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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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味方

真央は廊下の隅でうずくまって泣いていた。

もう嫌だ、なんでこんなことになるの…

わたしが男だったから?今はもう女なのに…

「真央…」

泣きながら振り向いたら、そこには香蓮が立っていた。

香蓮も哀しそうな顔をしている。

「香蓮…わたしだけ別なんだって…男だったから…もう男じゃないのに…こんなことなら男だった過去なんて消えちゃえばいいのに!」

香蓮は真央を優しく抱きしめた。

「香蓮…香蓮!」

「真央、大丈夫だから泣かないで」

「大丈夫じゃないよ…なんでこんな仕打ち受けるの?なにか悪いことした?」

「ううん、真央は何も悪いことなんてしてない…」

「じゃあなんで…こんなんなら修学旅行なんて行かない…」

「真央…真央が行かないなら、わたしも行かない。真央がいない修学旅行なんて意味ないもん」

「香蓮…」

「あなたたち、今はホームルームの時間でしょ、何してるの?」

突然声がしたので振り向くと、そこには数学教師の奥寺真由美が立っていた。

真央が泣いているのを見て、なにかあると瞬時に悟った。

「どうしたの、一体?」

真央が泣いているので、香蓮が代わりに話し始める。

「先生、真央はいつまで特別扱いされるんですか?もうわたしたちと同じ普通の女子でいいじゃないですか!真央がかわいそうすぎます」

真由美はこの話を聞いて、何の話をしているのか理解した。

やっぱり、傷つくよね。


職員会議のとき、真由美は真央を別にするのに反対していた。

「それだと竹下がかわいそうですよ。せっかくの思い出になる修学旅行なのに部屋が教師と一緒だなんて」

「けどね、奥寺先生、仮にも元男子なわけで、何かあったら学校の責任になるんですよ」

「彼女に限って、何もあるはずないじゃないですか。ねえ黒岩先生」

「ま、まあ…」

黒岩の頼りない返事に少しイラっとした。

「じゃあ、多数決で決めましょう。別にするほうに賛成の方は挙手してください」

真由美はもちろん手を上げない。

ほかに上げてない教師は女性が多かった。

黒岩は普通に手を上げている。

この人は、自分の生徒の何を見ているんだろう?

担任じゃないわたしですら、竹下真央はもう普通の女子だとわかっているのに。

思わず呆れてしまった。

「賛成のほうが1人多いですね。それでは、別ということで決定します」

本人が知ったら傷つくだろうな…


真由美の予想は的中していた。

教師が生徒を悲しませるなんて間違っている!

けど、その前に本人の口からちゃんと確認をしておかないと。

「竹下さん、あなたはどうしたいの?」

「わたしは…みんなと一緒がいい…違うんだったら、グスン…修学旅行なんて行きません…」

「わかった。2人ともとりあえず教室に戻りなさい」

「先生、真央がこんな状態で教室なんて戻れません!」

「いいから、あとはわたしに任せて」

真由美は真央を立ち上がらせて、一緒に教室へ向かいだした。

真央は半分放心状態で歩いている。

教室の入り口の前まで行くと、中からいろんな声が聞こえてきた。

「真央がかわいそうだ」「先生ひどすぎる」「もう一度話し合って」

どれも真央を援護するものばかり、しかも男女両方の声だ。

「みんな…ありがとう…」

いつの間にか真央の涙が引いていた。

それを一緒に聞いた香蓮が肩を叩き、「うん」と頷いている。

「入るよ」

真由美はそういって、真央たちの返事も聞かずに教室のドアを開けた。

みんなが一斉に見てきて、シーンと静まり返っていた。

そこに真由美がズカズカと入っていき、黒岩の前で止まった。

「黒岩先生、ちょっといいですか?」

「は、はい…」

黒岩はホッとした顔をしている。

みんなに責められていたので、助かったと思ったのかもしれない。

けど、それは大きな間違いだ。

わたしは生徒たちのように甘くないからね。

入り口に立っている真央と香蓮に「中に入りなさい」と言い残して黒岩を連れて行った。

恐る恐る中に足を進めると、真っ先に巴菜が駆け寄ってきた。

「真央、大丈夫?みんなで黒岩に文句言ったから!絶対に真央だけ別になんてさせないよ」

男女関係なく、みんなが「そうだそうだ」と声を上げる。

「だから早くいつもの真央に戻って。真央と香蓮は2人セットでクラスのムードメーカーなんだから」

「ありがとう…みんな、本当にありがとう」

また涙を流し始めていたが、これは嬉し涙だ。

わかっているので、みんなが笑っていた。

もう別の部屋でもいい、わたしにはこんなたくさんの仲間がいる…

それが分かっただけでも満足だ。

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