追及者 2
コン、コン、と扉を叩く。扉自体も大きく、彼の音は既に大部分木の板に吸収されているようだった。
「何でしょう」そんな小さい声が聞こえた気がした。少し扉が開き、丸い目玉がこちらの様子を伺っている。よそ者だと察知して警戒しているのだろうか。殆ど中が見えない。
「すみません。私、丘の上からやって来ました。この辺りの状況を伺いに来たのです」
「あまり差し出せる情報はありません。今この教会には私しかいないので」
これは教会なのか。聞いたことのある単語だ。
「もしあなたもお困りのようなら、食料をお分けいたしますよ」
「え、あなた・・・」
驚きを含んだ声で少女は返事をする。扉の開く音がした。彼女の弱い力で開けられる精一杯の角度だった。
「やめろ!!!!」
スニークは昔の記憶を追い払った。その少女との出会い。忘れることのできない人。全ての始まりであり、また、終わりでもある人。彼女の為になら、神を何度でも殺そう。そして分からせてやる。お前は存在しない。してはいけないのだと。
ニラードがドン引きしている。
「ちょっと休んだ方がいいんじゃないかな・・・」
「とにかく、この件に関してはお前はあまりよく知らないようだ。もう一度確認するが、先の襲撃の際、お前と戦っていた黒魔法使いはまだ生きているんだな?」
「少なくとも私は殺せてないからね。足に怪我を負わせた程度。その後誰も見てないっていうんだから帰っていったんでしょうね」
「分かった。これ以上は聞くまい。昔の件についても、就任期間の関係で知っていることも少ない。だが、私の敵サイドではない。これだけは確かだ」
「あんまり仲間内で敵味方作らない方が良いと思うよ~?」
「微妙なズレを先に作ったのはあいつらの方だ。私はその隙間を埋めようとしているだけだ。何も悪くない。協力を頼めるか」
「まあ、その時々だけどね。話を聞く限りアンタが悪い動機で行動をしているとは思わないから」