香蓮の告白
こうなってしまったのは、全部わたしのせいだ。
巴菜に話しても何もかわらないと思うけど、話すことで少しでも罪悪感から逃れたかった。
「前に…真央が女だったらよかったのにね、って会話したよね?」
「うん…そしたら本当に女になったからビックリしたけど…」
「あの日の夜、巨大な彗星が流れるって話題になってたの覚えてる?それを見たとき、とっさに真央が女になりますようにって願ったんだ。今思えば、なんでそんなことを願ったのかわからない。きっと、毎日のように付き合ってるとか、両想いとか言われるのにうんざりしてたからだと思う。けど本当にそんなことになると思わないでしょ?冗談で願ったのに…翌日、真央は本当に女になっていたの…」
「香蓮…それは考えすぎだよ。そんなことで叶ったら、世の中みんな願い事するよ」
巴菜が言うことはもっともだが、偶然にしては重なりすぎているのも事実だ。
「それでもきっと…わたしのせいなの!わたしがそんな願いをしなければ、真央は今も普通に男で、昨日みたいなこともなくて…」
香蓮は自分を責め続けた。
そっか…香蓮はずっとそんなことを思っていたんだ。
だから、昨日のことも気づけなかったんだね。
それでも巴菜は考えすぎだと思った。
確かにあの彗星は話題になっていて、巴菜もニュースで映像は見た。
流れ星とは違う、あきらかに大きな彗星だったが、それに願いを言ったら叶ったなど、
子供のおとぎ話だ。
確かに偶然すぎるとは思うけど、やはり非現実的すぎる。
真央がなんで女になったか、原因は不明のままだが、
少なくとも巴菜は彗星のせいだなんて信じることはできなかった。
まずは香蓮の自信を取り戻すほうが先決だね。
「香蓮は、男の真央と女の真央、どっちが好き?」
「どっちも好きだよ…真央は真央だもん…でも、どっちかっていうなら…女の真央のほうが好き…女同士になったことで、性別を気にせず仲良くなれたし、女同士の会話もできるようになったから…」
香蓮なら、絶対にそういうと思ったので安心した。
それに、巴菜も同じ意見だ。
男の頃の真央は、巴菜にとってはただの友達で、
香蓮と一緒にいるときに会話をする程度だったが、今の真央は巴菜にとって大事な親友だ。
「だったらさ、わたしたちの真央を取り戻そうよ!それができるのは香蓮だけだよ」
「できないよ…真央が望んで女になったわけじゃないのに…」
「じゃあ今のままでいいの?あきらかに無理して男みたいに振舞って、あんな真央を見ているほうが胸が痛くなるよ。いい?香蓮、理由なんてどうでもいいの。問題は今の真央をどうするかなんだよ」
ここまで言っても、香蓮は素直に「うん」と言ってくれなかった。
ただ、考える時間がほしい、その一言だけを伝えて、
香蓮は巴菜に背を向けてトボトボと歩いていった。
香蓮なら大丈夫、巴菜はそう信じるしかなかった。
「龍弥、一緒に帰ろうぜ」
「悪い…今日は…」
「彼女か?しょうがねーな」
「違う!あいつは関係ない。俺はお前が…」
なにか言いかける龍弥を真央は遮った。
「まあいいや。しかたない一人で帰るか。じゃあな」
真央は一人で教室を出ていき、香蓮たちには声をかけずに帰っていってしまった。
意識的に避けているのがわかる。
きっと、真央は男なんだから朝の通学はともかく、女と帰れるか、そう思ったのだろう。
男の頃の真央でも、龍弥たちと帰らない場合は、
香蓮に「一緒に帰るか?」と必ず声をかけていた。
一緒に帰らないときでも「先に帰るから」と必ず声をかけていた。
今の真央は男の頃の真央とも違う、まったくの別人にしか見えなかった。
家に帰り、ずっと巴菜に言われたことを思い出す。
無理だよ…わたしにそんな資格ない…
でも…今の真央は嫌いだ!それだけは断言できる。
男の頃の真央と比べ、優しさを感じない、言葉遣いもあんな乱暴ではなかった。
無理に男みたいに振舞おうとしていて、不自然にしか感じない。
きっと、男の頃の自分がどんなだったか、よく覚えてないんだ。
やっぱり…真央はもう女だ、少なくとも今は女だ。
戻るとか戻らないとか、わたしのせいとか、そういうのは後まわし。
今は今の真央のことを考えないと!
香蓮は立ち上がり、走って家を飛び出した。




