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第22話 黒い真実(下)

 ソフィーという名前に反応したのか、俺に宿っている心の声のソフィーが悲鳴を上げる。


「早く助けて! 死にたくない!」


「どうしたんだ! ソフィー!」


 その後、心の声は悲鳴しか聞こえなかった。どうやら俺の心に宿っているソフィーにも関係があるらしい。


 シエラ様は落ち着いて話し続けた。


「ソフィーは母が生まれる前に誕生し、第2代女王候補として育てられていました。しかし30年前にベルガディクス帝国という強大な国に攻められ、王国は壊滅しソフィーは敵国に捕まりました」


「それから奴らによって黒魔術師にされたのか?」


「そのとおりです。敵国の優秀な科学者によって世界を支配するような魔道士を作り出すために、生まれたときから魔道士の素質があり豊富な魔力を蓄えているあったソフィーを実験台として生贄になりました。そして実験に失敗したソフィーは黒魔術師になりました」


「だから深夜にしか動けないのか?」


「ええ、そうです。破壊力が大きい魔法を扱える魔道士を作ることに成功しましたが、それと引き換えに光を浴びると生命力が落ちてしまう欠陥品を作ってしまいました。欠陥品はベルガディクス帝国で1度も使用せず、科学者によって捨てられました。」


「ちょっと待ってくれ。何で捨てられたソフィーがここにいるんだ?」


「敵国は欠陥品をアルストレイア王国に捨て、先代の女王にソフィーを倒さないことを強制的に約束させられました。」


「まさか黒魔術師の影響力を測るためにアルストレイア王国が実験台として生贄になったのか?」


「正解です。黒魔術師を1人でも国に送りつければ、敵国が攻撃しなくても1人の黒魔術師によって勝手に対象の国が滅ぶことを実験するためにソフィーを誘拐したのです」


「ソフィーの楽しい人生を奪いやがって! ソフィーを今すぐ助けよう!」


「やめてください!」


 シエラ様は悲痛な声を漏らしながら俺を静止した。


「ソフィーを助けないでください。もしソフィーを助けたら、私たちは実験を中止した罰として敵国に攻められます。先代の女王様から絶対にソフィーを倒さないと約束しました」


「大丈夫だ、俺が何とか敵国を……」


「諦めてください! 東條様でも敵わない相手です。私たちは国民と一緒に黒魔術師に殺される確定された運命なのです」


「それを30年間も国民に黙っていたんだな」


「申し訳ございません。私たちは敵国に従うことしかできませんでした」


 シエラ様は俺と一緒に戦ってほしいという答えを言うと思っていたが、俺に諦めてほしいという全く違う回答を貰った。


なぜ俺はこの城の呼ばれたのか? 最初から運命から諦めるなら俺を呼ばなくても良いはずだろう。シエラ様の言葉に納得しない俺は黒魔術師の少女に問いかけた。


「おい、何で俺を城まで案内したんだ? 訳が分からないぞ」


 黒魔術師の少女は真剣な表情で答えようとしたが、シエラ様は彼女の口を抑えた。そしてシエラ様は魔法陣を作成しながら俺を見つめた。


「今日、私たちは黒魔術師によって滅亡します。ソフィーが作り出す魔法が完成し、この国は朝が来ない暗闇の世界となり、隣国と同じ運命になります。その時が来る前に東条様は日本に帰ってください」


