驚愕
結果はもちろん一位だった。ただ、どうしても納得がいかない。今までは二位に圧倒的な差をつけてきた俺が今回は三点しか上回っていない。言い訳ならいろいろある。テスト前日にスクフェスを二百レベまで上げたり、ニコ動を漁ったり、二ちゃんのスレを読んだりした。だが、それでも胸糞悪い。
「どうしたの?なんかずっと元気がないみたいだね。」
「テストの点数が悪かったとか、じゃないか。」
「カイ君一位だったもんねー。」
俺の心配はしてもらわなくていい。ちなみに恵と智晴はそれぞれ六位と九位だった。
「まあ、きにしないでくれ。」
「そういえばあの子すごかったねー、ほら、あの新入生。」
ピクリ。
「やっぱりかー。」
やっぱりかー。見逃さなかったのかー。
「というか、そんなに気にすることある?そんなに勝ちに執着する必要なくない?」
「いや、いいんだよ。俺の勝手だから。」
「そう。」
「そういえば、夏休みはどうするの?」
「別に予定はないけど。」
「トモ君は?」
「俺は前半、家族旅行で台湾に行くから無理かな。八月からは空いてる。」
「じゃあ四人でどっかいかない?」
「いいよ。海翔は?」
「いいけど。」
「じゃあ、予定が決まったらまた連絡するね。」
別れを告げた後、しばらく黙ったまま歩いた。歩調は遅く、自分とその横の影をまじまじと見つめながら、止めどなく歩いた。俺たちは幼馴染だとは言うものの、話題がある限り話さない。こういう関係が嫌いかと言われるとそうでもないけど、憧れはしない。
もうすぐで家だ。
「そういえば、さっき恵は四人って言ったよな。」
「それがどうかした?」
「その四人目って?」
「わかるでしょ?」
「え、もしかして、、、」
「残念、惜しい。」
「まだ言ってねーじぇねーか。」
「俺には分かるんだよ。」
「なにそれ。」
「葵だよ、葵。」
「え、、、」
「それじゃあ、また明日な。」
返す言葉がなかった。俺は智晴が見えなくなるまで立ち尽くした。