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裏切り・・・そしてわたくしは幸せになります。

ソルド王太子が突然、変な事を言い出したのである。


「君の事は愛している。でも、私には他にも愛している人がいるんだ。」


「なんですって?」


ある日、二人で王宮のテラスでお茶をしていたら、突然、そのような事を言われたのである。


ソルド王太子は、すまなそうにフィレーネに向かって、


「勿論、王妃は君だ。彼女は側妃にしようと思っているのだ。」


ああ…なんて事だろう。バチが当たったのだ。


自分はソルド王太子殿下と言う婚約者がいながら、イルドに恋の告白をしようとした最低の女…


ソルド王太子への情で、イルドの恋の告白を諦めた。

未来の王妃として、きちっと生きようと思ったのに…


側妃を取るのは王族として当然の事である。

一人でも多くの子を残したい。事実、現国王陛下も側妃が3人いるし、ソルド王太子は側妃の子である。


フィレーネはソルド王太子に聞いてみた。


「わたくしと、その女性とどちらに愛があるのですか?」


「両方に決まっているじゃないか。君の事も愛しいし、彼女の事も愛しい。」


「そうですわね…そういう物ですわね…」


何だか、寂しい。所詮は政略。


王妃として生きるからには我慢せねばならないのか。



再び燃え出すイルドへの恋心。


何で、ソルド王太子の情に流されて、告白を諦めてしまったのか…


何であの時、イルドに対して愛していると言えなかったのか。


もう、法律で認められた特別な告白デーは、来年まで無いのだ。

ソルド王太子の妃にならねばならないのだ。


わたくしは…きっと唯一の愛が欲しいのね…

わたくしだけ、愛してくれるのであれば、ソルド王太子殿下でも、イルドでも、どちらでもよかったのかもしれないわ。


なんて軽薄な…なんて馬鹿な自分なのだろう。



父であるカルディス公爵に、フィレーネは頼んだ。


「隣国へ旅行に行きたいと思いますわ。王太子妃になってしまったら、旅行も出来なくなってしまいます。自由に動けるうちに、隣国を見て参りたいと思います。」


カルディス公爵は賛成してくれた。


「気を付けて行っておいで。人生勉強だ。隣国のお前の叔母に当たるカミラの所へ泊るがいい。色々と案内してくれるだろう。」


「有難うございます。」


こうして、フィレーネは隣国へ旅行に行くことになったのである。


今は、アストリア王国を離れたかった。



カミラ・アウトール公爵夫人と言うのは、父の妹で、彼女は隣国、ミレーゼ帝国での皇族の家庭教師をしている女性であった。


なんて、帝国は広いのだろう。

なんて、帝国は栄えているのであろう。


叔母の案内で、街を見て歩き、フィレーネは帝国について感心した。


帝国で暮らしたい。

わたくしに出来る事はないかしら…


帝国の皇族はまだ、幼い皇子や皇女で、叔母のカミラ・アウトール公爵夫人に皆、懐いていて、フィレーネも叔母について、皇子や皇女の教育を手伝ったりした。


まだ10歳のテリー皇子や、8歳のシャリーヌ皇女、5歳のメリーナ皇女、皆、可愛くて。


フィレーネはもう、アストリア王国に帰りたくないと強く思うようになってしまったのである。


だから、決意をして、ミレーゼ帝国の皇帝に頼んで、亡命させて貰う事にした。

ミレーゼ帝国の属国扱いの小さな国がアストリア王国である。

皇帝がフィレーネの亡命を認めれば、アストリア王国は反対しようがなかった。


父から、困る旨の手紙が来たが、フィレーネは頑としてアストリア王国に帰りたくないと、

父にも手紙に書いて、ソルド王太子との婚約も白紙に戻して貰うように頼んだのである。


もう、ソルド王太子の顔なんて見たくもなかった。


そう思っていたとある日の事である。


「久しぶりだな…フィレーネ。」


「イルド様?何故、貴方がこちらに?」


帝国の皇宮の夜会でイルドと再会したのである。


「私の兄が帝国の公爵家に入り婿していて。君がソルド王太子殿下と婚約を白紙にしてこちらで暮らすと聞いた物だから、居ても立ってもいられなくて…どうか、私と結婚してくれないか?」


