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第10話 希望への道

 午後11時40分、俺はアメリアに体を擦られて起床した。アメリアは申し訳なさそうな表情で俺を見つめながら話した。


「東条くん、いつも最前線できつい戦いばかりさせてごめんね。私の魔法が弱くてごめんね。私は東条くんにとって役立たずだよね?」


「そんなことはない、アメリアは治療を成功させるために必死に戦っている。アメリアは患者のために奮闘する立派な魔道士だよ。自信を持ってくれ」


「ありがとう、東条くん。優しすぎるわ」


 アメリアはベッドで寝ている俺に抱きつきながら泣き始めた。


「東条くんがいなければ私は戦えなかった。東条くんが私と一緒にいてくれて嬉しいわ。本当にありがとう」


「俺もだよ、異世界に招待してくれてありがとう。これからも頼むな、アメリア」


「ありがとう。東条くんに頼りっぱなしだけど私も東条くんのためにできる限り頑張るわ」


 俺とアメリアは俺の個人部屋から出て、手を繋ぎながら広間へ向かった。




 俺たちが広間に到着するとフレイとアーガスが建築士の手伝いをしている最中だった。建築士は広間を完璧に修復することが厳しいと考えたため、応急処置としてドーム状の骨組みを組み立てて、骨組みの上から大量の鉄板を貼り付けていた。


 フレイは大量の汗をかきながら魔法で鉄板を作成して建築士に手渡ししていた。フレイは俺たちを見ると笑顔でウインクした。


「広間は修復しておいたよ。これで今日も万全の準備ができたね」


「ありがとう、フレイ。深夜は広間を破壊して申し訳ない」


「いいよ、黒魔術師のせいだから東条くんは何も悪くないよ。今日も広間が破壊されても私が直してあげるから派手に戦っていいわよ」


「そう言ってもらえると助かるよ、今日も広間を倒壊させてしまうけど、俺が黒魔術師を倒すから安心して患者の治療に専念してくれ」


 フレイは大きく頷いて再び俺たちにウインクをした。




 午後11時50分、エミリーに連れられて寝ぼけているミアが広間に入室した。ミアは久しぶりの睡眠だったためエミリーに何度も擦られても起き上がらなかった。ミアは東条を見つけると急に目を覚まして真剣な表情で俺を見つめた。


「東条、私だけが黒魔術師と戦う。東条はアメリアと一緒に治療を手伝ってくれ」


「ダメだ、ミアだけでは俺が心配だ。深夜のような強敵が現れたらミアだけでは勝てない。俺も一緒に戦う、俺も黒魔術師を倒す理由がある」


「倒す理由?」


「悪夢がない平和な世界を作ること。住人が恐怖に怯えず安心して暮らせる世界を作ること。俺はそのために黒魔術師と戦っている。ミア、俺と一緒に戦ってくれないか?」


「ありがとう、助かる。だけど魔力の管理は徹底して」


「ああ、分かっている」


 俺はミアと力強く握手をした。するとエミリーが俺たちに大声で叫んだ。


「アメリアさん、東条さん、魔道士や騎士の皆さんも協力したいとおっしゃっております。どうしますか?」


 アーガスに仕えている魔道士や騎士は俺たちに真剣な眼差しで俺たちを見つめていた。彼らも悪夢から患者を救うために覚悟を決めてやってきた。俺はアメリアとフレイに提案した。


「アメリア、フレイ、戦闘は俺とミアだけでいい。光の魔法を使える魔道士と騎士なら治療の手伝いはできるか?」


「ええ、とても助かるわ。光が多ければ多いほど成功率が増大するわ」


「ありがとう。東条くんは頼りになるね。私たちは治療を必ず成功させるから安心して戦ってね」


 魔道士と騎士は100人の患者が集められた場所に移動して光の魔法の詠唱を準備した。100人の患者はベッドの上で悲鳴を上げながら寝ていた。


午前11時59分、エミリーは部屋から退出する前に俺たち4人に向けて大声で応援した。


「絶対に無事に生き残ってください! 私は皆さんの治療が成功することを全力で祈っております!」




 午前0時、いよいよ治療が始まった。アメリアとフレイ、手伝いに来てくれた魔道士と騎士は一斉に高出力の光の魔法を唱えた。太陽光よりも眩しい光は俺たちを包み込んだ。


 すると数分後に天井から爆発音が聞こえた。俺とミアは大きく頷いた。


「今のうちに武器を用意しておこう。この爆発音は黒魔術師しかありえない」


「ええ、一気に仕留める」


 俺は大剣を両手に構えて衝撃波を放つ準備をした。ミアは右手に槍、左手に盾を構えた。


 黒魔術師が放つ黒い球体の攻撃で天井から轟音が響き渡ると同時に大量の鉄板が剥がれ落ちてきた。俺はアメリアたちに被害が及ばないように天井に対して衝撃波を放って鉄板を吹き飛ばした。広間を覆っている全ての鉄板は内側から外側に飛び散り、骨組みだけが残ってしまった。俺は力を入れすぎたことを後悔した。


