実行委員の集まり
今日は第2回目の文化祭の会議。
放課後に4人で集まって、みんなに書いてもらったアンケートを集計していた。
杏華とは和解したので、そこそこ楽しみながらやっている。
「竹下さん、それはこっちだって」
「あ、ごめん」
「次ミスしたら怒るよ」
「はーい」
2人とも少し笑いながらやっているので、雰囲気は悪くない。
源治も淡々とやっていて、問題は龍弥だった。
真央はおろか、杏華とすらあまり会話をせず、なにかあるとほとんど源治に話すだけ、
結局、女性と話すのが苦手なのは改善される気配がなかった。
「西川、こっちは終わったぞ」
「僕も終わった。根津と竹下は?」
「わたしたちももう終わる」
分担していた集計が終わり、杏華が紙に書いてまとめていた。
「やっぱりみんな飲食をやりたいんだね」
「一番人がくるからね」
真央と杏華がやり取りをしていて、そこに西川も加わってくる。
「飲食は競争率高いんだよ。確か全クラスの中で6クラス、学年で分ければ2クラスだけだから」
「根津、飲食の中でも何が多かった?」
源治が聞くと、杏華はまとめた紙をみながら答える。
「えっと…1位がカフェで14人、2位がたこ焼きで8人、3位以下は1人だけのが3つあるくらいかな」
「竹下、飲食の次に多かったのは?」
今度は真央がまとめたものを確認する。
「フリーマーケットが10人、あとは少数のばかり」
「じゃあ第1候補が飲食、第2候補がフリーマーケットは確定だね。第3候補はどうする?」
「あと展示物が2人と演劇が2人だけだから、これらを第3候補にあげるのもどうなんだろうって思うよね」
そこで龍弥がまた源治に話しかける。
「なあ西川、第3候補のみをもう一度アンケート取ったら?」
「根津と竹下はどう思う?」
「うーん、手間だけどそれでいいんじゃない?ねえ」
「そうだね、2票が2つだし」
「じゃあそういうことにしよう。今日はこれで終わり。じゃあ僕は帰るから」
源治はさっさと荷物をまとめて教室を出ていく。
「お、おい待てよ!」
そのあとを龍弥は急いで追いかけていった。
龍弥のやつ…いつまで避けるつもりなんだろう…
怒りというより呆れてしまった。
「竹下さんってさ、木谷くんと仲良かったよね?ケンカでもしてるわけ?」
「してないよ!なんか龍弥が一方的に避けてくるんだ。意味がわかんなくて」
「ふーん…なんなんだろうね?」
杏華も首をかしげて「あっ」と叫んだ。
「なに、どうしたの?」
「ひょっとして竹下さんのこと好きなんじゃない?」
「はあ???」
何を言い出すんだ、いったい!
「ないないないない!」
真央は全力で否定した。
「じゃないと避ける理由がないよ。わたしだって男の竹下さんを好きだったときに緊張してあまり話すことできなかったから。絶対にそうだよ」
やっぱり根津って変わってるな…
杏華が自分基準で話すので苦笑いをしていた。
「西川、俺を置いていくなよ!」
早歩きで龍弥は源治を追いかけていた。
「別に一緒に帰る理由がない。僕は早く帰ってアニメを見たいんだ」
「お前の趣味は人間観察だろ?」
「そうだよ、けど家ではアニメだから」
とことんオタク気質なやつだなと思った。
「それより木谷、いつになったら竹下と話すわけ?そんなことしてるうちに竹下はまた一段と女らしくなったよ」
「どこが?あんまり変わってないと思うけど…」
「夏服になってから普通のブラになったよ」
「お前…そんなところまで見てるのかよ…」
平然と言っている源治が気持ち悪い。
龍弥は普通に引いてしまった。
「別に僕の自由だろ。誰に迷惑をかけているわけでもない、僕が一人で勝手に楽しんでいるんだ」
それもそうだが…
「僕にどうこういうよりも自分のほうをなんとかするべきじゃないの?今週、木谷は女の子と一言も話してないだろ。今日だって僕と根津と竹下しかいなかったのに、あの2人とは一言も話していない」
こいつ…本当によく見てやがる、ムカつくなぁ…
「今、ムカつくと思っただろ。木谷の癖を発見したよ。ムカつくと右目が吊り上がる」
気づいていなかったことを指摘され、余計に右目が吊り上がっていた。
「木谷は単純だから観察対象としては面白みにかけるんだよね。根津や竹下もそうだけど」
「じゃあ他のやつを観察しろよ」
「他の人もやってる。同時に観察できるから」
やっぱり気持ち悪い…いや、不気味なのかもしれない。
けど真央や杏華と話せないのは紛れもない事実なので、
集まりのときに源治としか話せない自分自身が龍弥は情けなかった。
真央…お前がもう少し男らしくしてれば、少しは話すことができたかもしれないのに…
学校から帰っているとき、香蓮がふと言い出した。
「髪伸びてきたよね」
「言われてみればそうかも…」
触ってみると前より長くなった気がする。
ベリーショートからショートになったという感じだ。
「そろそろ切ろうかな」
「どれくらい?」
「前と同じくらい」
「ダメだよ!せっかく伸びてきたのに」
「なんで俺の髪なのに香蓮が怒るわけ?」
「髪の長い真央を見たいから」
でた、また香蓮の自分勝手な理屈…
慣れていてもため息がでる。
「はぁ…じゃあどうすればいいの?」
「揃えるくらいでいいんじゃない」
まあ…確かにあまり短すぎると、こないだ巴菜と買った服も似合わないかもしれないや。
「わかった、そうする」
「やけに素直だね」
「俺も思うことがあるの!それよりどこで切ろうかな、床屋ってわけにいかないよね?」
「当たり前じゃん!わたしが行ってる美容院紹介してあげるよ。友達紹介すると500ポイントもらえるの」
それが理由か…香蓮らしい
香蓮の紹介で土曜日の午後に予約をした。




