向にはいない可能性が高いですよね」
「ああそうだ。竜自身が休んで気付かないことはあるだろうが、一緒にいるという人間の方が放っておかないだろう。あれだけの力をもつドラゴンを操る竜使いだ。その気になれば叩き潰しに来ただろう」
「分かりました。僕達にはどうにもできません。できる限り辿ってきた方向に忠実に部隊を送り返し、見方が合流するのを待ちます。その間僕と数名が残り、ドラゴンたちが飛んで行かないかを見張ります」
「それが賢明だろうな」
「応援が来るまで数日かかるでしょう。ナレンさん、お願いできますか?」
「分かったわ」
ナレン副隊長と4人のメンバーは戻っていった。残る隊員達でこの森に残り情報を収集する。あまり遠くには行かないこと、少しの変化でも伝えることを取り決めた。
「そしたら待っている間にいろいろお聞きしたいのですが」
「どうした」
「僕の記憶にある魔法使い達で、そのドラゴンに勝てると思いますか?」
「どうだろうな。そもそも断片的な記憶しかなく、それぞれの魔法使いの力の強さの全貌が掴みづらい。城に入ってまだ短いだろう。判断材料が少なすぎる」
「そうですか・・・」
「だが、あまり期待しないほうが良いということだけは確かだ。恐らくは力不足だろう」
「そうなんですね。地下6層の囚人なので、超級魔法使い60人の強さと言われていますが・・・」