 すると頭上から30人くらいの黒魔術師が一斉に広間に飛び降り、俺とミアを囲んだ。黒魔術師たちは小声で「東条とミアを倒せ」と指導者から指示された命令を何度も発していた。今日の目的は俺とミアを抹消させることらしい。


 俺とミアは小さく頷いて攻撃を開始した。俺は目の前にいる複数人の黒魔術師に対して光を帯びた大剣で衝撃波を放ち、黒い灰となって広間から飛び散っていくことを確認した。ミアは黒魔術師が放つ黒い球体を盾で防ぎながら、光を帯びた槍で1人ずつ突いた。


 大胆な攻撃を放つ俺と確実に仕留めるミアの戦略で黒魔術師は全て黒い灰となって消えたが、数分後に再び天井から大勢の黒魔術師が降下してきた。今回は俺たちを確実に倒すために人海戦術で迎え撃つつもりだろう。ミアは俺に戦い方の変更を促した。


「東条、君は魔力を大量に消費する衝撃波を使いすぎた。今日は長期戦になる。魔力の消費を抑えた戦い方に変更してくれ。大技で複数人を倒すよりも1人ずつ確実に倒すほうが魔力の使用量が少ない」


「ああ、分かった。1人ずつ接近戦で倒してやる」


 40人の黒魔術師が広間に足をつけると俺とミアだけを狙って大量の黒い球体を放ってきた。俺は衝撃波を使いたいが、我慢して接近戦で戦うことにした。俺は大剣を捨てて、右手にショットガン、左手に剣を出現させた。黒い球体を剣で切り裂き、黒魔術師の攻撃を回避しながら懐に入り込んだ。そして黒魔術師の鳩尾に高出力の光の弾丸をゼロ距離で発射した。黒魔術師は衝撃に耐えきれず一瞬で黒い灰となって消えた。


 俺は何度も剣で攻撃を無効化して、至近距離で光の弾丸を放ち続けた。これなら大量の体力や魔力を削ってしまう衝撃波より負担は少ない。先程よりも3倍の時間はかかったが全員を倒したことを確認した。


 だが黒魔術師の勢いは収まらなかった。午前2時に50人の黒魔術師が俺とミアだけを狙って再び降下してきた。ミアも長時間の戦闘で疲れが現れてきており、深呼吸をしながら猫背の状態で武器を構えていた。ミアに多大な負担を掛ける訳にはいかない。俺は心の声のソフィーに声をかけた。


「ソフィー、力は余っているか? 力を分けてくれ」


「もちろんです。贅沢にお使いください」


 するとアメリアから貰った星型のネックレスが勢いを増して発光し始めた。虹色に輝くネックレスは俺に大量の魔力を与えてくれた。俺はミアに声をかけた。


「ミア、俺は大技を放つ戦略を変更する。地道な戦い方は俺に合わない」


「分かった。だけど魔力が少なくなったら地道な作戦に切り替えろ。東条の魔力が枯渇したら君は奴らに袋叩きにされるぞ」


「もちろんだ」


 ミアから作戦変更の承認を貰ってから武器を捨てて、両手に大剣を再び構えた。そして両手に目が潰れるほど眩しい光を大剣に集めてから右足を大きく踏み出して衝撃波を放った。光は黒魔術師を包み込み、黒い灰となって風と共に消えていった。


 それから俺は魔力がある限り衝撃波を連発して黒魔術師を1撃で仕留め続けた。ミアは相変わらず地道に盾で防御しながら槍で突き刺して攻撃し続けた。黒魔術師が降下し続ける限り、何時間も攻撃の手を止めずに戦い続けた。




 午前5時、俺とミアは合計300人の黒魔術師を倒し、朝を迎えられたことに感謝して強く握手を交わした。


「ミア、ありがとう。助かったぜ」


「いいえ、東条こそ私よりも強力な攻撃で奴らを圧倒してくれて助かった。格好良かった。ありがとう」


「ミアの攻撃も奴らを圧倒していたぜ。俺たちは最高のコンビだな」


 ミアは微笑しながら思いっきり俺の手を握った。


「東条、これからも頼むな」


「もちろんだ、俺は奴らがいなくなるまで戦い続けるぜ」




 同時刻にアメリアやフレイたちの治療が完了すると、数分後に大勢の患者が目を覚まして立ち上がった。悪夢の世界から抜け出した住人は俺たちに感謝し続けた。


「ありがとうございます。皆様は命の恩人です」


「一生懸命治療してくれて、ありがとう」


 その後、広間にエミリーとアーガス、アーガスが仕えるメイドが入室した。エミリーたちは住人を玄関まで案内し始めた。治療の手伝いをしてくれた魔道士や騎士も住人の健康状態を確認しながら一緒に廊下を歩き続けた。




 広間に残っているのは俺とミア、アメリア、フレイの4人だけだった。アメリアは3人を広間の中央に集めて、大量の涙を流しながら3人に大きく抱きついた。


「ありがとう。本当にありがとう。私だけでは何もできなかったけど、みんなに会えたお陰で治療が大成功したわ。」


 俺たちは問題なく作戦を成功したことに感動しながら笑い始めた。

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