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ダンジョンと危機感

 翌朝。ミーシャの冒険者登録を済ませない事には動きが取れないと結論を出したレイヴン達は、未だ死んだ魚の様な目をしたミーシャを連れて冒険者組合へと向かっていた。


 あの手紙をよくよく読んで気付いたのだが、ミーシャの給与に関する記述が一切無い。

 自分で稼げという話だろう。ランスロットが面白がってクレアと一緒に採集依頼のやり方を教えてやろうと言い出した。


 言うのは簡単だが、いくら低ランク冒険者向けの依頼と言っても魔物との戦闘はある。

 いくら採集依頼が討伐系の依頼に比べて然程難しくは無いといっても、「依頼書に書かれた素材や鉱石を間違えずに持ち帰るだけ」などと安易に考えるのは間違いだ。

 クレアの様に身体能力が高く、ある程度直ぐに戦えるようになればいいが、ミーシャは魔物混じりといってもかなり魔物の血が薄い。そのせいか身体能力も至って普通という具合だった。

 精霊魔法使いである事自体は有利ではあるものの、空を飛ぶことしか出来ないツバメちゃんしか使役できない上に、戦闘経験は皆無。包丁以外の刃物を握った事も無いときている。

 途方に暮れたレイヴンとランスロットはミーシャに最低限の知識だけ覚えさせる事にした。

 報酬の取り分は当然減るが、要は魔法の鞄を活かした荷物持ちとして同行させるのだ。



「そうか……」


「どうしたレイヴン。何か忘れ物か?」


「あ、いや。大した話じゃない」


「なんだよ、気になるからはっきり言えよ」


「レイヴン係とやらがミーシャになったのなら、職を失ったのは寧ろランスロットの方なんじゃないか?」


「…………」


 何気ない一言は人を幸せにも不幸にもする。

 ランスロットは暫く固まっていたが、額に滲み出た脂汗を拭って猛抗議を始めた。


「いやいやいやいやいや!俺はそもそも冒険者だから!レイヴン係は仕方なくやってたっつうか、意外に報酬が良かったんだよ!だから俺は無職なんかじゃねぇ!」


「あったのか、報酬」


「うぐ……!りょ、旅費だ旅費!必要経費ってやつだから!」


「でも報酬のある職を失ったのは事実ですよねー。レイヴンさんくらい強いならともかく、冒険者って安定収入無いですし。あ、ごめんなさいですぅ。もしかしてミーシャちゃん核心をついちゃいましたぁ?」


「だからちげぇって!」


「むしょくー」


「そんな!クレアまで……」


「おい、さっさと行くぞ」


「ちくしょう!納得いかねぇ!俺は冒険者だーーー!!!」




 茶番はさせて置き。

 冒険者組合に着いて推薦状を受け付けに見せると、しばらくして組合長を名乗る老紳士が現れた。


「中央組合からの推薦状の件だと伺いました。推薦状を確認させて頂いても?」


「ああ、これだ」


「拝見致します。おお、これは間違いなくリヴェリア様の……」


 組合長は特殊な魔具を使って推薦状の魔法印を確認すると、注意して見ていなければ気付かない程度に僅かにほくそ笑んだ。


 魔法印というのは偽造を防ぐ為にマクスヴェルトが開発した魔法だったと記憶している。

 魔法印を押された書類は全て特殊な魔法の効果を受け、書いた本人以外には書き換えや追記は不可能となる。破ろうとしたり燃やそうとしても、魔法印を押した直後の状態が保たれる優れ物だ。確か精霊魔法を応用した物だと聞いた事がある。

 もっとも、あのマクスヴェルトが自ら進んで開発したなどと言う代物では無い。

 新しい魔法を編み出す実験をした時の失敗作を、金儲けを企んだ不逞の弟子が商人に持ち込んだのが始まりだそうだ。それ以来、マクスヴェルトは側に人を置かなくなった。



「詳しく確認しますので、あちらでお待ちください」


「分かった」


 おかしい。

 魔物混じりが相手だというのに嫌味の一つも言わないばかりか、表情も他の人間の冒険者に接するように穏やかだ。

 おそらくだが、この反応を見る限りこの街の組合にもリヴェリアの手が回っていると考えて間違い無いだろう。


(中央だけかと思ったが……)


