ピンチ!
文化祭の準備も具体的になっていく。
特に9月中旬になってからは、実行委員の真央たちは頻繁に遅くまで残るようになり、
バイトにもほとんど行けないような生活になっていた。
「もう6時過ぎちゃったから、今日はこの辺にしておこうか」
「あ、もうそんな時間なんだ。うん、また明日頑張ろう」
切り上げる時間になり、いつも通り源治はさっさと帰っていく。
「お、俺も帰るわ」
そして龍弥がそのあとを追いかけていくのが最近毎日見る日課だ。
「根津、今日は?」
「まだ図書室がギリギリ開いているから寄っていくつもり。ごめんね」
「ううん、大丈夫。またね」
真央も杏華に別れを告げて教室を出て、
階段に向かうと「竹下」と呼ぶ声が聞こえたので振り向いたら佐山が立っていた。
隣にはもう一人男子がいる。
前に彼女の裸の画像を見せてきた、田村という男子だ。
「佐山、どうしたの?佐山も文化祭の準備?」
「まあそんなところ。それよりちょっといいか?」
「なに、またくだらないものでも見せるつもり?」
「ちげーよ、バカ」
真央は佐山が手招きするので近づくと、
そのまま佐山が歩き出したのであとをついていった。
「西川、お前少しは待つってことを知らないのか?」
さっさと歩いていく源治に龍弥が文句を言う。
「毎回言っているように、別に僕はお前と帰りたいと思ってないから」
「お前、本当に冷たいよな」
「僕と帰るより、竹下と帰れば?」
「ま、真央は関係ないだろ…」
一瞬動揺してしまった。
まずい、こいつにこういう態度をしたら…
「木谷、最近竹下のこと意識してるだろ」
ほら、言われてしまった…
「ば、バカなこと言うなよ!なんで真央なんかを…」
「お前も黒岩並みに単純だからわかりやすい。じゃあね」
源治は龍弥を置いて帰ってしまった。
俺が真央を意識してるだと…くそ、そんなはず…
そう思ったのに、真央の顔を思い浮かべると今までにはない緊張が走ってくる。
バカ野郎、あいつは友達なんだ!
自分に必死に言い聞かせながらも龍弥は帰ろうとしなかった。
「真央のやつ…待ってみるかな…」
龍弥は下駄箱のところで真央を待つことにした。
「なに、一体?」
真央は佐山たちと一緒に誰もいない教室へ入っていた。
辺りは静まり返っていて、もうこのフロアには誰もいないのがわかる。
「お前さ、いつの間には立派な女になっちゃったよな」
「まあ…多分そうだと思うけど」
「けどよ、男の気持ちもわかるよな」
なにか嫌な予感がする。
ついてきたのは失敗だったかも…
「やらせてくれよ」
やっぱり…
「バカじゃないの!信じらんない」
真央が出ていこうとしたら、田村が真央のことを抑えつけてきた。
「は、放せよ!ふざけんな!!」
すると今度は口を押えてきてしゃべれなくなってしまった。
必死に抵抗しても力の差は歴然で、一気に恐怖が真央を襲ってくる。
「男ならよ、誰でもやってみたいと思うだろ?協力してくれよ。元同じ男として。女になったばかりの竹下はまだ男っぽくてやりたいと思わなかったけど、今のお前は普通に女にしか見えないから俺もやりてーって思ったんだよ」
嫌だ…嫌だ…嫌だ!誰か助けて…香蓮…助けて…
真央は涙を流しながら震えていた。
「遅いな、あいつ…根津とくっちゃべってるのか?」
いや、根津が帰ろうと言い出したんだ、そんなはずないな。
「あれ、木谷じゃん」
話しかけられたので振り向くと知ってる顔があった。
「伊藤か、何してんだ?」
「なにって部活終わって教室に忘れ物取りに行ってたんだよ。お前こそ何してんだ、そんなところで」
「そういえばお前空手部だったな。真央のやつ待ってるんだけど…教室にいなかった?」
「誰もいなかったぞ。あれってひょっとして竹下だったのかな?」
伊藤が首を傾げている。
「どういうことだよ?」
「いや、なんか女子が2人の男と一緒に歩いていたからさ、ひょっとして3Pかななんて思ってよ」
ニタニタした笑みをしてから真顔になり「言われてみれば、あの女子竹下っぽかったかも」と言っていた。
ただ男子と歩いていただけなら、そこまで気にならなかったが、
伊藤の下ネタが妙にリアルに感じてしまい、変な不安がよぎった。
「どこ歩いていた!?」
龍弥は急いで学校の中へ戻り始めた。
「ま、待てよ」
伊藤はわけもわからず龍弥を追いかけていった。




