第一話
新しい命は母なる大地から生まれ
死ぬ時は大地へ還る
世界は命であふれかえり
魔法と不思議な出来事が
毎日を楽しませ悲しみや憎しみを生み
バランスや均衡を保つ
これは小さな命の物語
命は巡り、永遠は不変ではないのだと。
誰かが呟く。
青い空に白い雲、雨も降らないいい天気。
荷車をひく黒くて立派な牛がブモウと啼く。
荷車には藁が目一杯積まれていて、荷車の僅かなすき間に少年が乗っている。
「ねえおじさん、あとどのくらい?」
と少年は牛の手綱を握る男に聞いた。
すると男は。
「そうだな、1.2時間くらいだなぁ。ボウズあの街に何の用だ?」と言った。
少年は。
「うん?ちょっと探しものがあってね」
と返した。
「そうか。見つかるといいな!」
男は探しものについて深くは聞いてこなかった。
会話はそれっきり。
少年の名前はルドベキア。普段はルドアと名乗っている。
太陽のシンボルを持つ力のある人間だ。
彼の近くはいつも何故だか暖かい。
ガタガタと揺れる体はだんだんとルドアを
眠りへと誘う。体の前に抱えた荷物を枕代わりにまぶたが落ちていく。
荷車をひく牛がブモウブモウと啼く。
「そら!着いたぞ!」
手綱を握る男の元気な声に起こされる。
「ありがとうおじさん。ごめん代わりにこれで」
と急いで荷物を背負って男の所まで来た。
本当なら街まで乗せてくれたお礼にチップを渡したい所だが、まだ持っていないのだ。
代わりに子鼠ほどの小さな石を男に渡す。
「ん?なんだ?……!?ボウズこれ!」
男の手の中にあるものは琥珀だった。それもただの琥珀ではない、
精霊の幼生が入っている可能性の高いとても綺麗な琥珀だ。
売ると一生暮らしていけるし、持っていると精霊の加護が受けられる。
男が持つには荷が重すぎる代物で、たかが荷車に乗せただけ。
お礼なんて、自分の息子くらいの子供から貰おうなんて思っていなかった。
返そうと思ったがとっくに少年は街の中に消えていた。
世の中こんなこともあるものかと男はひとつ、ため息を吐いた。
太陽の暖かな日差しと大きな鳥が通り過ぎたような気がした。
ゆっくり続きます。ゆっくりと。