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彗星に願いをこめて  作者: 姫
13/122

変化

3日後、トイレを出て廊下を歩いていたら、

佐山がほかの男子と盛り上がっているのを発見した。

「佐山」

「お、竹下」

「何盛り上がってるの?」

「こいつがさ、すげーんだよ。ほら!」

こいつというのは、佐山と一緒にいた男子だ。

名前はよく知らないが、そこそこカッコいい男子だ。

そしてスマホの画面を見せてくる。

そこには女性の裸が写っていた。

「まったく…学校だぞ」

思わず呆れてしまった。

「すげーエロい体だよな」

その言葉に違和感があった。

エロい…はずなのにエロいと思わない…

しいて言うならスタイルがいいなと思ったくらいだ…

そういえばこないだ、香蓮の下着姿を見たときもエロさを感じなかった…

俺は女の裸を見ても興奮しなくなったのか?

「これさ、こいつの彼女なんだぜ」

それを聞いてカチンときてしまった。

自分の彼女の裸を友達に見せて、さらにネタにしているなんて彼女がかわいそうだ!

ありえない!

1秒でもこの場にいたくなかったので、真央は無言で立ち去った。

最低だ、あいつら!

教室に入ると今度は大きな声で伊藤が下ネタを話している。

それが低レベルだし不快に感じた。

「男ってなんでああいう話が好きなんだろうね」

女子たちが呆れるように話している。

それに真央は同調していた。

いや、ちょっと待て…俺も下ネタは好きじゃないけど、

普通にあいつらの会話を聞いていて、それなりに楽しんでいたよな?

それなのになんだ、この不愉快さは…

俺はどうしてしまったんだ…?

「真央、どうしたの?」

香蓮が顔を覗き込んで聞いてくる。

「な、なんでもない…」

「うそだ、その顔はなんかある」

「なんでもないって!気にしすぎだよ」

強引に誤魔化し、香蓮はこの場ではそれ以上聞いてこなかった。


絶対になんかあった。

真央は誤魔化すのが下手すぎる。

それなのに帰り道に聞いても「何でもない」しか言わない。

前みたいに自暴自棄になるような感じではないけど、

少し落ち込んでるというか悩んでるというか…

家に帰ってから電話で巴菜になにかわかるか聞いてみた。

「巴菜はなにか感じなかった?」

「うーん…わたしも結構真央と仲いいと思ってるけど、香蓮ほどは見てないかも…そこまで気にはならなかったよ。ちょっと暗いなとは思ったけどね」

「そっかぁ、なんか気になるんだよね…」

「けど本人は何でもないって言うんでしょ?」

「そういうときって何か隠してるじゃん」

「まあね、なんか言いづらいことなのかも。例えば身体のこととか」

「身体のことなんて何かある?もう生理だってきたし」

「うーん…」

結局なにもわからないままモヤモヤしただけだった。

時計を見ると夜の10時。

こんな時間だけどいいよね?

香蓮はルームウエアのまま玄関に向かった。

「こんな時間にどこに行くの?しかもそんな格好で」

「真央のところ」

「明日じゃダメなの?」

「うん、今日じゃないとダメ」

そういって家を出て隣の真央の家の前についた。

夜遅いので、控えめにドアをドンドンと叩く。

少しすると、雅子がドアを開けてきた。

「香蓮ちゃん、こんな時間にどうしたの?」

「ちょっと真央と話したいことがあって…遅いのにごめんなさい」

すると雅子はニコっとして「どうぞ」と言ってくれた。

「お邪魔します」

香蓮はそのまま階段を上がって部屋のドアを開けた。


お風呂から上がってもモヤモヤは晴れなかった。

いつから俺は下ネタを不快に思うようになったんだろう?

確かに女になってからそういう話はしていない。

それに、これといって性欲もわかないから何もしていない。

前に伊藤が女の感覚を教えろ、とか言ってたっけ。

男なら知りたいだろうな…

けど、実際に女になってわかったのは女の身体はデリケートだということだ。

そういうこともわからない奴に絶対教えたくなんてない!

真央はベッドの上にボンっと跳ねながら座り、

そのままスマホを持って仰向けになった。

なんか男だったのに男がわかんなくなってきた…

龍弥はなぜかずっと避けてるし、伊藤たちは下ネタしか言わないし、

佐山だって…そういえば、女の裸に何も感じなかった…

本当に何も感じないのかな…

真央はスマホで「女性 裸」と検索してみた。

フィルタリングがかかっていないので、すぐに裸の画像のサイトが出てくる。

一番上のをタップしてみた。

男の頃に何度か見たことがあるので、どういうものかは知っている。

下に動かしていくと、すぐに裸の女性の画像が出てきた。

おっぱいキレイだな…次は…ああ、くびれがすごい、あ、この人はおっぱい小さい、俺と同じくらいかな…

ここで真央が「ハッ」となった。

なんで自分と比較してるんだ…それにやっぱりエロいと思わない…


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