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第2話 真剣で大事なお願いなら

 俺は碧に呼び出されて、放課後、空き教室の机に、向かい合わせになる形で座らされた。

 ここまでの経緯だけを言うと、人によっては「ひょっとして、告白されるのか?」なんてことを想像する人もいるかもしれない。


 だが現実は当然、そんなことはない。


 幼馴染だからといって、昨日までロクに目も合わせていなかった相手が、今日になって突然、恋人同士になりたいなんて思うわけがない。


 だから俺は、そんな期待なんて一切抱かなかったわけだが……。


 碧の、緊張したような、思いつめたような、そんな表情。


 その姿から、「ああ、碧は真剣で大事なお願いをしようとしているのだ」とわかった。


 そうであるなら、いくら普段交流のない相手とはいえ、真剣にお願いを聞いてやろうと、当然思う。


 だから、茶化さず、急かさず、碧が話を切り出すのを待って。


 そうしてしばらく碧の悩む姿を眺めた後、


「蓮って、黒羽(くろば)くんと、仲良いよね」


 碧が、意を決して、そう切り出した。


 黒羽、フルネームで言うと黒羽(くろば)(しゅう)()というのは、俺と碧にとって、クラスメイトの一人の男子だ。


 サッカー部でエース的な活躍をしていて、爽やかな短髪に整った顔立ち、そして脚の長いスタイルの良さで、女子から幅広く人気が高いなんて噂も聞く。


 そして意外なことに、俺と黒羽は、実は本当に仲がいい。


 高校一年の冬、とあるゲームショップに行き、人気FPSゲームの新作を手に取り店頭に持っていこうとすると、同じパッケージを持った黒羽とバッタリ会って、

「えっ、川島も、このゲーム好きなのか?」

 なんて話になり、その後何度か俺の友達たちと一緒に、同じゲームをしたり、ゲームについて語り合ったりしている。


 黒羽曰く、「周りで同じゲームをしている人がこれまでいなくて、ゲーム仲間ができて本当に嬉しかった」らしい。


 世の中には、自分より下位のコミュニティの人間と仲良くなると、自分の「格」が下がると考える人間もいると思うけど、黒羽はそうではないようで、大小さまざまなコミュニティの相手と、仲良くしているようである。


 そんなわけで、先程の碧の問いに関する答えは「はい」である。


「う、うん、そうだけど……それがどうかした?」


 俺がそう答えると、碧は急に拝むように手を合わせ、目をつぶり、


「お願い! 私と蓮でお出かけをして、そこに黒羽くんも呼んでほしいの!」


 真剣に、碧は俺にそう言ったのだった。


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