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追及者 2

スニークが生まれた地は、この王都よりも更に北に位置する集落である。かなり落ち着いた雰囲気の漂う田舎であり、あまり都会の喧騒に触れることの少ない場所であった。全体的に農民が多く自給自足の暮らしをしている者が大半であり、スニークもまた同様農民の暮らしを送っていた。農民の間でも更に貧富の差が激しく、ただ彼の家族は中間層の中では上位に位置していた。

「お母さん、行ってくるよ」

「はい。今日も気をつけてくださいな」

彼の家族は母とスニークの二人だけであった。弟は幼少期に飢えで亡くなっている。父親がそこから頑張って成功を収めたおかげで今の親子の富があり、それと引き換えに父親は命を失っていた。

「神様、今年も我が家族の幸せがあらんことを」

スニークは神に願いを捧げることを日課としていた。それは母親、今は亡き父、弟皆が健在であった時から行っていた習慣であり、この地域では豊作や平和を神に託すことが普通であった。


しかし、今年はどの農場も不作に終わることが多かった。理由は分からない。その年ごとの波によって収穫具合に揺れがあるのは当然だが、生活が脅かされるほどの不幸な年はここ何十年でも稀である。スニークの農場では幸い、父親が遺した土壌が質の良いものだったので比較的安定した収穫を得ることができていた。

「お母さん、ソラ豆のスープができましたよ」

身体の弱い母親の世話をしなければいけない身ではあったが、母親は彼にとっての唯一の家族であり、話し相手であり、最後に残された宝物であった。

「うん、今年も良い味だね」

「でも、他の農地はあまり良いものが獲れないみたいなんだ」

「それは気の毒だね。もし食料に困っている人がいたら、助けてあげようね。お父さんとノル君が畑を見守ってくれているから、うちは良いものが実るようになっているのかもしれないね」

「二人が神様に会ってお願いしてくれていたんじゃないかな。良いものが今年もできますようにって」

「そうだよ、きっとそうだよ」

「でも、他の人のところが心配だな。明日様子を聞いてくるよ」

「そうしなさい。それにあなたにはそろそろ新しい友達が必要かもね。私ももう長くはないかもしれないから、助け合える友達を作りなさい」

スニークは他の村がある集落へと下っていった。確かに雰囲気は重々しく、外に出ている人間はあまり見かけない。彼は、一軒の扉を叩いた。

「すみません」

「どちら様でしょう?」

「スニークと申します。スニーク=ハイルド」

「ハイルドさん?お入りになって」

スニークは扉を開ける。重い空気が立ち込めている。しばらく扉を開けていないのか?

「いきなりお訪ねして申し訳ございません」

「どちらのハイルドさん?」

「丘の方からやって来ました。このあたりの出身ではないです」

「ああ、あの上の方から。あんまり聞かない名前だったので。で、そのハイルドの方が何の用ですか?」

「えっと、この辺りも今年の実りがあまり良くないと聞いたので。よろしければおすそわけをと思って」

「本当かい?」老婆は目を輝かせる。空気の色までもが変わったようだった。

「私の辺りも今年は不作だったのですが、少しは助けられます」

「助かるねえ。本当に。どの家も全然だめでさ。今年は飼っていた家畜までも食料にしないといけなかったからね」

「お気の毒です。また何か持ってきますから」

そう言ってスニークは家を後にする。やはりこの辺りの状況はかなり悪そうだった。その後も彼は家を訪ねていき状況を聞いては、おすそ分けの約束をしていった。

「一通りは把握できたかな」

今日の任務を終え、村の終わりに差し掛かった時、スニークは大きな建物に差し掛かった。

これは何だろう。家には見えない。いやこの辺りを仕切っている村長の家なのかもしれない。


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