 リヴェリアの影響力はこちらが想像している以上に大きいらしい。待っている間、普通なら魔物混じりには入れない応接室に全員通された。他の職員が茶やら菓子やらを食べきれないほど持って来たのもリヴェリアの名前の影響なのだろう。



「なんだよレイヴン。浮かない顔だな。菓子食わないのか?毒なんて入ってないぞ」


「俺はいい」


「お前の考えてる事はなんとなく分かるけどさ、向こうが勝手にしてるんだから遠慮する事ねぇって」


「何言ってるんですか。レイヴンさんをランスロットさんと一緒にしないでください。出されたからといって遠慮も無しに食べるだなんて、そんなみっともない真似レイヴンさんはしませんよ。あ、クレアちゃんは沢山食べて良いんですよ?このお菓子なんてとっても甘くておすすめです」


「あい!」


「よぉし……その菓子でいっぱいに膨らんだ頬がどこまで伸びるか試してやるからこっち来い」



 

 手紙の確認だけだというのに思いの他時間がかかっているらしい。

 そう思っていると組合長が姿を現した。

 

「大変お待たせしました。それと……」


「何だ?」


「中央冒険者組合長様には何卒宜しくお伝え頂ければ、と……」


「………これは」


「お気になさらず。どうか遠慮なくお役立てください」


(何処も同じか……)


 影響力が強いというのはいい事ばかりではない。只の挨拶、ごますり、社交辞令である内はまだいい。綺麗な言葉で取り繕っても組合長の目が全てを物語っている。


 ランスロットが言うには辺境の組合から中央へ戻りたい連中にはよくある事だそうだ。

 最近ではこういった輩が増えているらしく、先日の冒険者の街パラダイムにいたドルガもその内一人に過ぎないのだという。

 

「リヴェリアはよくこんな連中を相手にしていられるな」


「そいつは少し違う。どちらかと言えばこれはユキノとフィオナの管轄だ。あのモーガンを内偵に送り込んだのも、実はあの二人が関わっているらしい」


「そうなのか」


「リヴェリアのとこは大所帯だからな。色々やってるのさ」


「……」



 その日は結局そのまま街で必要な物を買い揃えて宿へ戻る事にした。

 今日は早めに寝て、明日の朝早くにダンジョンに潜る予定だ。



「依頼は昨日の内に二つだけ見繕っておいた。ラージラットの毛皮と蛍石の採集だ」


「それって本当に簡単な依頼ですか?私、難しい依頼とか絶対無理ですよ?」


「安心しろ。ミーシャは採取と荷物持ちだ」


「初心者向けの依頼だし、その分報酬も安い。四人の飯代と宿代を稼ごうと思ったらこのくらいがギリギリなんだよ。今日の所は慣らし程度の予定で俺とレイヴンが先行するけど、この先この程度の依頼もこなせない様じゃあ、今後は野宿と狩りだな」


「うう……頑張ります」



 ラージラットは何処にでもいる低級の魔物で、三匹から五匹程度の群れを作って行動している。動きが素早く捕まえるのは一苦労するだろう。罠を仕掛ける方法もあるがおすすめ出来ない。

 魔物は知能が低いと思われがちではあるが、実はそんな事は無い。上手く罠に誘導出来れば効果が得られる場合もあるというだけで、ほとんどの場合人間の仕掛けた罠などは簡単に避けられてしまう。

 特にラージラットは賢く、危険を感じると仲間を呼ぶ習性がある。もしも、ラージラットの大群に襲われたら低ランク冒険者などはひとたまりも無いだろう。この程度の狭い通路ならあっという間に埋め尽くす数になる。


