第二話
街は人々でひしめき合い騒がしかった。
物を買う人、売る人。昼間から酒を浴びるように飲む人。
耳と尻尾がついている人や完全に動物みたいな人。
大人の足元の間をくぐり抜けて遊ぶ子供達。
ルドアが街に入ってまず目指したのは換金所だった。
さっきみたいに珍しいものを出してもいいがかえって目立ってしまう。
目的の場所を目指し歩いているとフッと視界に黒いフードが入った。黒いフードは路地裏に吸い込まれるようにして角を曲がった。
ルドアは気になり、黒いフードを追いかけて路地裏の角を曲がる。
曲がった先に黒いフードがこちら向きに路地裏の影と同じかそれよりも暗いくらいに佇んでいた。
ルドアの呼吸だけが聞こえる。
得体のしれない黒いフードに話しかける。
「おい」
黒いフードはピクリともしないが、一歩後ろに下がって深くお辞儀をした。顔どころか口元も見えないが、口を開く気配だけ感じとることは出来た。
『汝、巡る者。春の君は目を開かず口もきけず、ただ命の風を
感じるのみ。儚い命、時の巡りへ命の巡りへ。
悲しみが春の風を谷に運ぶだろう』
と言い終えた黒いフードは闇に溶けるように路地裏の空気に消えた。
春の単語に胸のあたりがざわめく。なにか急がなくてはならない気がする。何故急ぐ必要があるのか分からないが。
ルドアは路地裏を後にして、素早く換金所でまとまったお金を作り、情報を集める為酒場へと早足に向かっていった。
換金所の主人がルドアの出したものに息が出来ないほど驚いていたのはまた別の話。
ルドア
本名 ルドベキア
年齢 12歳
?? 巡る者
春 胸騒ぎ