「何を言っているんだ! 仲間を見捨てるのか!」


 俺はシエラ様の腕を強く掴んで魔法陣の作成を中止させた。


「国民を守るのが女王の使命ではないのか!」


「そうですね、それが理想ですね。しかし私たちはその使命を果たすことが不可能です。だから東条様はこの世界から抜け出して、元の世界で生き残ってください」


「アメリアやエミリー、フレイ、ミア、エレナはどうするつもりだ?」


「この国と一緒に滅びます」


「それでいいのか! 国民の期待を裏切っていいのか!」


「じゃあ東条様ならどうしますか! アルストレイア王国よりも何倍も強大な魔法を所持している国と戦うのですか!」


「当たり前だ! 運命を変えるために俺はこの世界に来たんだ! アメリアと約束して黒魔術師の被害をなくすために来たんだ! 確定された運命に逆らうために戦うんだ!」


 俺はシエラ様の目の前で叫んだが、シエラ様の心に響かなかった。


「東条様の覚悟は素晴らしいと思います。ですがこの国は滅びの道しか残されていません。東条様は魔導書を読んだことがありますか?」


「ああ、アメリアから貰った」


「魔導書に黒魔術師の対策について1ページも書かれていないと疑問に思ったことはありませんか?」


「どこにも書かれていなかったなあ」


 俺は心の声のソフィーから魔導書の内容を全て教わったが、黒魔術師の対処法は何もなかった。


「実は魔導学会の構成員は全てベルガディクス帝国の魔道士であり、魔導書を作成したのもベルガディクス帝国の魔道士です。何を言っているか分かりますよね?」


「だからアメリア以外の魔道士は黒魔術師の倒し方が論文に掲載しなかったのか!」


「その通りです。敵国の魔道士は無知な国民から金を稼ぐために黒魔術師の対策を一切教えず、黒魔術師に出会わないお守りを売りつけて儲けていました」


「そして敵国に攻められることを恐れて誰も敵国の魔道士に文句を言わなかった」


「その通りです。だから私たちは諦めました」


「話を急に変えて悪い。ミアのように黒魔術師に拐われた国民はどこだ? 事実を隠すためにこの部屋で保護しているのか?」


「いいえ、敵国の軍事力として強制的に働かせられています。黒魔術師が連れ去った国民全員は敵国に引き渡されました」


「ミアの言っていたことも嘘だったのか!」


「ええ、敵国によって発言を操作されていたのでしょう」


「もしかして悪夢に囚われた国民も敵国のために使われているのか?」


「はい、悪夢にいる間は敵国の魔道士に魔力を吸収され続けられます。黒魔術師の繁栄のためではなく、敵国の繁栄のために活動しています」


「敵国に負ける、以外の言葉で国民を救わなかった理由は何だ?」


「ありません」


 腐敗しているこの国を変えるには今しかない。このチャンスを逃せば2度とアメリアたちと楽しい生活を送ることができない。ソフィーを助けたい!


「シエラ様、俺を洞窟に案内しろ!」


「東条様はこの国の未来を考えずに、今すぐ日本に戻って楽しい生活を送ってください!」


「俺は日本には帰らないぜ! 日本には誰も友達もいないし、シエラ様のように本音で話せる仲間もいない。住み心地が劣悪な日本よりもアルストレイア王国で人生を楽しみたい! だから俺は1人でも戦う!」


「ですが、敵国は……」


「大丈夫だ! 日本では俺は最弱だが、この世界なら最強だ! なんとかなるさ!」


 俺はシエラ様の冷たい両手を温めながら優しく握ると、シエラ様は俺の熱意に負けてくれた。


「分かりました。では洞窟に案内します。この世界の運命を東条様に託します」


「ありがとう」


「それと言い忘れたことがありました。ソフィーは黒魔術師を量産して襲ってきます。黒魔術師を倒すと黒色の灰が発生しますが、灰は無害なので気にせず戦ってください」


「分かった。ありがとう」


 シエラ様とオビリア様はベッドを動かして、ベッドで隠していた大きな穴を見せてくれた。


「これがソフィーや黒魔術師が住んでいる洞窟です。ここでこの世界を永遠に深夜にする魔法が唱えられています。東条様、覚悟はできましたか?」


「俺ははじめから覚悟ができている! 行ってくる!」


 俺は寂しそうなシエラ様と別れ、穴に落ちた。




 5メートルくらい深い穴に落ちると、辺り一面は真っ暗だった。俺は魔法で光を照らすと、目の前には無数の黒魔術師が直径10メートルくらいの魔法陣を覆っており、魔法陣の中心にいる1人の少女が真剣に呪文を唱えていた。その少女がソフィーだろう。


 俺は魔法陣に向かって歩き始めると、心の声のソフィーが大声で叫びだした。


「東条さん! 私の全ての力を受け取りなさい! 早く私を助けてください!」


「分かった! やってやる!」


 俺の全身は光に包まれ、真っ暗な洞窟が青空のように明るい世界に変貌した。


 無数の黒魔術師は盾を生成して光を守りながら魔法陣を死守していた。俺は魔法陣を壊すために、両手に光の粒子で生成した剣を構えた。


 そして心の声のソフィーから貰った無限に溢れる魔力を利用して、黒魔術師に対して休むことなく何百発も衝撃波を発生させた。衝撃波は黒魔術師を一瞬で黒色の灰に変化させ、数分で魔法陣を覆う黒魔術師がいなくなった。


 魔法陣の中心には黒色のフードを被った1人の少女が座りながら呪文を唱えていた。俺は彼女に近づくと、「光が欲しい!」と何度も懇願しながら呪文を唱えていた。


 心の中のソフィーも「早く光を与えてください!」と必死にお願いしている。


 俺は少女の手を優しく握りしめて光を徐々に与え続けた。

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