解決そして発見
…解決そして発見…
トントン
「誰?」
「リア、スズキだよ」
「いいわ、入って」
ギィ
僕は扉を開けながら言った。
「ただいま~」
帰った途端、レリア姫に質問をされる。
「スズキ、遅かったわね。何かあったの?」
「いや~宿屋の娘さんに、なぜずっと帽子を被っているのか怪しまれてさ」
「もしかして……バレたんですか!」
ソレーヌが声を荒らげた。
「いや、人族とはバレていないよ」
僕の答えにソレーヌが声を強める。
「じゃあ、どうしてバレなたったのですか」
「それはな……」
そう言って、帽子を脱いだ。
僕を見たソレーヌは目の瞳孔を広げ、レリア姫は口をあんぐりと開ける。
そしてリリアーヌは、なぜか剣をつかんだ。
「お前は誰だ! レリア姫後ろに下がってください。ソレーヌ、そこから離れろ」
リリアーヌの掛け声とともに、ソレーヌが動けないレリア姫を引っ張り、リリアーヌの後ろに下がる。
僕は困惑しながら答えた。
「誰って、スズキだけど……」
「確かにその見た目、声はスズキそっくりだ、だがスズキは人族だったはずだ! その耳はなんだ!」
リリアーヌが剣先を僕の耳に向けた。
今、僕の耳はエルフのようにとんがっている。
宿屋の娘に言われたときは、僕も驚いたな……
~十数分前~
「すいませんでした! 人族ではないかと疑ってしまって」
「あ、ああ」
なんて答えればいいのだろうか。
僕は実際は人族だし。
さっき帽子を脱いだ時からこんな調子だ。
宿屋の娘さんが僕を見上げて言った。
「その耳、長くてかっこいいです!」
耳が長い?
僕は手で耳を触れた。
冷たくてスベスベして、細くとんがっている。
だけど耳が触れられた感じがしない、その代わりさっきから耳が冷たい何かに覆われている感じだ。
「と、とりあえず顔を洗わせてくれない?」
「は、はい」
僕は水を汲んであるバケツを覗き込んだ。
そこには僕の顔が写っていたが、顔の左右には長くとんがった耳が付いていた。
……はぁ??
水面に映った顔が困惑した表情になる。
「あの……どうかされたんですか?」
うわっ、驚いた。
娘さんが僕の顔を覗き込んできた。
「いや、ちょっと考え事してて」
僕はそう答えると慌てながら顔を洗った。
俺の耳に何が起こたんだ!
落ち着け、落ち着くんだ。
今はこの状況から抜け出すことが先決だ。
顔を洗いタオルで拭きはじめた。
「肌が黄色いエルフの人初めてみた……」
「うん、何かいった?」
「いや何でもないです!」
宿屋の娘さんは首を横に振り、慌てながら言った。
否定する時は首を横に振る。
また黄色人種系のエルフはいないと。
僕は頭の中にメモった。
「ご家族も耳が長いですよね。あのリアさんとか」
確かに今まで見てたエルフの中では一番耳が長いだろう。
「そうだね」
「もしかして王族の方ですか?」
レリア姫~もうバレッちゃっていますよ~
「どうしてそう思うんだい?」
僕は動揺を隠しながら聞いた。
「王族は代々耳が長いと噂されているので……、私は見たことないですけど……」
なるほど噂か。
「まあ、そう思うよね。でも別に僕は王族ではないよ」
少なくとも俺はこの国の王族ではない。
「そうですか……でも耳がそれほど長いともてますよね」
耳の長さも容姿のステータスの一種なんだろうな。
長いほどモテるのか……憶えておこう。
「ああ、それが嫌で帽子をかぶっていたんだよ」
僕は少し困った表情を作り言った。
完璧だ……これで疑われまい。
「本当にすいません。もうそろそろ朝食を作らなくてはいけないので」
宿屋の娘さんがそういいながら、宿の裏口へと消えていった。
「……青スラ、お前だろう」
僕がそう言うと耳を覆ってた感覚がなくなり、その代わり右肩に重みがのしかかった。
その肩に腕を伸ばしスライムをつかんで目の前に持ってきた。
「お前……その能力すごいな!」
そう言うとスライムは嬉しそうに体をくねらせた。
「次も頼むぞ。そうだ! レリア姫たちに見せよう。きっと驚くぞ」
そう言うとスライムは指の間から抜け出し、僕の耳をまた覆った。
「さてと部屋に戻るか」
そして僕も宿の裏口に消えた。




