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この星空の下で  作者: sinson
第一章 すべての始まり
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謎の男

…謎の男…


ツンツン……ツンツン……

「意識飛んでるわね」

「飛んでいますね、レリア姫」

馬車の中、人族の男は気絶している。

多分、アレをくらったから、すぐには起きないだろう。


「ソレーヌ、二人きりの時はレリアと呼んで」

「それは無理ですよ、お嬢様」

ソレーヌは、私担当のメイドだ。

かれこれ長い付き合いになる。

「仕方がないわね」

私はそう言って、そこで伸びている人族の男を見た。


確か、スズキと言っていた。

珍しい、聞いたことがない名前だ。

「お嬢様、この聖アドリーナ皇国のスパイと疑われてた、この人族の男連れてきてよかったのですか?」

「多分、この男はスパイではないのでしょう」

「なぜそう思ったのですか? お嬢様」

ソレーヌは不思議そうに聞いてくる。

「はじめに目立つ奇妙な服を着てますし、それにこの国にスパイとして来るのに、エルフかどうか判断できないのは、致命的だと思われるわ」

私の予想を聞いてソレーヌは頷いた。

「確かにそうですね、ではこの男は何者なのでしょう?」

ソレーヌはそう言うと、少し考え込むような顔をする。


う~んとうなった後ソレーヌはこう言った。

「行商人ですかね」

行商人? と私は不思議に思った。

「ソレーヌ、どうしてそう思ったの?」

「この男の持っているその荷物入れ、限界まで物が入っているように見えます」

確かにソレーヌの言うとおり、荷物入れはパンパンに膨らんでいる。

「これは売り物ではないのでしょうか?」

「なるほど、でもそれだとここがどこだか、わかっていないとおかしいわ」

「確かに、そうですね……」

ソレーヌは眉間にシワを寄せた。


でもすぐに何かを閃いたようだ。

「お嬢様みたいに、お忍びでいらしてる貴族とかどうですか?」

「なぜ貴族だと思ったの?」

ソレーヌは楽しそうに話す。

「まず初めにですね、この高級そうで素材の分からない目立つ服や靴。次に一般的な馬車に乗り慣れていないこと、特製の馬車でも持っているのでしょう。最後に相手が姫だと知っても、敬語を使わなかったこと。平民ならたどたどしくとも敬語を使うはずです。どうですか?お嬢様」

私は手厳しく答えた。

「その説でも、初めに言った問題は解決できていないわ。それに、貴族のお忍びなら護衛がいないのはおかしいし……でも、新たな問題に気づけたわ。ありがとうソレーヌ」

ソレーヌはバツが悪そうに言う。

「いえ、結局こいつが何者なのかわかりませんでしたし……」

「起きたら聞いてみましょう」

多分、町に着くまで起きそうにないが……


「お嬢様」

ソレーヌが深刻そうな顔をして聞いてきた。

「もう一つ質問があるのですが、なぜこのスズキという人族を連れてきたのですか」




初の主人公以外の視点です。

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