理由がわかった
ドアを開けると真央はベッドでうつぶせになっていた。
あれ、気づいてない…なにか集中してるのかな?
どうやらスマホを見ているみたいだ。
そーっと近づき、覗き込みながら「何見てるの?」と声をかけると真央は
「わぁ」と飛び上がる様に声を上げて驚いていた。
「香蓮!なんでいるんだよ!っていうかいつから」
「今さっき、全然気づかないんだもん」
「そ、それより何の用?こんな時間にそんな格好で…」
真央はそういいながらスマホを後ろに隠していた。
怪しい…
「スマホで何を見てたの?」
「な、何も見てない」
嘘だ!
心配してきたのに、香蓮の中で好奇心が勝ってしまった。
「見せて」
香蓮はスマホを奪いにかかった。
「だ、ダメだって!」
真央は渡さんとばかりにスマホを握る。
奪い合いのような形になったが、力は香蓮のほうが上だった。
「ああっ!」
香蓮はスマホを奪い取ることに成功した。
「へへーん、布団に続き、わたしの勝ち!さて、真央は何をみていたのかな?」
香蓮は画面を見て固まった。
「真央…こんなの見てたの?最低、心配してきたわたしがバカだった」
せっかく女っぽくなってきたと思ったのに…なんだかんだで男なんだね、真央は。
男の頃だったら、仮にこうなっても笑いながら「最低」と言ったくらいだろう。
だが、今の香蓮は軽蔑の目で見ている。
「帰る。ホントバカみたい」
香蓮は背を向けて歩き始めていた。
違う、そうじゃないんだ…けどこんな話しても香蓮はわかってくれないだろうし…
香蓮がドアノブに手をかけたとき真央は「待って!」と叫んだ。
香蓮の足が止まる。
真央は覚悟を決めて話し始めた。
「なにも感じないんだ…女の裸見ても…」
香蓮は振り向いた。
「真央、それって…」
真央は香蓮の顔を見ず、下を向いたまま話している。
「今日さ、佐山が学校で女の裸を見せてきたんだよ…それなのにどうも思わなくて…普通裸ってエロいじゃん?興奮するじゃん?そういうのがなかったんだよ。気のせいかなって思って…でも考えてみたら、こないだ香蓮が下着見せたときもホントにお揃いだ、くらいしか思わなくて…だから確認するためにスマホで見てみた…でもやっぱり裸だって思うくらいで、あとは胸大きいな、とか俺と同じくらいの大きさだな、とかそんな風にしか思わなくて…俺、おかしいんだよ。それにさ、伊藤たちの下ネタ聞いてると不快になるし、前はそんなこと思わなかったのに…」
香蓮が何も答えない。
なんて答えていいのかわかんないよね、
それともこんな話を相談したから軽蔑してるかな…
恐る恐る顔を上げると、香蓮はルームウェアを脱ぎ始めていた。
「か、香蓮!何してるんだよ」
「いいから」
香蓮は下着だけになると、それも脱ぎ始めて全裸になっていた。
「真央、見て」
「い、嫌だよ…」
真央は顔を伏せて見ないようにしていた。
いくら幼馴染の香蓮でも裸を見るわけにはいかない。
「いいから、ちゃんと見て!」
香蓮の声が真面目だった。
はじめはチラチラ見ていたが、最終的にはちゃんと見始めていた。
「どう、わたしの裸?」
「どうと言われても…」
「何も感じない?」
「う、うん…」
本当に何も感じなかった。
「やっぱり俺、おかしくなったんだ…」
「おかしくないよ、わたしも何も感じないから」
「え?」
「女の子に裸を見られても何も感じないし、裸を見ても何も感じない。なんでかわかる?」
ここまで言われて、真央は香蓮の言っている意味がわかってきた。
「女同士…だから」
「うん。真央もそうなったんだよ、自分が女の子だからそれに慣れちゃって、女の子の裸をみてもどうも感じなくなったの。だから全然おかしくなんてないよ!」
そっか…最初、女になったときにあまり意識しないようにしていたけど、考えてみればいつの間にか意識なんて無意識にしなくなってたもんな…
「あとね、わたしも伊藤たちの下ネタ大っ嫌い!下品だし、くだらないし、低レベルだし。巴菜や凜たちも同じこと言ってる。そして真央もね」
「それって…」
「真央は考え方や感じ方も女の子になってきてるんだよ」
やっぱりそうだったんだ…
「嫌?」
嫌…ではないかも…だって俺は…
真央は横に首を振った。
「だって俺は女だから」
そう答えると香蓮がニコッと笑っていた。
「だったら「俺」って言い方もやめないとね。女なんだから」
「それは無理!勝手に「俺」って言っちゃうもん。それより服着れば?別に香蓮の裸なんて見てもしょうがないし」
「あ、ムカつく!せっかく人がひと肌脱いであげたのに」
「香蓮が脱いだのは服じゃん」
また2人で言い合いが始まってしまった。
けど2人はずっと笑顔だ。
やっぱり香蓮は最高の幼馴染で親友だ。
再びルームウェアを着た香蓮に向かって真央は言った。
「香蓮、ありがとうね」
「どういたしまして、じゃあまた明日ね」
「うん、バイバイ」
香蓮のおかげでスッキリした!今日は気持ちよく寝られそうだ。
真央は晴れやかな気分で布団の中に入った。
真央はどんどん女らしくなっている。
このままだと中身も完全に女になる気がする…
香蓮はほかに気づいていることがあった。
それは言葉遣いだ。
「俺」という言い方は変わってないが、口調が全体的に柔らかくなっている。
「ああ」が口癖だったのに「うん」になっているし、
「○○だろ」も「○○じゃん」と言うようになっている。
それ以外にも「そうか?」が「そうかな?」になっていたり。
本人は否定したが、香蓮はそのうち「俺」とも言わなくなる。
そのような気がしながら眠りについた。




