表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも君は  作者: コシさん
5/9

偽造

 こんなに学校に行きたくないと思ったのは小学校以来かもしれない。いや、行きたくないというよりどういう風にいけばいいのか俺にはわからないのだ。昨日の席替えで良くも悪くも葵の隣になった俺は、果てのない迷宮に迷い込んだかのように自分の本心を探っていた。

 ピンポーン

 今日もインターホンが鳴った。雨はまだ続いているみたい。

「入ってて。」

「うっす。」

 ドアが開いたのが聞こえ、俺は朝の支度に移った。昨日と違い、今日はやけに体が硬いように感じた。

 朝ごはんはもう作ってあるみたいで、智晴がソファに座って先に俺の朝食を頂いていた。

「そういえば昨日お前のクラスに転入生がきたらしいな。」

「うん。」

「結構かわいいらしいな。」

「うん。」

「早速誠治たちが葵を夕飯に誘ってたぞ。」

「うん。」

 なんだこいつ。

「どうする?」

「うん、、、いや、どうもしないよ。」

「変わんないね、、、」

「そうか。」

 静けさに消えるような智晴の声は、なんだか寂しさ以外の感情が帯びていた気がした。表情は隠れて見えないが

 自分の考えが露呈していることはわかってる。それでも偽の自分を演じないといけない、そうせざるを得ない、そうでもしないとこの社会に飲み込まれそうな気がした。


 東の山脈から太陽が顔をのぞかせる。しっとりとした空気の中で蝉が共鳴を始めた。頭の奥で徘徊する甲高い音はいつまでも消えなかった。


「行こうか。」

「おう。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