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他人日記  作者: 糸島 凪
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調べて記す女

カフェ、と言っても前々回やってきたカフェとは違うところにいる。

今日もまた気になる人に出会ってしまった。


斜め左に50代くらいのメガネをかけたマダムがいる。夜中のカフェだというのに、電子辞書とさっきからにらめっこをしているのだった。


電子辞書?なぜカフェで?


服装は軽めで動きやすそうに見えるが、激しい競技をしてきたわけではなさそうだ。隣の椅子に大きめの鞄が置かれていてそれがアウトドアなスポーツをしてきてない主な理由となった。


電子辞書も謎だが、何だあの草?


女性の使っているテーブルの上に水の入ったコップに謎の草を生けた謎のオブジェがあった。


店員さんには注意されなかったのだろうか、注文カウンターのすぐそばなので店員さんの目に止まることは絶対なはずなのに特にお咎めなしなようだ。


きっと常連客か名の知れたマダムなのだろう。


そういえば、彼女はお手拭きの上にもよもぎのようなギザギザしている葉っぱが置かれている。


もしかして、あの女性は野草採取と洒落込んでいたのではないか?動きやすそうだがスポーツ向きじゃない格好は町外れに野草採取に行くためだった、そして夜のカフェに現れたのはかなり遠くの町外れから帰ってきたばかりだから。


そう考えると、彼女は今熱心に名の知れない草花の名を小さな電子辞書で藁山から針を探す思いで探しているのだ。


かつて誰かが言っていた、雑草という名の草はない。彼女はまさに手に入れた草花一本一本の名を一期一会の客人のように、儚くも覚え続けようとしているのだ。


彼女が調べ、熱心に書いているレポートのようなものは実は日記で一日一日どんな植物と出会ったのか、どんな自然と語り合ったのかが事細やかに書かれているに違いない。


まさに草木を分けるパイオニア、人生100年社会ともいわれる現代を生き抜く白百合のような人だ。彼女にはのちの50年も大いに人生と草花の青い匂い酔いしれてほしい。


きっと彼女の魂が沈められるその時には人1人の人生と名がある草花の書が数多見つけられる事だから。




うーん、久々に目頭がジーンとする人を見つけてしまった……



それでは、私もこのへんでもういっぱい紅茶でも頼もうかな!


よっとこ翔一、ん?


外来植物の駆除?なぜ彼女の日記にそんなタイトルが?


あ。


外来種バスターの人か……










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