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第9話 アシスト

 試合会場は、黒羽の言った通り、一般観覧もできる観客席が用意されていた。

 前の方には、サッカー部の一年生と思しき集団が固まっていて、その後ろに数名のチアリーディング部の姿も見える。

 さらには、いくつかの女性集団だったり、男女混合の集団だったりが、ちらほらと見受けられた。

 さすがサッカー部、黒羽をはじめとして、女性に人気のある部員や、交友関係の広い部員が結構多くいるのだろう。

 ただ、俺はどうしてもそういった集団はちょっと苦手だ。

 なので、そういった人たちからちょっと離れた席に、碧と二人、並んで座った。


 俺たちが座ったころが、ちょうど試合が始まるところだった。

「ねえ、黒羽くんはどこにいるの?」

「確か、背番号9のユニフォームって言ってたから……あれか、今ボールを受けた選手」

「ああ、あそこね、ありがと」

 そんな会話をしているうちに試合が展開される。

 黒羽は二年生でありながら、チームの中心的な立ち位置にいるようで、よくボールを受けたり、パスを出したりしていた。

 おかげで、見失わないように目で追いかけるのも結構大変なのだが。

 そうこうしているうちに、相手チームからのファウルで、味方選手が倒れた。

 しかしその選手はすぐ立ち上がった。大事には至っていないようだ。なんなら表情などを見ると、心なしか喜んでいるようにすら見える。

 サッカーにおいては、「相手のファウルを誘い自分のチームのチャンスを作る」のも大事な作戦なのだ。

 今回は、相手ゴールの右前あたりから、フリーキックを蹴ることができるチャンスのようだ。

 ボールの側にいるのは黒羽、どうやら黒羽が蹴るらしい。

 ボムッ!

 黒羽が高くボールを蹴り上げる。

 そのボールの着地点には、ちょうど味方選手がいた。

 ボンッ!

 その選手が、ヘディングでボールをゴールへと飛ばし、ゴールネットに突き刺さった。


 見事な先制ゴールだ!


 客席にいる、俺たちの学校の人達から、キャア! と歓声が上がる。

 俺も、思わずその場面に見入ってしまった。

 自チームのゴール、しかも、友人の黒羽の見事なアシストで決まったゴールとあれば、自然と嬉しさもこみ上げる。


 碧もそうだろうと、碧の方を見ると、やはりキラキラとした笑顔を浮かべていた。


 俺たちは、興奮冷めやらぬまま、お互い席から立ちあがり、ハイタッチをした。


 ……までは、よかったのだが。


 いざハイタッチをして、冷静になってみると。

 力強くハイタッチができるくらいに、俺と碧の顔は接近していて。

 そして碧の顔はもちろん、これまで何度も見惚れた、誰よりも美人な顔で。

 そんな顔が間近にある状況に、俺の顔はどんどん赤くなっていって。

 そんな俺の顔を見ているからなのか、次第に碧の顔も同様に赤くなっていって。

 

 二人は同時に、ふいっとお互い顔を背け、背を向け合って。


 だけど、絶対に離れたくはないという気持ちも、確かに俺の中にあって。


 そうして、お互い顔は見れないが、隣にいるという、奇妙な状態が、試合終わりまで続いたのだった。


 試合は、黒羽のチームが勝ったらしいが、その後はあまり覚えていない。


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