第6話 協力したい
複合遊戯施設に来て最初に行うことは、ボーリングに決まった。
これなら全員参加できて楽しめる、こういう男女混合の複数人で遊ぶのに適したスポーツだ。
利用登録や靴の履き替え、ボールの選択などが終わり、ゲーム開始となる。
始まってみると、やはり一番上手いのは黒羽だった。
一投目から、いきなりストライクを叩きだし、みんなから歓声を浴びている。
俺はといえば、一投目からピンの両端が残る「スプリット」で、スペアを逃していた。
黒羽の後だと、どうにも締まらなく感じてしまう結果だった。
碧の一投目はといえば、投げたボールが右方向に曲がってしまい、3ピンしか倒れなかった。
二投目も同じコースに行ってしまい、一フレーム目は一投目の3ピンのみという結果に。
碧の友達たちは「どんまーい」と声をかけているが、碧の表情は悔しそう。
そんな中、俺は碧の投球フォームが気になっていた。
ボールを投げるとき、目線が足元に下がってしまっていた気がしたのだ。
その結果、目標点がズレていって結果的に狙った方向にボールが行かないのだろう。
俺としては、碧にそのことを伝えて、碧がいい結果を残して喜んでもらいたい。
あれだけ悔しがるくらいに真剣に取り組んでいるのだから、報われるよう協力したい。
だが、みんなの前で悪かった点を指摘するのは、碧にとって恥ずかしいことだろう。
さて、どうしたものか、と考えていると……。
黒羽の、二巡目の投球順番がやってきた。
当然、周りのみんなは黒羽の投球に集中している。
今だ、と思った。
俺は、今のうちにと、こっそり碧の側に近づき、小声で耳打ちをした。
「碧、碧が投げてるとき、足元の方を見すぎだから、もっと顔を上げて、ピンの方とか、レーンのマークの方とか、もっと遠くを見ることを意識したほうがいいよ」
「えっ!?……あ、そう、ふーん、わ、わかったわ。ありがとう」
最初驚いたような声をあげた碧だったが、それがボーリングのアドバイスだとわかると、納得してくれたようだった。
ちょうどその頃、黒羽は二回連続のストライクを出していた。
みんながワイワイと黒羽をほめたたえている。俺たちの方に気づいた気配はない。
俺はそのことに安堵し、次にボールを投げる準備をしていた。
俺の二フレーム目は、一投目が7ピン、二投目が1ピンしか倒せず、またもスペアを取れなかった。
教える方がこれじゃあ、締まらないよな、なんて思いながら、みんながいる椅子の方に戻る。
そして、次の碧の番となる。
(顔を上げて……遠くを見て……)
何やら小声でつぶやくような口の動きを見せつつ、碧はボールを投げた。
そのボールは真っ直ぐピンに向かっていき、全部のピンを倒してしまった。
ストライクだ!
これにはみんなが大拍手、碧の友人二人にあっという間に囲まれて、きゃいきゃいとみんなで大はしゃぎだ。
その光景を見ながら、俺も碧を見て、拍手をする。
一瞬だけ、目が合った気がした。
会釈のような、わずかな動きを、俺に向けてしてくれた気がした。
俺は、自分が活躍したわけでもないのに、それ以上の嬉しさが込みあがってくるのを感じた。
その後、競技は進んでいき、やっぱりぶっちぎりで最高得点は黒羽。
碧は、最終的に俺を追い抜いて、メンバーで二番目に高い得点をたたき出していた。
だけど、スコアで碧に追い抜かれたことに、不思議と悔しさは感じなかった。