 次に蛍石だが、名前の通り暗いダンジョンの中で淡く光る鉱物だ。白、黄、青、緑、紫など多様な輝きを放つ石で見つけるのは容易い。ただし、水場に動物が集まる様に蛍石の光に引き寄せられて集まる魔物もいる。

 主に蟲の類いの魔物で、毒や痺れの効果を持つものが多い。中途半端にダメージを与えて魔物の体液に触れたりすると致命傷を負う場合もある。倒すなら一撃で頭を斬り落とすか、魔具や蟲を遠ざける煙玉を使用するのが好ましい。


「大半の冒険者は魔具や煙玉を使用するが、俺はその手の道具は使用しない」


「どうしてですか?使った方が良いんですよね?」


「ああ。だが、面倒だ。金もかかる」


「お金……」


「安全に捕まえたいならそれでも良いんだけど、報酬に見合わねぇもんな。罠なんか買ってたら飯代にもなりゃしない」


「ああ。なので見つけ次第斬り捨てる。先手を取れば良いだけの話だからな」


「え……」


「ミーシャ、クレア。レイヴンの今の話は参考にしなくて良いぞ。毎回毎回、当然の様に先手を取れるのはレイヴンだけだ」


 レイヴンという冒険者の持つ鋭い感覚は、SSランク冒険者であるランスロットから見ても異質なものだ。

 探知の得意な魔法使いでも見落としてしまう様な魔物を鋭い感覚だけで捉えてみせる。いくつもの死線を潜り抜けて来たレイヴンだけが持つ異能とも言えるものだ。真似しようとしても、とても訓練だけで身に付くものではない。


「で、ですよねぇ……」


「でも、もしかしたらクレアなら出来るようになるかもな。ちゃんと俺やレイヴンの動きをみておくんだぞ?」


「あい!」


「クレアちゃん可愛いですぅ!!!」


 少し緊張の解けたミーシャは事前に渡しておいた資料に真剣に目を通し始めた。

 

 冒険者として何の土台も無いミーシャをダンジョンへ連れて行くのは無謀だ。ともあれ金が無いのでは仕方がない。自分の飯代くらいは稼げるように頑張って貰うしかないのだ。




「ここだ」


「ふーん。俺もこのダンジョンは初めてでどんな所が気になってたんだ。けど、なんつうか普通の鉱山って感じだな」


 入り口付近には未だに当時使っていた道具が放置されている。既にどこれも壊れているが、放棄された鉱山である事を来訪者に報せる役割もあってそのままにしてある。


「昔は只の鉱山だったらしい。魔物が棲みつき始めてから、まだ百年も経っていないそうだ」


「へえ〜」


 世界中に無数に存在するダンジョンは、半数が自然発生。残り半数が、人間やドワーフ達の手が入った鉱山や洞窟に魔物が棲みつく事でダンジョン化する。

 主な魔物の発生原因は、鉱物に含まれた魔力や瘴気だと言われているが、はっきりとした事は未だに謎のままだ。


「出来て間もないダンジョンねえ……。クレア、迷子にならない様に離れるなよ」


「あい!」


「あ、ああああああの、私やっぱり街で待っていても良いですか?」


「別に構わねえけど、食費と宿代どうするんだよ?」


「いや、でも……私、武器とか持った事も使った事も無いですし……」


「んな事分かってるって。だから言ったろ。ミーシャは素材を拾って鞄に入れてくれれば良いって。でも、念の為にナイフくらいは持っておけよ。ほら」


「うう……分かりましたぁ」


 ダンジョンを進んで行くと直ぐに別れ道に突き当たった。面倒な事にどの道からも風の吹く音がする。

 入り組んだダンジョンから外界へ戻る際に頼りにするのが風の流れだ。それが彼方此方から風が吹くという事は目印をつけるなどしながら進むしか無い。


「これは案外面倒かもな。なぁ、レイヴン。本当にここは低ランク冒険者向けのダンジョンなのか?」


「……その筈だ」


(……おかしい。前に来た時とダンジョンの造りが違う)


