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All knowing〜世界を従えるもの〜  作者: 留也 装等
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第7話

さて、予想外に安部という戦闘面に関しては将来有望そうな部下を獲得出来たことだし、これから本格的に組織の立ち上げや仲間の獲得を行なっていくか。だがその前にやることが一つ、


「あの〜、すいません覇王、様?私はこれから何をすればよろしいんでしょうか?」


安部がお茶目にも首を少し傾けて俺に聞いてくる。その仕草は安部の見た目が良いこともあり、おそらく多くの男が心を射抜かれるだろう。そう、安部は、その生い立ちは酷いものだが、見た目にあってはかなりのポテンシャルを持っている。

体型は細身だが、出るところはきちんとでている。特に胸はかなりのサイズでありプロポーションとしてはそこら辺の女優をはるかに上回る。髪や肌にあっては、恐らく金がなく余り手入れしてなさそうだが、それでも元がいいのか気になるほどではない。それに、少しツリ目で黒髪、ロング(肩甲骨あたり)ストレートなので、きついイメージを持つかもしれないが、顔の黄金率はかなりのもので今まで男が寄って来なかったのが嘘のようだ。

まぁこれでも俺は精神年齢は100年を軽く超えているので、その辺の男のように目を奪われたりはしないが。


「あぁ、それは今からお前らに指示しようと思っていたところだ。だが安部、別に覇王様と呼ぶ必要はないぞ。これは楠目が勝手に言っているだけだからな。」


「そうなのですか?」


安部は楠目の方に視線を向け、同じように首をかしげて聞いてくる。流石にいくら優秀な楠目でも、所詮まだ20歳そこそこ。その仕草に少しうろたえるような素ぶりをする。しかし、今の自分の立ち位置を把握しているのだろう。すぐに平静を装い答える。


「その通りですが、覇王様は将来世界を裏から支配されるお方です。覇王様と呼ぶのは当然です。」


「先ほどもいったがな楠目、組織を作った後、コードネームを考えるからそれまでの仮の呼び方だからな。それに、流石に覇王様は俺もどうかと思うぞ。」


「それならばせめて閣下と。」


(相変わらずブレない奴だなコイツ…)


「まぁそれならまだマシか。」


「あ、それなら私はご主人様とお呼びしてよろしいですか?」


安部は少し嬉しそうな顔で俺に提案してくる。


(いや、待て!まさかお前も楠目と同じ系の奴か!?いや、この場合は腐女子系と言うのだったか?詳しくないからよく知らんが…本当にこの二人で大丈夫なのか…)


All knowingと自分で名付けたこの知識の能力。俺が1回目の人生で生きた、今から約130年先までのこの世界で起きた全ての出来事、記録したデータや資料、言語等が全て脳に入っているという能力。俺が知る約130年後まではある意味、未来予知さえよりも正確な未来が予測出来る。もちろん、資料などにはない、個人の性格や、俺がこの昔の時代にタイムスリップし、歴史と違う行動をしているため、バタフライ効果で本来とは違うことが起これば予知も外れるが、それを差し引いても絶大な能力に間違いない。

しかし、この能力を得て7年、初めてこの能力に疑問を覚え、万能ではないと思った。


(もしかして実は俺も中二病患者で、本能的に能力で同じような奴をピックアップしてるのか?)


まぁ今さら考えても仕方ないことなのでとりあえず今は保留としよう。


「好きに呼べ。だが、あくまでも俺らしかいない時のみにしろよ。」


そういうと安部は満面の笑みを浮かべて返事をした。


(はぁ、何でここでそんな笑顔になるんだ。マジで心配になってきたな。)


「話を戻すぞ。これからお前らにはまず俺のような能力を得てもらう。どんな能力を発現するか分からんが、確実に人から一つ格が上の生物になるの は間違いない。そしてその後は、各々自身の能力を訓練しながら組織の立ち上げ、運営、勢力拡大に努めていく。

楠目。お前が主導で組織の立ち上げ等をしろ。補佐として安部を付けるが、お前の判断でこちら側に引き込めそうな奴は遠慮せず引き込め。」


「かしこまりました。ですが閣下、一つご提案が。」


中世の執事のようなかしこまった礼をして楠目が俺に問いかける。


「何だ?」


「閣下にあってはこれから私たちと別行動になり、アメリカに行かれるのですよね?」


「あぁ、そうだな。」


俺が肯定した瞬間、安部の表情が驚きの表情となり、その後悲しそうな顔に変わる。まぁ、世界を変えてくれた人生で初めてのり所である者が救った早々離れるのだ。悲しいような寂しいようなそんな顔にもなるだろう。外見的には7歳の子供なのだが。


