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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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起きたら女になっていた

「真央、早く起きなさい!また香蓮ちゃんが来ちゃうよ」

母親の雅子の声で目が覚める。

ああ、もう朝か…時計を見ると7時20分。

香蓮が迎えに来るのは7時40分、20分しかない。

仕方なく起き上がると、違和感があった。

あれ?なんでパジャマがこんなにブカブカなんだ?

半分寝ぼけながらパジャマを脱ぐ。

そのままYシャツに手をかけたとき、真央は異変に気付いた。

なんだ、この白くて細い腕は?

そのまま視線を下におろすと、2つの膨らみが見えた。

これって…胸?

「え、嘘だろ!?は?なんだこの声…」

慌てて股間を触れると、あるべきシンボルが存在していなかった。

「な、なんだよこれ!!」

一人で騒いでいると、雅子が部屋に入ってきた。

「なに騒いでいるの…よ」

雅子は真央を見て固まっていた。

「真央…なの?」

「母さん!これどういうことだよ!!なんで俺、女になってるんだよ!!!」

真央はパニックになっていたが、雅子もパニックになっていた。

そこへ今度は父親の博幸が階段を上がってくる。

「おい、2人して騒いでどうしたんだ?」

雅子はハッとなり、慌ててドアを閉めた。

「お父さんは入っちゃダメ!」

ドアの向こうから「なんでだ」と聞いてくる。

「いいから!下に行ってて」

「わ、わかったよ…」

博幸が階段を下りていく音がする。

雅子はホッと一息ついてから、改めて真央を見てきた。

「本当に真央なのね?」

「本当だよ…なんでこんなことになってるんだよ…」

雅子が聞きたいくらいだ。

だが、顔を見ると真央の面影がある。

何よりも自分の子供だという感覚がしっかりとある。

この子は間違いなく真央、わたしの子供…

「と、とりあえず服着なさい。話はそれから」

「あっ…」

パンツのみの姿だったので、慌てて着ていたパジャマを再び着たが上下ともブカブカだ。

特に下は今にもずれ落ちそうだった。

「真央はいつその姿に?」

「起きたらこうなってたんだよ!」

見た感じ、本当に女の子だ。

とりあえず病院に連れて行ったほうがいいかもしれない…

「お父さん呼ぶよ、お父さーん」

そうか、さっきは裸だったから父さんを追い出したんだ…

俺、男だから気にしないのに…

博幸がドアを開けたと同時に固まったのは言うまでもない。

そこでドアがドンドン叩かれる音がしてきた。

「香蓮だ…」

「今日は休むっていってくるから、ここにいなさい」

雅子は玄関に向かっていき、博幸と2人だけになった。

「お前…本当に真央なのか?どうしてそんなことに…」

そんなこと聞かれても困る、聞きたいのはこっちだ。

少ししてまた雅子が戻ってきた。

「香蓮ちゃんには体調悪いから休むって言っておいた。それよりどうする?ひとまず病院に連れて行こうか」

「それしかないだろうな…もとに戻るといいが…」

真央は不安に押しつぶされそうになっていた。


巴菜が駅を降りると香蓮が一人で歩いているのを発見した。

あれ、今日はひとり?

「香蓮、おはよ!」

「巴菜、おはよー」

「真央くんは?」

「体調悪いから休むって。変なもんでも食べたんじゃない?」

そういいながらも、少し寂しそうに見えた気がした。

学校に着いてもみんなから「竹下くんは?」と聞かれていた。

巴菜もそうだが、みんなの認識は常に2人セットなのだ。

「そういえば今日カラオケだよね?」

巴菜が凜と一緒に香蓮に聞くと「ごめん、一応真央の様子見に行く」と言ってきた。

巴菜はきっとそう言うだろうなと思って、微笑んでいた。


真央は部屋でふさぎ込んでいた。

病院で検査した結果、100%普通の女の子だと言われ、原因もわからない、

完全にお手上げ状態だった。

それどころか本当に男なのかと疑われる始末だ。

俺はもう男じゃない…これからどうやって生きていけばいいんだよ…香蓮

無意識に香蓮にすがっていた。

少しして博幸と雅子が部屋に入ってきた。

「調子はどうだ?」

「どうもなにも…変わらないよ」

「そうよね…あのね、今後の生活なんだけど、今から学校に相談に行くの。一緒に来る?」

「行かない、そんな気分じゃない…」

「母さん。俺たちだけで行こう。真央、ちょっと行ってくるから…あまり落ち込むなよ。お前が男だろうと女だろうと俺たちはお前の親で、真央は俺たちの子供なんだから!」

博幸の言っていることはしっかり理解している。

ゆっくり無言で頷くと、2人は部屋を出て真央の学校へと車で向かっていった。

それから5分くらいして、家のドアからドンドンと叩く音が聞こえてきた。

「香蓮だ…」

今会うわけにはいかない、このまま居留守を使おう…


「あれ、おかしいな?真央―!」

ドンドン叩いても返事がない。

「寝てるのかな?」

ドアを開けようと思ったが鍵が掛かっている。

香蓮はそのまま家の脇にまわり、3つ目の植木鉢を持ち上げた。

そこには家の鍵が置いてあるからだ。

香蓮と真央は家族ぐるみで仲が良く、

なにかあったとき用に鍵の隠し場所を教えあっていた。

特に香蓮は頻繁に真央の家にも行くので、

勝手に入っても怒られないくらいの間柄だった。

ガチャっと鍵を回して家の中に入った。

「お邪魔しまーす」

靴を脱ぎ、そのまま階段を上り始めた。


鍵が開く音がしたと思ったら、今度は階段をあがる音がする。

父さんたち?違う…まさか!

「真央、いるんでしょ?」

やっぱり香蓮だ!なんで勝手に入ってくるんだよ!!

来るな!と叫ぼうとしたが、声が違うのでまずい。

どうすればいいんだ…そうだ!

真央はとっさにベッドの中にもぐりこんだ。

そこでドアが開く音がする。

「真央…なんだ、寝てるのか」

ベッドの膨らみで寝てると思ってくれたらしい。

このまま帰る…はずがない!香蓮だぞ…

「頭まですっぽり被ってると汗かくよ」

そういいながら布団を掴んできた。

まずいまずいまずい…

布団をはがされないように、真央は力いっぱい布団を掴んだ。

「あれ、ちょっと真央、起きてるんじゃん!」

香蓮が思いっきり布団を引っ張ってくる。

はがされないように真央も力を強める。

「真央!いい加減にしろ…!」

そっちこそ!と心の中で叫びながら踏ん張る。

こうなれば根比べだ。

お互いが引っ張り合っていくうちに布団がズレてきて顔が出てきてしまう。

「あっ」と思い、意識を顔のほうに持っていった瞬間、力が緩んでしまい、

布団を引っぺがされてしまった。

「へっへー、わたしの勝ち!」

もうダメだ…真央が諦めると、案の定香蓮が固まっていた。

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