デート?に向けて
翌日、香蓮と真央は約束通り買い物に出かけていた。
まずは2人とも買うと決めていたネックレスだ。
香蓮は欲しかったハートのネックレスを眺めてから、店員に声をかける。
「すいません、このネックレスでKのイニシャルありますか?」
「少々お待ちください」
店員が在庫を確認しに行く。
「香蓮、決断早いね」
「これを買うためにバイトしたようなもんだからね。真央は買わないの?」
「買うけど…迷う」
見ているうちにほかのも欲しくなってしまう、買い物ではよくあることだ。
「お待たせしました、Kのイニシャルありました」
店員に見せてもらい、香蓮は「買います」と即決した。
すると、別の店員が真央に話しかけてくる。
「よろしければお出ししますよ」
「あ、はい…じゃあ、このフラワーのを…」
「かしこまりました」
店員は色違いのを2種類取り出してくれた。
黄色とピンクだ。
どっちがいいんだろう…両方かわいいんだよなぁ
「両方かわいいですよね。わたしでも迷います」
店員はニコニコしながら真央に言っていた。
この人も同じこと思ってるんだ。
だったら思い切って聞いてみようかな…
「どっちが…合うと思いますか?」
まさか自分から聞くとは思っていなかったので、
自分の心境の変化に真央自身が少し驚いていた。
「そうですねぇ」店員は真央の顔を見てからネックレスを見ている。
「黄色…かな。イメージ的にこっちのほうがわたしは似合うと思います」
「じゃあ…それにします」
「かしこまりました」
1万3000円か…
自分で買ったものだと、お年玉で買ったゲーム機の次に高い買い物だ。
こういうものにお金をかけるようになるなんて不思議…
そう思いながらも気持ち的には嬉しかった。
次は香蓮の服を買いに行く。
香蓮はワンピースを手に取っていた。
「これどうかな?」
「なんか可愛すぎない?もうちょっとシンプルなほうがいいかも」
「やっぱり?そうだよねー」
香蓮はワンピースを戻して、別のを手に取る。
真央は女になってわかったことがある。
それは、男が思う可愛いと、女が思う可愛いは別ということだ。
さっき香蓮が持っていたワンピースは、女目線の可愛いだ。
男目線で言えば、可愛すぎるといったところか。
女の気持ちがわかるようになった真央も、それだけはキチンと理解していた。
「決めた、ワンピをやめよう」
香蓮はそういって、ショートパンツのコーナーに移動した。
「気取るより自然体なほうがわたしらしいじゃん?」
「急にどうしたの?」
「可愛すぎるのがキャラじゃないって思っただけ。そういうのは巴菜に任せておけばいいやって」
「確かに!」
香蓮と真央は笑ってから、真剣に服を選び、結局短めのショートパンツとオフショルのトップスを買うと、今度は「真央の番」と言い出した。
「え、俺はいいよ。前に買ったのがあるから」
「「俺」じゃないでしょ!デートまでに絶対に直さないとダメだって言ってるじゃん」
こないだからことあるごとに香蓮に指摘される。
真央も一応は直すつもりではいるが、やはり無意識に出てしまうのだ。
「ご、ごめん…」
「ホント気を付けてよ!それより買いに行くよ!」
強引に真央も服を買うことになってしまった。
まあ、香蓮と一緒だから想定内ではある…
仕方なく服を選び始める。
俺のためのデートじゃないんだけどな…
「わたしがショーパンだから真央はスカートだね」
「それずるくない?おれ…わ、わたしもそっちのほうがいい」
また「俺」と言いかけたが、ここは訂正したので怒られなかった。
「白のスカートなんかよくない?真央は清楚な感じでいこうよ」
「無理無理、清楚なんてキャラじゃないから。だったらまだこっちのほうがいいよ」
真央は黒い無地のスカートを手に取っていた。
どうせ買うなら自分が気に入ったものを買うつもりだ。
「上はどうするの?」
「これなら白のTシャツだよ。無難にね」
「えー、なんか普通過ぎるよ」
「香蓮!買うのはわたし」
ちょっと強めに言ったら、香蓮は渋々承諾した。
考えてみたら、こないだ買ったのって巴菜の趣味で可愛いのばかりだったから、
こういうのを買っておいてよかったかも。
会計を済ませて、香蓮は残金を聞いてきた。
「えーと…1万7000円くらいかな。香蓮は?」
「同じくらい。最後にシャーロットフランシス行かない?」
密かに真央も期待していたので「うん」と返事をし、仲良くお店へ向かった。
なんだかんだで、真央もシャーロットフランシスを好きになっていた。
以前はあんなに入りづらかったのに、今は自然に店内へ入れる。
「やっぱりどれもかわいいよね!」
香蓮ははしゃぎながら、アイシャドウを見ていた。
元からシャーロットフランシスのアイシャドウを持っていたので、
香蓮はアイシャドウにこだわりがあるみたいだ。
「これ、夏の限定色だよ。いいなぁ」
真央はアイシャドウよりもチークが気になっていた。
この色いいな…
ここで例によって店員が話しかけてくる。
以前とは違う人だったが、丁寧に説明してくれる。
「そちらも限定色なんですよ。明るい色なのでお客様のように若い方に人気なんです」
値段は3000円かぁ…買っちゃおうかな。
真央はチークを、香蓮はアイシャドウをそれぞれ買い、最終的に満足のいく買い物になった。
「あとはデートだけだね」
「日にち決まったの?」
「まだ8月の上旬としか」
真央は内心、このまま流れてくれないかなと期待したが、
絶対にそんなことないだろうなと思った。
なぜなら、香蓮は毎日のように佑太と電話をしていて、かなり気が合うようで、
いつも楽しいと言っている。
デートを心待ちにしているのがひしひしと伝わってくるのでもう諦めているが、
やはり真央は気が乗らなかった。
そしてこの日の夜、デートの日にちが決まり、とうとう実現することになった。




