蜘蛛の糸
…蜘蛛の糸…
「待ちなさい」
絶望の淵にいた僕の耳に、少女の声が聞こえた。
「あ、あなた様は」
「隊長、どうしたんすかこんな娘……」
「馬鹿野郎!アベルお前死にたいのか!この方はカリーヌ王国王女、レリア姫だぞ」
それを聞くと、アベルは顔を青くした。
「どうか、どうかお許しください」
アベルが土下座して謝っている。
こっちにも土下座あるんだ……
「すいません、レリア姫様。私の部下を許していただけませんか」
隊長も恐る恐る聞いてるようだ。
「いいわよ」
「ありがとうございます、レリア姫様。ところでなぜこのようなところに…」
「お忍びよ、気にしないで。ところで先ほどアドリーナ皇国のスパイと聞こえたけど、こいつでいいのかしら」
これは助かるチャンスか。
「あの……」
「人族は黙ってろ」
アベルに怒鳴られた。
「珍しいわね、捕まっても自殺しないスパイは」
レリア姫はそう言いながら近づいてきた。
「レリア姫様、近づいたら何しでかすかわかりません、離れてください」
「そうですレリア姫、ダメです、服がよごれます」
隊長とお付きのメイドが止めた、ってメイドさん止める理由それかよ。
「私はこの人に話があるのです。静かにしていただけませんか」
レリア姫は強い口調でそう言った。
「さて、人族のスパイさん。少しいいかしら」
僕は少しやけっぱちになりながら言う。
「いいけど、スパイじゃなくて鈴木と呼んでくれ」
「姫様に名前を呼ばせるとはこのじん……」
「お黙り、アベルだったかしら、今この人としゃべっているのです。黙っていていただけないかしら」
アベルは震えつつ答えた。
「す、すいませんでた」
レリア姫はこちらを振り向いてこう言った。
「さて、話の続きをしましょうか」




