第8話~拾われて8年が経ち、旅立ちの時
今回は区切りの部分なので少し長めです!
このよく分からない師匠の創り出した空間で修行を初めて8年が経とうとしていた。
僕はこの8年で師匠に生きる力を学び、強くなれたと思う。
少なくともボコボコにされ死にかけたあの頃よりは確実に強くなった。
だけどあの時の相手に復讐をしたいとかそういう気持ちは全くない、相手の名前も覚えてないしね。
今は好きなように世界を見て回りたいって気持ちでいっぱいだった。
そして今日がおそらく修行最後の日になるだろうと直感している。
その理由として僕は今、師匠と対面して立っていた。
「大きくなったな、拾った時は小さかったのにこの8年で俺と同じ位まで伸びやがってよ」
人を捨てられた猫みたいに・・・だけど確かに大きくなれた。
「成長期でしたからね。ここまで伸びるとは思いませんでしたが・・・」
「そうだな・・・最後にお前がどれだけ強くなったか見てやる。全身全霊の一撃を、8年間の成果を、この俺に示してみろ!」
それだけ言うと、師匠から発せられる威圧感と存在感が倍増していく!
凄い・・・ここまでの気迫は初めてだ。これが師匠の本気か!?
僕は深呼吸を1つして刀を構える。居合の構えだ、そして魔力を全身に巡らせていく。
それだけじゃない、刀も僕の手の延長だ。刀にも魔力を纏わせ強化する。
「ほぉ、いいぞ!遠慮はいらん!俺を殺すつもりでこい!!」
準備はできた、あとはこれをぶつけるのみッ!
僕の8年。全ての力をここに込める!
「行きます!!」
師匠の懐に一息で飛び込み、その勢いのまま刀をふり抜く!
これは抜刀術というらしい。僕の1番得意な技術だ。
ギンッッ!!・・・ザス・・・
「な!?」
刀が・・・刀が折れた!?
折れた刀が遥か向こうで地面に刺さった。
「いい攻撃だラウ。俺が硬気功を合わせて使ってなかったら確実に殺せていた、ここまで強くなれたんだ胸を張っていい!」
「はぁ、そうですか・・・」
そう言われましても・・・結局師匠の薄皮1枚斬り捨てる事は出来なかったんだから落ち込むのも無理はないよね?
それを見兼ねたのか、はぁっと1つため息をついた師匠が
「俺は一応何百年も昔の世界最強と呼ばれてた人間なんだぞ?その俺に全力を出させたんだからそう落ち込むな。お前は充分強くなったよ」
と、優しく微笑みながら話してくれた。
よくよく考えると師匠のこういう顔を見るのは初めてかも知れないな。
「なんにせよこれからはラウ1人で生きていくんだ、何かやりたい事とかないのか?」
そう聞かれると僕はやっぱり冒険者になりたいと思ったからそれを伝えると、師匠は少し難しい顔をしていた。
「冒険者は悪くはないがオススメはできんな。今のお前なら全部自分で出来るだろうからハンターになる事をすすめる」
「ハンター?」
詳しく聞いてみることにした。
ハンターというのは基本的に冒険者と同じなのだが、冒険者はランクに合わせてギルドが依頼を斡旋してくれる事に対して、ハンターは全て自分でやらないといけないのだ。
自分の足で依頼を見つけて、報酬を交渉して、依頼をこなす。
ここで今まで学んだ物事が役立つんだ。
「と、こんな感じだ。まぁめんどうだがギルドに仲介手数料取られねぇし変な貴族共に絡まれる可能性が減るからな」
まぁその方が楽かなぁ・・・よし!
「僕はハンターとしてやって行くことにするよ」
基本的に同じならどっちでもいいよね?最悪ダメそうなら冒険者になればいいんだし。
「自由に楽しく生きていけよ?これからお前を飛ばすぜ。何処に行っても大丈夫なように鍛えたから大丈夫なはずだが、もし魔王の前とかに行ったら謝って逃がしてもらえ・・・それとこれは餞別だ」
「え?は?えぇ!?」
師匠は好き勝手言って僕に刀を一振投げつけると、呪文の詠唱を始めだした。
同時に僕の周りが光り始める。
「ちょっと待って!それって何処に行くか分からないってことか!?それに魔王とかやめろォ!せめて僕のわかるとこ・・・」
プシュン!
「何処に行ったか分からんが大丈夫だろ。だがこれで俺のやりたい事も終わったか・・・迎えの早い事だ」
ラウ・カーウィン、俺の唯一の弟子がこの場から消え去った。
次は俺の体が消えかかっていた。
何故わかったかって?腕や体から透けて地面が見えるからな。
「俺は本来この時代に存在出来ないから仕方ない事だ。頑張れよラウ・・・」
こうしてゼファーの姿も消え、ゼファーが創り出したこの空間も消えてなくなった。
最後ゼファーの顔はやりたい事をやりきり、満ち足りたいい笑顔のまま消えていったのであった。
これで修行部分は終わりです。
次からは色んな人が出てくる予定でございますれば、よろしければ評価等をしていただくとありがたいです!