「筈って……クレアとミーシャもいるのに大丈夫か?」


「ああ。強い魔物の気配は無いし、地図も用意してある。先へ進もう」


 自然発生したダンジョンの内部構造が変わるというのはよくある事。然程気にするような事でもない。だが、ここはドワーフが掘った鉱山跡地だ。天井や壁が崩れたりしたのなら分かるが、通路の位置そのものが地図と変わっているのはおかしい。ランスロットもそれを気にしたのだろう。

 大して強力な魔物の気配を感じる訳では無いので問題は無いと思うが、念の為に用心しておくとしよう。


「クレアちゃん、私と手を繋ぎましょう!わ、私を守って下さい!」


「あい!」


「お前が守られるのかよ!パラダイムでの魔物の大群に比べたら余裕だろ。クレアの方が落ち着いてるじゃねぇか」


「そういう問題じゃないです!ら、ランスロットさんはちゃんと後ろを見張ってて下さいよ⁈ 」


「分かった分かった。少し静かにしろよ。魔物が寄ってくるだろ……」


「あ!また二回言いましたね⁉︎ 」


「もうそれは良いって……。クレア、ダンジョンの中ではミーシャみたいにうるさくしたら駄目だからな? 魔物が沢山寄ってくるから危険なんだ」


「あいっ」


 レイヴンを先頭に、クレアとミーシャを列の真ん中に据えてランスロットが後方の警戒をしながら進んで行く。

 多少地図とは構造が違うものの、元々単純な構造のおかげで迷って出られないという心配はなさそうだ。

 一つ気がかりなのは、魔物の気配は確かにするのに一向に遭遇しない事だ。蛍石などの蟲系の魔物が寄り付きそうな鉱物も多くあるのに姿が何処にも無く、通路には風の流れる音だけが聞こえている。


(やはり変だ。これは一度街へ戻って情報を集め直した方が良いかもしれないな……)


 出来る限りの蛍石を集めて一旦街へ戻るべき。そう判断したレイヴンは、クレアとミーシャに鉱物採集の方法だけ教えて早速作業をさせる事にした。


「これもそうだ。色は似ているが手触りはまるで違う。こっちは色も手触りも同じだが、光を当てた時の反射の仕方が違う。分かり易く値段の高い順に並べるとこうなる」


「あう……」


「手触りの違いは分かるんですけど、光の反射っていまいち……」


「ナイフを出してみろ。石の光を刃に反射させて光が一つに纏まって真っ直ぐに伸びる方が質も良く価値も高い」


「おお〜!なるほどです!」


 大小様々な鉱物がある中で、最も価値の高い鉱物を見分けて持って帰る必要がある。大きくてもひび割れていたり、不純物が混ざって濁っている物は駄目だ。

 持って帰ったところで二足三文で買い叩かれてしまう。

 質の良い物を見分ける目と知識があれば、簡単に騙されるという事も減るだろう。


「ランスロット、今掘っている分を回収したら街へ戻る。やはり何かおかしい。以前来た時とはダンジョンの造りが違い過ぎる」


「あのさあ、レイヴン……」


「何だ?」


「何でそんな大事な事、最初に言わねぇんだよ。ここに居るのは俺とお前だけじゃ無いんだぞ?」


「……」


「レイヴンの性格は分かってるつもりだから、その事についてあんまりとやかく言うつもりは無いけどよ……。その、なんだ、俺も似たようなとこがあるから偉そうには言えないんだけどな。もう少し周りの奴の目線ってのを考えてやれよ」


「目線?」


「そう、目線。例えば今、レイドランクの魔物が現れたらどうする?」


 ランスロットの質問の意図が分からない。

 そんな事を聞かれても、倒して素材を持ち帰るだけの事だ。


「倒して素材を持ち帰る」


「だよな」


「……何が言いたい?」


「レイヴンにとってはその辺の雑魚と変わらないかもしれないけど、いくら俺でもレイドランクの魔物を単騎で倒すのは無理だぜ? 遭遇したら真っ先に逃げる。それがクレアやミーシャならどうだ?」


