ドンエプール転回逆
「…終わりだ」
見上げた仮面の男が銃口を向け、不敵に笑った。
猫の子一匹いない路地裏に、二人の荒い息遣いだけが木霊する。
追いかけっこは、どうやらここまでだ。
「くそっ…!」
先ほどの発砲で撃ち抜かれ、血だらけになった両手両足はピクリとも動かない。
上手くいってたはずなのに…どうしてこうなった…!私は愕然とした。
男が仮面の奥で目を細めた。
「最後に…何か言っておくことはあるか?」
最早虫の息になった私に、仮面は反撃の術などないと確信しているのだろう。
地面にひれ伏したまま、それでも私は藁にもすがる思いで宿敵を睨みつけた。
「フフフ…ハハハハ!散々嫌がらせしてくれたな…だが、お前はここまでだ!」
だけど男の背後に浮かぶ満天の空は、まるで私の運命をあざ笑うかのように光り輝くだけだった。
「…『逆回転』!!」
「何だと…?」
何も起こらないかもしれない。だけど、このまま死を待つくらいなら。
私は最後の力を振り絞って叫んだ。
「【時間】が…まっすぐ進むだけだと思ったら、大間違いだぞ…っ!」
「まさか…!?貴様も…俺と同じ『能力』を!?」
「お前が、教えてくれたんだ…!」
激しい閃光と共に、路地裏に爆音が鳴り響いた。
驚いた男が、慌てて発砲してくる。だが、もう遅かった。
「馬鹿な!?」
「くらえ!!『逆回転』!!」
『逆回転』。この能力は…【物事】を逆転させる。
【時間】も、【順序】も。【男】も、【私】も。
そう、物語の【終わり】と【始まり】も、何もかも。逆になる。
「貴様も…逆になるとでもいうのか…?」
「このままで済むと思うなよ!」
目が慣れると、地面に先ほどの男が青ざめたまま喚いていた。
片隅に落ちていた仮面を手に取ると、私は不敵な笑みを浮かべそれを被った。
「さあ…物語の【始まり】だ」
片隅に落ちていた仮面を手に取ると、私は不敵な笑みを浮かべそれを被った。
目が慣れると、地面に先ほどの男が青ざめたまま喚いていた。
「このままで済むと思うなよ!」
「貴様も…逆になるとでもいうのか…?」
逆になる。
そう、 物語の【終わり】と【始まり】も、何もかも。