あれ程、憧れて好きだったイルド。


でも…イルドと結婚したら、アストリア王国に帰らなければならない。


それにわたくしはもう…


「貴方の事、好きでしたわ。だから、あの告白デーの時に告白したかった。でも、ソルド王太子殿下の情に負けて、わたくしは貴方に告白をしなかった。その時に、わたくしの貴方への気持ちは終わっていたのだと思いますわ。」


「駄目なのか…私はずっと君の事が好きだった。王太子殿下の婚約者で無ければと何度思った事か。色々な令嬢と付き合って、諦めようとした。

でも、私の心の中にはフィレーネ。君しかいなかったんだ。

君が私の妻になってくれるというのなら、私は一生、君だけを愛すると誓う。

だから、考えて貰えないだろうか。」


「わたくしは、帝国で生きると決めたのです。もし、わたくしが貴方の妻としてアストリア王国へ戻ったならば、王族が黙っていないでしょう?」


「それならば、私が帝国へ来よう。ただ、君に苦労をかけてしまうかもしれない。

公爵では無くなってしまうから…」


そこへ、夫のダグラス・アウトール公爵と共に、叔母のカミラ・アウトール公爵夫人が近づいてきて、ダグラスはイルドに向かって、


「だったら、我が公爵家の領地経営を手伝ってくれ。」


「兄上。」


カミラはホホホと笑って、


「うちの夫はイルド様と歳が離れた兄弟ですのよ。不思議な縁ね。」


「そうでしたの…」


イルドにフィレーネは抱きしめられた。


「フィレーネ。愛している…私と結婚してくれないか。」


「貴方の決意がそこまで固いなんて。解りましたわ。でも、わたくしは貴方の表面的な事しか知らない…貴方もそうでしょう?もっともっとお互いを知りましょう。わたくしは貴方とお互いの事を知った上で夫婦になりたいですわ。」


「解った。私もフィレーネの事を深く知りたい。」


夜会の会場のテラスで、二人で互いの事を初めて話した。


イルドはフィレーネの手を取り、熱く囁く。


「私は君の事がずっと好きだったんだ。公爵令嬢としての上品な物腰、その美しさ。

君に振られたあの時だって、王妃として生きると決意した君の凛とした所に、私は惚れ直した。手の届かない所へ行ってしまうと言う失望と共にね。ああ、夢みたいだ。

フィレーネが私の傍にいる。こうして手の届く所に…」


「わたくしも、貴方の事が好きでしたわ。いえ…こうして、追いかけてきて下さって、

熱烈に愛を囁いて下さって、なんてわたくしは幸せなのでしょう。」


「これからはもっと幸せになろう。」


「嬉しいですわ。」





諦めていた恋が叶いました。


熱烈にイルド様に口説かれた事によって、再燃しましたわ。


なんて人生なのでしょう…


結局、わたくしは初恋の相手と結ばれる事になりましたわ。



あれから、しつこく、ソルド王太子殿下からの手紙が来るのですけれども、

国に戻って来て、王妃になって欲しいってそればかりですのよ。

その後、側妃になった令嬢が結局、王妃になったそうですわ。

でも、色々と失敗ばかりしているらしくて。


近々、帝国にソルド王太子殿下が来るとの事。

イルド様が早く結婚しましょうって…おっしゃって下さいましたわ。

そしてわたくしはイルド様と皆に祝福されて結婚致しました。


さすがに、イルド様と結婚したわたくしの事はソルド王太子殿下は諦めてくれて、

ほっとしておりますのよ。


こんな最低な女でも、幸せになれるのです。


そして、これからもイルド様と幸せに生きてまいります。


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