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第24話 仲間と共に

 午前5時、アルストレイア王国に朝が戻ってきた。俺は気絶しているソフィーを抱きかかえながらエミリーとミアにお辞儀した。


「俺のために駆けつけてくれて、ありがとう。とても助かった。これでこの世界から黒魔術師がいなくなったな」


「ええ。やっと私たちは安心して眠ることができますね」


「そうだな。君たちのお陰でようやく平和な日常を迎えることができたよ。ところで東条はこれからどうするつもりだ?」


「まずはソフィーを回復させたい。その後に今後についてじっくり考えるよ」


「そうですね。早くソフィーさんを元気にさせてあげたいですね。ミアさん、空間転移ができるほどの魔力は残っていますか? 私はバリアを展開し続けて、魔力を使い切ってしまいました」


「すまない、私も衝撃波を何回も使用したから魔力が足りない。東条は魔力が残っていても、これ以上魔法を使うなよ。私たちは歩いて変えることにしよう」


「そうだな、ゆっくり帰ろうぜ」


 俺たちは4人で洞窟を抜け出そうとすると、目の前に松明を持った魔道士が現れた。だがこの感覚は俺たちの敵ではない。複数の少女が俺たちの名前を呼びながら駆け寄ってきた。


「東条くん! 遅れてごめんなさい。今から治療をするわ! 私のために戦ってくれてありがとう!」


「エミリーさんって魔法が使えたんだ! 平凡な普通のメイドだと思っていたよ!」


「ミアさんも魔導学会を解体してくれてありがとうございます」


「東条さん! ソフィーさんを救って頂きまして、ありがとうございます」


「皆様、アルストレイア王国のために命を懸けて黒魔術師を倒して頂きまして、本当にありがとうございます」


 アメリア、フレイ、エレナ、シエラ様、オビリア様が満面の笑みで俺たちに回復魔法を唱えてくれた。俺とソフィー、エミリー、ミアは回復魔法によって傷口が治り、徐々に戦闘で失った魔力を回復した。全身に力の源が溢れ出すような感覚で、俺たちは戦闘前の元気な状態に戻った。


 すると気絶していたソフィーが目を覚まして、俺に強く抱きしめてきた。まだ完全に回復していないソフィーは言葉を発することができないが、黒魔術師から開放された嬉しさを表現している様子だ。俺の服にソフィーの大粒の涙が流れてきた。


 ソフィーが俺に心でメッセージを伝え終えると俺から離れた。そして抱きかかえているソフィーを感動の涙で溢れているオビリア様とシエラ様に優しく渡した。


「東条様、私たちのために必死に戦って頂きまして、ありがとうございます」


 2人は泣き叫びながらソフィーを優しく両手で包み込んこんだ。


 ソフィーを女王様に託した後、俺は一緒に冒険した仲間に向き合った。号泣しているアメリア、涙を必死に我慢しているメイドのエミリー、明るい大きな笑顔のフレイ、微笑しながらガッツポーズをしているミア、深くお辞儀をしているエレナが目の前にいた。


 俺は明るく輝いている仲間の瞳を見つめながら決心した。


「みんなのお陰で黒魔術師を倒すことができた。アメリア、俺をこの世界に連れて行ってくれて、ありがとう」


「それは私のセリフよ。東條くんがいなければ、この世界を絶対に救えることができなかったわ。東條くんは私の英雄よ」


「エミリー、俺を何度も励ましてくれて、ありがとう」


「私も東条さんから何度も元気を頂きまして、ありがとうございます」


「フレイ、黒魔術師との危険な戦闘に協力してくれて、ありがとう」


「私よりも優秀な魔道士である東条くんに出会えて、楽しい生活を送れてよかったよ。ありがとう」


「ミア、俺と一緒に最前線で戦ってくれて、ありがとう」


「東条、君には何度も助けられた。ありがとう」


「エレナも俺と一緒に危険な最前線の戦いに協力してくれて、ありがとう」


「こちらこそ、魔法学校やアルストレイア王国を救って頂きまして、ありがとうございます。いつかこのご恩をお返ししたいと思います」


「オビリア様もシエラ様も俺たちのために協力してくれて、ありがとう」


「お礼を言うのは私たちです。東条様、この世界の命運のために命を張って黒魔術師と戦って頂きまして、誠にありがとうございます」


「みんな、本当にありがとう」


 仲間は温かく拍手で祝福してくれた。俺の人生で初めて大喝采の拍手を浴び、俺も無意識に小さな涙を流していた。


 拍手が収まると、エミリーが小さな声で尋ねてきた。


「東条さんはこれからどのよう暮らす予定でしょうか? 黒魔術師がいない平和になったアルストレイア王国で何かやりたいことはありますでしょうか? 私が何でもご協力しますよ」


「俺はまだ明確な予定は立てていない。これからゆっくりとこの世界を堪能したいと思う」


「分かりました。皆さんはこれからのご予定はありますか?」


「私は魔法の論文制作に取り掛かるわ。エミリー、あとで協力して。それから東条くんも暇なら協力してほしいな」


「もちろん、アメリアのためなら出来る限り協力するよ」


「フレイさんはどうしますか?」


「私は東条くんやアメリアさんの護衛だから、一緒についていくよ」


「ミアさんは何かありますか?」


「私は黒魔術師に復讐するために生きてきた。もう私にはやることはない。隠居でもするよ」


「ミア、隠居するくらいなら俺と一緒に旅に行こうぜ。未知のモンスターとか倒しに行こうぜ」


「分かった。君に付き合ってやるよ」


「エレナさんは魔法学校が解体されたので勉強できないですよね。どうしましょうか?」


「そうですね。では東条さん、アメリアさん、私も魔法の研究に参加して宜しいでしょうか?」


「当たり前だ。人数が多ければ多いほど、より良い魔法を見つけることが出来るかもしれない」


「ええ、私で良ければ何でも教えるわ」


「ありがとうございます」


「そうだ、オビリア様やシエラ様はどうするんだ?」


「私たちは崩壊したアルストレイア王国を再建するために全力で働きます」


「東条様に認められるような明るい国を目指して一生懸命、女王の義務を果たします。私たちの仕事が落ち着きましたら、今度こそアルストレイア王国についてご説明させて頂きますね」


「ありがとう、待っているぜ。ところでエミリーは何かやりたいことはあるか?」


「私は東条さんのお世話をしたいです。東条さんがこの世界で楽しく暮らして貰えれば嬉しいです」


「ありがとう、これからも頼むな」


「はい!」


「じゃあ俺たちはアーガスの家に戻るぜ。オビリア様、シエラ様、お元気で」


「皆様もお元気で」


 俺たちは女王様に笑顔で見送られながら空間転移の魔法で洞窟から抜け出した。

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