「それならば、安部さんにあっては私でなく、閣下の補佐の方が何かと都合がよろしいのではないですか?その知識や戦闘力があれば何者にも不覚を取ることはないでしょうが、見た目はまだ子供。何かと行動するのに不便なのでは?」


ふむ。確かに一理ある。アメリカで仲間や組織をつくる際、7歳の子供が一人で出歩くのは、何かと周りの目があり不便になる場合が多い。特に夜はそれが顕著けんちょだ。

魔法で時間を止めながら行動すれば誰にも見られることはないが、一々(いちいち)そんなことをするのも面倒だ。

その点、安部がいれば、歳の離れた兄弟、もしくは親子にも見えなくもないので、行動は楽になるだろう。まぁ、安部は美人だから違う意味で面倒なことが起こるかもしれないが。

それらのことを加味して岡野は予定を変更する。


「そうだな。それならば安部は俺と一緒にアメリカに来て俺の補佐をしてもらうか。」


俺がそう言うや否や安部の顔が今度はキラキラと満面の笑みになり返事をする。


「はい!喜んで!!」


(うーむ。そんな顔に出るような性格で大丈夫なのか?)


言うまでもなく、裏の組織は様々な駆け引きが必要になってくる。そんな時、今のように直ぐに顔に自分の感情が出てしまうのは何かとマズイ。


(魔法の才能に重きを置きすぎて人選を失敗したか?)


俺は一抹の不安を持ちながら3人一緒に次なる目的地の東京に向かうのだった。






何故東京に向かったかと言うと、大学に通うために楠目が借りているアパートが東京にあるからだった。能力を発現する為には、脳を活性化させさえすれば良く、覚醒者であり、前の時代の覚醒者第一世代であった俺からすれば、何度も他の者を活性化させるため、それ専用の魔法を使用していた為何も問題ない。

しかし、流石に人に見られると不味いし、楠目がこれから活動の拠点にするのは東京が何かと便利なこともあり、楠目のアパートに向かうことにした。



「さて、それじゃあ早速始めるぞ。」


楠目の部屋に着くと、俺は二人を覚醒者にする為二人の自分の前に座らせる。


「あのー、別に構わないんですが・・それは痛いんでしょうか?」


安部が遠慮がちに俺に聞いてくる。まぁ、不安なのも無理ないわけだが。


「痛みは全くないな。俺のような覚醒者とは簡単に言えば、脳が異常に活性化した者のことだ。つまり、お前ら普通の人間、いやこの場合全ての生物か。とにかく、普通の生物は意識して脳を使用せず使っている。それを仮に意識して使うことが出来るようになれば、今まで、生物という種そのものが秘めていた力を使えるようになるというわけだな。」


「はぁ〜、なんか凄そうですね。」


安部はポカーンとしたような顔で聞いている。コイツ、理解してないな。理系は不得意か?

そう思っていると楠目が目を輝かせて聞いて来た。


「つ、つまり!進化の過程で人間が辿たどった様々な種の生物の特殊な機能が使えるようになるということですか!?しかも!進化論から言うと、人間は進化の木の最先端、一番進化していると言うことですから、現存する全ての生物の特殊な力。例えばイルカ等の超音波を使えるようになるということですか!??」


「ふむ。流石に楠目は理解が早いな。まぁ、理論的にはそう言うことだ。しかも現存しているだけでなく、太古に絶滅した生物の能力も使用出来るし、それ以外にも自身の肉体や、自分以外の者に干渉することも可能になる。詳しくは俺も分からんがな。」


前の時代でも正確にはどのようにして原子や電子を操り、水や電気、物体等を操っているかは解明されていない。脳を操作して自身の肉体を変換し、極性を操ったり、電気信号の受信体のようなものにして操っているというように様々な理論、実験が日夜研究されていたが、俺がいた時は憶測の域を出ていなかった。

まぁ今の俺にとってはどうでもいいことだ。この力が使え、配下を増やせれればそれで良い。


「ならば、その力の一つが、閣下の世界に干渉し時間を操るという力なのですか?」


楠目の目の輝きがいっそう大きくなる。その横で安部は、少しふて腐れたような顔をして楠目を睨んでいる。


(安部は自分だけ話についていけてないことへの嫉妬か?まぁ俺への忠誠があるなら構わんが。しかし、楠目にあっては…完全に中二病の地雷を踏んだな。ここいらで話を戻しておくか。)


