第三話
カランコロン
店のドアには人の出入りがわかるように大きめの鈴が取り付けてあり、
日の明るいうちから飲んだくれる客がまばらにいた。
酒場の名前はバルドーラ
奥にあるカウンターに店主だろう男が飲んだくれと楽しそうにしゃべっていた。
「水を一杯お願いします」
カウンターで飲み物と泊まる部屋を頼む。この酒場の二階は泊まれるように出来ている。
部屋の鍵と飲み物を受け取り多めにチップを渡した。
「最近、何か変わったことはありませんでしたか?」
「さぁてねぇ」
店主だろう男は考え込む。
しばらくして口を開く。
「この先にある森はあやしの森だけだが……。それ以外は平和だな」
店主だろう男は不思議な顔をしながら答えた。
すると飲んだくれが……。
「やめとけやめとけ!あやしの森は坊主が行けるような所じゃねぇ!!」
カウンターに座った飲んだくれはビールを煽り、もう一杯頼んだ。
「たまぁに森に入りたがるもの好きがいるが……帰って来やしねえ……」
飲んだくれた男はビールが相当好きなのか。
喉をならして美味しそうに飲む。
「……あやしの森には、希少性の高い草木や動物が沢山居てな。それだけなら
ただの珍しい森なんだが、あの森にはドラゴンが居るらしい。
1頭だけじゃなく何頭も居るって話だ。街には降りて来ないから害はないがな。
特に人間は入ったら帰って来れない……。
なぁに!入らなければいいだけの話だよ。」
と店主だろう男も語る。
静かに、それと微笑みを忘れずに。
ドラゴンが居るだけならそれに気をつければすむ話だろう。
ドラゴンの住処は、森や山、谷にあることが多い。群れで行動することは稀だ……。どこに棲むにしても子育てがしやすい
奥深い所を好む傾向にあるから、そうそう出くわすことはないと思う。
ルドアは疑問を口にする。
「ドラゴンが居るだけならそれ程危険ではないと思うのですが……。
何故、誰も帰って来れないのですか?」
飲んだくれが答えた。
「なんでもなぁ!!お宝が隠されているんじゃないかって言われているだが、本当の所はわかっちゃいねぇ!」
そろそろ顔が林檎のように赤い。
店主だろう男はテンションの上がった飲んだくれを横目に。
「……守らなくてはならない、何かがあるとかな……はっきりとはわからねぇな。なんせ本当に誰も帰って来てないからな」
飲んだくれも店主だろう男も嘘は言ってないようだ。
これ以上聞いても同じ答えしか言わないだろう。
ルドアはお礼を言って、サンドイッチを頼んで酒場となる
1階を後にした。
守らなくてはならない。
それはドラゴンが睨みをきかせる程の何か……。
自分の探しているものがそこにあるような気がした。
頼んだサンドイッチは調理場に居た
女将の特製らしく、具がたっぷりと入っていてとても食べ応えがあった。
明日は朝早くに森を目指す為、もう寝なくてはならないが。
女将にあったらお礼を言っておこうと思う。
焦る気持ちはあるが休息と余裕と体力は必要だ。
余談だが
酒場のドーラは女将さんの名前である。
バルはBarから来ている。