夏休み突入!
今日から夏休み。
真央は動画でやり方を確認しながら鏡の前に座っていた。
まず下地でしょ…これを薄く塗って…
夏休み初日、真央は香蓮と巴菜と遊ぶことになっている。
香蓮との約束で、メイクをしていかなければいけないので、
メイクの動画を見ながら実践していた。
過去に2度やってみたが、1度目はムラがあってヘタだなと思い、
2度目はアイメイクが濃すぎて失敗だった。
3度目の正直といきたいところだが、やはり難しい。
ファンデーションとアイブロウまではスムーズに進んだが、問題はアイメイクだ。
以前の失敗が頭をよぎる。
これミスるとメイク落としで目だけを落とすことなんて器用なこと無理だから
全部やり直しになるもんなぁ…
アイラインの引き方は何度も動画で確認している。
それでも手元が震えてきてしまう。
ゆっくり…ゆっくりと引いていき、右目は今までで一番うまく引けた気がした。
問題は反対の左目だ。
右利きなのでリアルに難しい。
左目もゆっくり引いていく。
あ、曲がった…
慌てて指でぼかしていく。
多少滲んだが、許容範囲かなと気持ちを切り替え、なんとか左目も引き終わった。
えーと…次はアイシャドウ…
一番薄い色を指で瞼のホールに薄く塗っていく。
こんなもんかな…?
鏡で確認して、中間色のブラウンを塗り、
最後に一番濃いダークカラーを瞼のキワの部分に塗ってみる。
あ、思った以上に自然だ。やればできるじゃん!
少し自信を持ち、ビューラーでまつ毛を持ち上げてからマスカラをつける。
そしてリップを塗ってから、チークを軽く叩いてもう一度鏡でチェック。
おかしく…ないよね、うん!
ノースリーブのワンピースを着てサンダルを履いて家を出た。
香蓮はまだか。
それにしても暑いな…
香蓮の家の前でインターホンを押そうとしたらドアが開いて香蓮ができてきた。
「グッドタイミング。おっ、ちゃんとメイクしてきたじゃん」
「しろって言ったのは誰かな」
「わたし♪行こう!」
香蓮はいきなり腕を組んで歩き出した。
「ちょっと香蓮」
「いいじゃん、女同士なんだし気にしないの」
「違う、暑いの」
「うー…」
香蓮が渋々離れる。
「夏じゃなきゃ気にしないけどさぁ…今日は無理だよ」
けど、香蓮と腕を組んだのなんて幼稚園以来かな…
女同士だからできることだ、悪くないね。
ちょっと気分のいい真央だった。
電車に乗って巴菜と合流。
今日の巴菜はポニーテールにしていた。
「真央、メイクいい感じ。ワンピにちゃんと合ってるよ」
「ありがとう、巴菜も髪かわいい」
こんなことを自然に言える自分に少し驚いていた。
メイクしてワンピースを着ているからか、
いつも以上に自然体でいられている気がしていた。
今日は1日遊ぼうということで、少しブラブラしてから3人でランチに行く。
カフェでランチなんて、ちょっと大人になった気分。
パスタを食べながらまわりを見てみると、ほとんどの客が女性しかいない。
同じくらいの年の子たちもいて、そこに違和感なく溶け込めているので真央は安心した。
「これおいしい!」
「ホント?ちょっとちょうだい」
香蓮が巴菜のパスタをちょっと食べる。
「ホントだ、おいしい!真央も食べてみ」
「あ、うん」
真央は女になり、香蓮たちと行動することで知ったことがある。
それは食べ物をシェアするということだ。
最初は斬新だったが、今ではもう当たり前だ。
「おいしい!そっちにすればよかったかな」
3人で話しながらパスタを完食した。
次はお楽しみのデザートだ。
これも3人で別々のを注文しているので、もちろんシェアをする。
やっぱり楽しいな、香蓮と巴菜といると。
カフェを出てから洋服や小物などを見てまわり、今はアクセサリーを見ていた。
「これかわいい…ほしいな」
香蓮はずっとハートをモチーフにしていて、
中にイニシャルの入ったネックレスを眺めていた。
「1万5000円かぁ…無理だ」
「でも香蓮に似合いそう」
「ホント?でもお金ないから諦める…」
お店を出ても香蓮は何度も振り返っていた。
よっぽど気に入ったんだろうな…
そういいながら、真央もフラワーのネックレスがひそかにきになっていたが、
こっちも1万3000円と安くない値段だったのであきらめていた。
「ね、プリクラ」
「そーだね」
この3人で遊ぶと、最後にプリクラを撮るのが日課になっていた。
最初は嫌だった真央も、今は一緒にポーズを取って楽しんでいる。
巴菜がそれをインスタにあげるのも気にならなくなっていた。
「じゃあ巴菜、またね」
巴菜と手を振って香蓮と電車に乗るためにホームに入ったら、偶然にも龍弥に出くわした。
「ま、真央…それに大谷…」
龍弥の顔には緊張が表れている。
龍弥の女が苦手なのは、まったくといっていいほど改善されていないままだ。
「龍弥、何してたの?」
「バ、バイトの帰りだよ…それより…化粧…してるんだな…」
「まあ…一応ね」
龍弥に言われると少し恥ずかしい。
別に好きだからとかじゃなく、単に男友達に見られたからだ。
そんな会話どうでもいいと言わんばかりに、香蓮が龍弥に話しかける。
「ねえ、バイトって何してるの?」
「そ、倉庫の仕分けだけど…」
「大変?時給いくら?」
香蓮はあまり龍弥と話さない。
真央が男だったことでもそうだ。
その香蓮が珍しく龍弥にガンガン話しかけているのが、真央にとっては斬新だった。
「大変は大変だよ…肉体労働みたいなもんだから…」
龍弥はほとんど香蓮の目を見ずに話している。
ホントに女の子が苦手なんだな
このあからさまな態度が逆に、ちょっと面白く見えてしまった。
それにしても香蓮がこんなに食いつくなんて、バイトしたいのかな?
「じゃ、じゃあ俺は帰るから…」
そういって、龍弥は速足で逃げるように歩き去っていった。
「ホント木谷ってあからさまだよね」
「うん…治るようにいくら話しかけてもあんな感じだからさ」
これに関しては、ちょっとお手上げな真央だった。