「どうだと言われても、俺が倒せば済む話だ。何も問題無い」


「問題大ありだろ。何の為にわざわざ報酬の安い安全なダンジョン選んだのか思い出せよ。俺達はクレアの為に来たんだぜ?」


「分かっている」


「分かってねえっつうの。俺やお前の基準じゃなくて、クレアを基準に考えてやれよ。クレアが自分でも対処出来る様にしてやらなきゃ意味無いだろ。この先もずっと俺達が一緒に居てやれるかも分からないんだ」


「……」


 レイヴンの性格は今更だ。けれど、それ以上に強過ぎるせいで“危機感”が鈍くなっている事をランスロットは危惧していた。


 魔物堕ちした時のクレアの力は瞬間的にではあったがレイドランクの更に上、フルレイドランクに相当するとリヴェリアが言っていた。

 そんな馬鹿げた力を持つ相手に単騎で挑むレイヴンを見た時は、本当に力の差を思い知らされた。あの場に居た全員同じ気持ちだったと思う。

 逃げなかったのはレイヴンとリヴェリアが居たからに過ぎない。


 あの時、おそらくレイヴンの頭にあったのは、クレアを元に戻してやれるかどうかだけ。

 フルレイドランクの魔物を倒せないとは微塵も思ってはいかった筈だ。


 別にレイヴンはそれで良い。出鱈目な強さだってのは分かっていた事だ。でも、クレアにとっては良くない。

 知識や技術は大事な事だし、これから先生きて行くには必要な事だ。

 戦闘技術にしても同じ事だが、技だけ磨いても意味が無い。危機感を研ぎ澄まさなければ相手との力量差も分からないまま足元を掬われて命を落とす事にもなりかねない。

 知識や経験以上に危機感が教えてくれる事は存外に多いのだ。


「俺達が手を出して良いのは要領を掴むまでの間と、クレアじゃあまだ対処出来ない魔物が現れた時だけだ。いいな?」


「分かった」


「頼むぜ、レイヴン」


「ああ……」


 クレアとミーシャが無事に採集を終えたのを確認して街へ戻る事にした。二人にはダンジョンの異変の事は伏せたままだ。『俺達が慌てた様子を見せたら二人が不安がるから』というランスロットの助言は正直助かった。


 依頼の鉱石採集の方は思っていたよりも早く終わった。

 クレアの学習能力にも驚かされたが、意外だったのはミーシャの記憶力だ。先入観が無いからなのか見分けるのが難しい鉱石の選別も何度か手本を見せただけで完璧に覚えた様だ。


「よくやった」


「あい!」


「私も頑張りましたよ! 私も!」


「あ、ああ……よくやった」


「やったあ! 聞きました? ランスロットさん! レイヴンさんに褒められましたよ!」


「現金な奴だなぁ。まあ、確かに初めてにしては上出来だ」


「ふふふ。ランスロットさんを追い抜く日も近いかもしれませんよこれは」


「よし、帰るか」


「わー!無視とか最悪です!」


 

 レイヴンは皆が成果を確認し合っている間、ランスロットに言われたことを考えていた。

 自分なりに周囲の事を考えていたつもりだったのだが、どうやらその考えは随分とズレているらしい。


「レイヴン……」


「何でもない。よくやった、クレア」


「あい!」




 街へ戻ったら組合で換金する時にでもダンジョンの情報を集めてみるとしよう。もしも、組合が把握していないのなら面倒な事になるかもしれない。

 だがレイヴンは、組合はこの事を把握していないのではと考えていた。中央組合の御機嫌伺いをする様な組合長が、関係者と思しき冒険者に情報を提供しないなどという事は、経験上まずあり得ないと思うからだ。


「……」


「ん? おい、どうしたレイヴン? 早く帰ろうぜ?」


 既に手遅れだった様だ。

 何か手を打たなければ街へ戻れなくなるかもしれない。


「面倒になった。……道が()()()()()。目印も消えてしまった様だ」


 

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