香蓮の誕生日
今日はわたしの誕生日だ。
早いものでもう17歳、あと1年で選挙権を得る年齢になる。
そこはたいして問題じゃないんだけどね。
でも誕生日ってみんなが祝ってくれるから1年で一番好きな日。
朝食を食べるためにリビングに行くと、
父親の聡が新聞を読みながら香蓮を見てきた。
「香蓮、今日は誕生日だったな。おめでとう」
「ありがとう、お父さん」
朝食を作り終えた由紀恵も「おめでとう」と言ってくれた。
やっぱり、おめでとうと言われるのは素直に嬉しい。
笑顔で家を出ると、ちょうど真央も家から出てきた。
最近の真央は遅刻をしなくなった。
高校生とはいえ、男よりも女のほうが身支度に多少時間がかかるので
前よりも早く起きるようになったらしい。
「真央、おはよう」
「おはよう、香蓮。今日は天気いいね」
「そ、そうだね」
あれ?おめでとうって言ってこないぞ…
真央は毎年、朝会ったときに「おめでとう」と言ってくれるのに…
まさか忘れてる?
歩いていても、普通の話ばかりで誕生日の話題に触れてこない。
香蓮はだんだん不機嫌になっていた。
「香蓮、どうしたの?」
「別に」
真央なんて大っ嫌い!
今日は途中で巴菜にも会わなかったので、
このまま不機嫌なまま2人で学校に着いた。
教室に入って席に座って見回してみたが、巴菜や凛は見当たらなかった。
そして着いてすぐに真央も教室を出ていく。
ここでやっと香蓮は気づいた。
あ、そういうことだったのか!
3人が一緒に教室へ入ってくる。
「香蓮、誕生日おめでとう」
「ありがとう!」
最初に凛がプレゼントを渡し、次に巴菜が渡してくれる。
笑顔でそれを受け取ると、「香蓮、俺からも」と真央も渡してきた。
「え、真央も??」
真央が誕生日プレゼントをくれるなんて小学生以来だ。
嬉しさがこみあげてくる。
「開けていい?」
「もちろん!」
香蓮はくれた順に開け、凛の袋はお菓子が入っていた。
「あ、これ大好き!ありがとう」
「香蓮が好きなの知ってたからね。それなら喜ぶかなって思った」
次に巴菜の袋を開ける。
「あ、シャーロットフランシスのリップ!しかもほしかった色だ。ありがとう、巴菜」
そして最後に真央。
実はこれが一番楽しみだった。
真央はなにをくれたんだろう…
「シャーロットフランシスのボディークリーム!巴菜と一緒に買いにいったの?」
「まあね、さすがにまだ一人じゃいけないよ、あの空間は」
真央は少し苦笑いしていた。
「みんな、ありがとう!」
改めてお礼を言ったあと、巴菜がみんなで写真を撮ろうと言い出し、
近くにいた伊藤に撮ってと頼んでスマホを渡した。
「んだよ、めんどくせーな…ほら、早く並べよ」
伊藤は面倒くさいといいながらも指示をしてくる。
今日のメインは香蓮なので真ん中、その右隣に巴菜、左隣に凛、真央は凛の隣に立った。
4人でポーズを決めて、楽しい思い出の写真となった。
「じゃあね、巴菜」
「バイバイ、三上」
「うん、また明日」
巴菜と駅で別れて、真央と2人になる。
「まさか真央がシャーロットフランシスくれると思わなかった。ってか、シャーロットフランシスを知ってると思わなかった。知ってたのにこないだ説明したのが恥ずかしいんだけど」
「だって知ってるって言ったら、なんで知ってるの?って絶対に聞くじゃん。そしたら誕生日プレゼントがバレちゃうと思ったから」
それもそうか、絶対にわたし、追及してた。
「ところで真央は何を買ったの?」
「えっ…な、なにも買ってないよ!」
このうろたえ方、嘘だ。
巴菜はわたし以上にオシャレでメイクが好きだ。
その巴菜と一緒にいって何も買わされないわけがない。
でも今日はやめておこう。
真央が誕生日プレゼントくれたから。
「真央、走ろう!」
「は?なんで??」
「なんとなく!行くよ!!」
香蓮が走り出すと、「待ってよ」と真央が戸惑いながら追いかけてくる。
小学生に戻ったような気分だった。




