第１７話 ７人目の魔道士
魔法学校へ急いで草原を駆け抜けていると、１００人位の黒魔術師が真っ暗な星空から急降下して俺たちを突然襲ってきた。
「まだ魔道士が存在していたのか！ さっさと捕まえて奴隷にさせろ！」
黒魔術師はこの国の全ての魔道士を奴隷として扱わせて、黒魔術師が描く世界のために強制的に働かせるつもりだろう。エレナの友人の彼らの奴隷として捕まっているかもしれないので、すぐに戦闘を終わらせて助けなければならない。
「お前らの方が邪魔だ！ ここをどけ！」
俺は大剣を装備すると、黒魔術師は一斉に俺たちに向けて黒色の球体を無数に放ってきた。俺は大剣で黒色の球体の攻撃を防ぎながら黒魔術師に駆け寄り、光り輝く剣を大きく振りながら彼らを黒い灰にさせた。
しかし黒魔術師は援軍を呼び寄せ、俺たちの目の前に約３００人の黒魔術師が立ち塞がった。援軍は俺を確認すると笑顔で挑発してきた。
「ここから先はお前たちを通すことはできない。お前たちも魔法学校の生徒のように我らの奴隷になれば許してやるぞ」
「誰が奴隷になるか！ 貴様らの勝手な真似は俺が許さない！ さっさと生徒を解放しろ！」
「無理だ。魔法学校の生徒は我らの資産だ。生徒たちには死ぬまで俺様のために働かせて、我らは自由の世界を手に入れるのだ。我らの理想に反対する者は俺が処刑する」
黒魔術師は猛攻し始めた。援軍に駆けつけた黒魔術師は一斉に闇の魔法を凝縮した矢を大雨のように俺たちに向けて放ち始めた。
オビリア様とシエラ様はドーム状の光の結界を作成し、仲間の安全を確保した。光の結界にいるアメリアとフレイは光の結界内で攻撃するために銃を生成し、休むことなく光の弾丸を撃ち続けて敵の数を減らした。
光の結界から飛び出したエレナとミアは接近戦を仕掛けた。エレナは光の魔法で生成した剣で１人ずつ確実に斬り裂き、ミアは光を放っている大剣を大きく振り回しながら複数の黒魔術師を斬り裂いた。彼女らの周りには黒い灰が散らばった、
するとエレナの存在に気がついた１人の黒魔術師が彼女に対して笑いながら叫び始めた。
「おい、弱虫の魔道士、お前は俺たちが怖くて仲間を置いて逃げたんだろ！ 自分が生き残ればいいと思っているんだろ！ 最低な裏切り者だな！」
「私は仲間を救うために逃げた！ 私は私の手で友達を取り返す！」
「お前には無理だよ！ 魔法学校で教えてもらった魔法では俺たちには効かないぜ！ お前も仲間と同じように奴隷として生きる運命が確定しているんだよ！」
「だったらこれならどうかしら？」
黒魔術師の挑発に乗ってしまった怒りに満ちたエレナは透明なバリアを展開して彼らの攻撃から身を守りながら、黒魔術師に手を広げた。
「私の友達に手を出したな！ 私が貴様らを処刑してやる！」
エレナは真剣な表情で目の前に魔法陣を展開した。エレナが詠唱を始めると全身が光に包まれ、目の前の展開している魔法陣は宝石のように輝きながら発光していた。そして全身に力を込めて手をさらに大きく広げると魔法陣から巨大な光線が発射された。光線は土を削り取りながら黒魔術師を飲み込み、５分の１の黒魔術師を１撃で粉砕した。光線が放たれた場所には削られた土と大量の黒い灰しか残っていなかった。
エレナは集中して光線を放って１発で黒魔術師を全て倒そうと試みたが、１人の黒魔術師が詠唱中のエレナに対して槍を放ってきた。高速で飛んできた槍は彼女の脇腹を突き刺し、痛みに耐えきれず座り込んでしまった。
黒魔術師は無防備のエレナに大勢で駆け寄ってきた。エレナは囚われている生徒に向けて独り言を呟いた。
「私の力ではこれが限界だわ。みんなを助けられなくて、ごめんね」
黒魔術師はエレナを取り囲み、彼女に対して大量の剣を突き出した。
「君も魔法学校の生徒ではないか。一緒に我らの奴隷にならないか？ いいえと答えたら今すぐ殺すよ？」
エレナは怯えた表情で涙を流していた。先程の光線で魔力を大量に消費し、槍の攻撃で体力も大幅に奪われて反撃する力を失い、死の恐怖で追い詰められていた。
そのとき俺は彼女を取り囲んでいる黒魔術師の背後から直径１メートルの光の球体を彼らの体に直接当てた。光の球体は彼らを一瞬で黒い灰に変化させた。そして俺はエレナにすぐに近づいて背中に担いだ。
「東条さん！」
