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第六話
書けるときに出来るだけ
森に入ると空気が変わった。
土の匂い、風の心地よさ、生き物の気配。
とても澄んだ森だ。まるでこの森は聖域のように感じる。
ルドアの探しているものがここにあるのだと
なにかが告げている気がする。
ルドアは真っ直ぐ歩いた。
途中で女将にもらった大きなサンドイッチを食べながら。
ずっと歩いているが、出遭うのは兎や小鳥ばかり。
なんてことはない普通の森だ。妙に澄んでいること
を除けば。
と、急にそらが暗くなった。
何故だろうと見上げると空からドラゴンが降りて来た。
城一つ分のドラゴンではなくて、手がぎりぎり回る大きさ
で木を五つ集めたくらいのドラゴンだった。
恐らくは若いドラゴン。
この世界のドラゴンは確認されている大きさ
の者だけでも、大国ほどの山のように育つた者がいる。
普段では気がつかないほどの立派な山はドラゴンである
確率が高い。
【お前の探しているものを守っている。ついてこい】
肉声では喋れないのか心に語りかけてきた。