「そうだ。だが、これはあくまでも仮定の話。脳を100パーセント活性化出来れば可能かもしれないが、現状俺も100パーセントは覚醒出来ていないので実際は分からん。そして、その脳を活性化させる為には、まずお前らが意識して脳を使えるようにならなければ話にならん。それを今から行う。」


「それで実際にはどのように?」


二人とも俺に疑問の目を向けている。俺はその二人の頭にそれぞれ手を乗せ、ニヤリと笑い魔法を発動する。


「こうするのさ!」


魔法を発動した途端、二人は床に崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。

俺は崩れ落ちた二人の頭に再度手を当てて電気信号を送る。


「二人とも聞こえるか?」


「ご主人様!??何処ですか!?何も見えないのですが!??」


「閣下!??何処いずこに!?私も何も見ません!!」



二人とも何が起こったのか分からず、かなり慌てたような声が帰ってくる。


「今、お前らの身体を仮死状態のようにした。今動いている器官は、脳と生命活動に必要な最低限の内臓器官だけだ。俺の声も脳に直接俺が電気信号を流して、普段何気なく行っている’’聞く’’という行為を俺が擬似的に再現し、聞いているように感じている。これからお前らには、俺が今やっているような普段無意識に行っている聞く、見る、動かすといったような行為を、意識的に脳から信号を発して各器官に命令する訓練をやってもらう。

それが完全に出来るようになれば、自身の身体を本当の意味で制御出来るようになり、脳の使い方も把握し活性化するというわけだ。」


「なんとなく理解はしましたが、具体的にどうすればそんなことが出来るのでしょうか??」


(ふむ。流石に楠目でも直ぐに出来るようにはならんか。身体の構造に詳しいものほど直ぐに実演出来ると聞いたが。)



「良いか、今からお前らにどのようにして脳から信号を発し命令をしているか、その道順をそれぞれの身体に俺が力を注いで道を指し示す。お前らはその流れを認識し、今度は自分の力でその道順をたどるように意識しろ。イメージとしてはその道を血液が流れていくような感じだ。こればっかりは理屈で行っても分からん。実際にイメージして感じろ。ではまず、’’見る’’という行為から始めるぞ。」


俺は直ぐに二人の脳から電気信号が発し、シナプスや各器官、神経を経て、目を開き、瞳孔を調整し、目が見えるという道順を指し示す。

そうすると1分も経たないうちに安部が成果を見せ始めた。


「あっ!なんだか明るくなってきました!!!」


「なんですと!?もう出来たのですか!??」


見れば安部の片方の目がかすかに動いていた。


(なるほど。これも才能か。片方の目だけで完全でないとはいえ、この短時間で見るという行為を出来るようになるとは。やはりこいつには才能がある。いや、最早才能というより一種の化物だな。これは将来相当な使い手になるな。やはり良い拾い物をしたな。

そして楠目よ。キャラが少し変わってないか?まだ新しい自分のキャラを固定出来てないな。まぁどうでもいいが。)


「その調子だ安部。やはりお前は素晴らしい逸材だな。」


「あ、ありがとうございますご主人様!!!見てて下さい!もっと頑張ってすぐにお役に立ちますから!!」


「うむ。期待しているぞ。」


「はい!!」



岡野が褒めると物凄い嬉しそうな声が返ってきた。その心情が岡野に対する忠誠心か、はたまた恋に近い感情なのか今の岡野は勿論、安部本人でさえ分からないことではあるが、岡野は、自身の見た目が7歳ということもあり、忠誠心と認識して満足そうに笑う。


「楠目も焦る必要はない。元々無意識に誰でも出来ているのだ。必ず出来るようになる。」


「了解しました。」



(さて、これで遅くても早朝には二人ともとりあえずは覚醒するだろう。覚醒といってもまだ対した力はないだろうが、それでも十分に他の人間から 逸脱した力は得られるはずだ。

さてどんな能力に目覚めるのか実に楽しみだな。出来れば少しでも組織に役立つ能力であってほしいんだがな。)




岡野は、やっと戦力的に組織の運営に必要な戦力が揃うことにより、これからの未来を想像し、一人ニヤリと笑うのであった。

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