「エレナ、無茶な魔法は使わないでくれ。俺が残りの黒魔術師を潰してやるから、エレナはすくに休んでくれ」
「助けていただいて、ありがとうございます。ですが私も休んでいる暇はありません。私の友達が黒魔術師に捕まっています。一刻も早く黒魔術師を倒して魔法学校に行かないと！」
「駄目だ。エレナには力が残されていない。俺がエレナの分まで頑張るから、エレナは光の結界にいてくれ」
「分かりました。東条さん、私のためにも黒魔術師を倒してください。お願いします」
「もちろんだ。ミア、エレナを光の結界まで運んでくれ。あとは俺がやる」
「了解した。東条、絶対に生き残れ」
ミアにエレナを託して、俺は大勢の黒魔術師を見つめた。彼らは俺を一斉に囲み、刃先を顔に近づけてきた。
「今度はお前が死ぬ番だな！ 覚悟しろ！」
「貴様たちが覚悟したほうがいいぜ！ 一気に行くぞ！」
俺は光の粒子でできた大剣を装備して、右足に力を入れた。そして大きく回転斬りをしながら衝撃波を放った。辺りには竜巻のように巨大な風圧が発生し、黒魔術師を光の渦と共に黒い灰となって吹き飛ばされた。
この攻撃で魔力を消費しすぎた俺は魔力を節約しながら戦った。剣を振りながら襲ってきた彼らに対して足元に大きな蹴りを入れながら大剣を振りかざした。さらに大剣を捨てて剣と槍を生成し、剣で彼らの剣を振り落としながら槍で腹を突き刺した。
俺の剛撃で敵の勢力が弱まるとミアとエレナが俺に近づいてきた。エレナは無事に回復して元気な表情を取り戻した。
「エレナ、大丈夫か？ もう少し休んだほうがいいぞ」
「私はもう大丈夫です。戦えます」
「分かった、だが今度は絶対に無理をするなよ」
「はい、ありがとうございます」
俺はエレナの手を優しく握って魔力を与えた。魔力を回復したエレナは俺に深くお辞儀をして剣と盾を装備した。
そして３人で接近戦を開始した。エレナは盾で彼らの攻撃を受け止めながら、大きな光を放っている剣を彼らに突き刺して１人ずつ確実に倒した。
ミアはエレナが仕留めきれなかった彼らに対して槍を腹に突き刺した。その後、彼らの傷口から白色の光が溢れ出し、彼らを光に包み込んで黒い灰に変化させた。
俺はエレナとミアに負担を掛けさせないようにより多くの敵を倒すために戦った。俺は虹色に輝く剣を両手に装備して、彼らが所持している剣を光の魔法を唱えて剣から出現させた光の球体で破壊し、無防備の彼らに対して大きく剣を振り下ろして全身を斬り裂いた。
午後３時４０分、俺たちは全ての敵を倒して再び魔法学校に向かって走り始めた。エレナは俺に走りながらお礼をした。
「私のために命を掛けて戦ってくださり、ありがとうございます」
「エレナも命を掛けて必死に戦ってくれた。エレナが無事で良かったよ」
「東条さんも何事もなくてよかったです」
「ありがとう。あともう少しで魔法学校だな。気を引き締めて戦うぞ」
「ええ、絶対に友達を取り戻すために全力で戦います。東条さんも私たちのためにお願いします」
「もちろんだ、この世界を黒魔術師の所有物にはさせない。俺たちがこの世界を守るんだ」
エレナと話していると魔法学校の校門前に到着した。校門前から魔法学校を眺めると、校舎は黒魔魔術師によって荒らされていた。木々がなぎ倒され、グラウンドが血に染まり、魔道士が生成した剣や銃などの武器が破損した状態で燃え盛っていた。校門や校舎は廃墟のように大量の亀裂や建物の破損があった。
さらには校舎から様々な悲鳴が聞こえ、死の直前のような声で「やめてくれ！」「来ないで！」と大声で必死に叫んでいた。
アメリアとフレイは衝撃的な光景を目撃して手で口元を塞いだ。ミアは黒魔術師を恨んでいる厳しい表情に変わった。オビリア様はシエラ様の目を手で覆った。
魔法学校の生徒であるエレナは悲しみと憎しみで心が一杯になり、涙を流しながら俺に抱きついてきた。
「東条さん、助けてください！ こんな魔法学校は見たくない！」
「大丈夫だ、俺が友達や魔法学校を救ってやる。エレナは黒魔術師と戦わず、友達を救うことを優先してくれ。憎い黒魔術師は俺が片付ける」
「よろしくお願いします！」
エレナは俺から離れ、涙を拭ってから真剣な表情に切り替えて剣を装備した。
午後３時５０分、俺たちは魔法学校に足を踏み入れた。
