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この星空の下で  作者: sinson
第二章 王都アントワーヌへ
28/32

帽子事変

…帽子事変…


チュンチュンチュン

ああ、朝日が眩しい。

今朝は太陽が昇る前からリリアーヌに叩き起こされ、特訓に付き合わされた。

「スズキ、出発時間早いから、準備急げよ」

リリアーヌはそう言いながら木製のバケツを投げてきた。

「宿の裏に井戸があるから浴びてこい、なかなか気持ち良いぞ」

リリアーヌは濡れた金髪をタオルで拭きながら言った。

「はーい」

僕は、前もって渡されていたタオルと、バケツを持ち宿の裏に移動した。


「よいしょっと」

ザッバー

僕は浴びる為に井戸から水を汲んでいた。

「ふう……さてと」

僕は被っている帽子に手をかけようとしたその時、草むらがガサッと揺れた。

「だ、誰だ! 出てこい」

ガサガサガサ

「す、すいません」

草むらから出てきたのは、この宿の娘さんだった。

「急に音がしたからびっくりしたよ。どうして草むらに隠れていたんだい?」

宿の娘さんは気まずそうに質問に答える。

「あ、あの少し気になることがあったので、確かめようと思って……」

わざわざ草むらに隠れて確認することってなんだろう?

「草むらに隠れなければわからないことなの?」

僕がそう聞くと、その娘さんは首を横に振った。

これって、Noの意味なのか? 日本ではそうだったけど、国によってはYesの意味として使われているよな……ましてはここは地球ではないし、うーん。

よし、どっちでも問題ない返事をしよう。

「そうなんだ、じゃあその確かめたい事を聞くことはできそう?」

僕がそういうと、娘さんは首を縦に振った。

「はい……できなくはないですけど……」

なんだろう、とても気になる。

「怒らないから、言ってみて」

僕がそういうとその子は僕の頭の上を指差した。

「その帽子です。なぜずっと被っているんですか?」

「こ、これは……」

まずいな……

この国、カリーヌ王国では二年前に起きた戦乱で、ベルント帝国そして人族への不信感が高まっているらしい。

アベル……もといバカエルフみたいな人も多いそうだ。

なのでレリア姫に、私が良いと言うまで人族とバレないように、バレたら何が起こるかわからないわと釘を刺された。

「夕食の時もかぶっていたし……何を隠しているんですか?」

かなり怪しまれているようだ。

こんなことになるとは思っていなかった。

どうにかして、リリアーヌあたりに助けを求めるしかない。

「もしかして…………と、とにかくその帽子を脱いでください」

「いや、ちょっとこれには訳があって……」

僕はそう言いながら、宿屋の娘さんがいる宿の裏口の方へ一歩踏み出した。

「いや、近づかないで! 近づいたら騒ぐわよ!」

「わかった、わかったよ。近づかないから」

どうしよう。

騒ぎも起こすなと言われてるし……

ここは時間を稼いで、レリア姫たちが来るのを待とう。

「とりあえず、訳を聞いてほしい」

「言い訳は結構です。早く脱いで耳を見せてください! それとも見せられない理由でもあるのですか!」

娘さんは強い口調で言った。

そりゃ、人族だとバレるからで……とは言えないよなぁ。

「わかったよ……でもそのあとで話を聞いてもらいたい」

「話はあとで聞くので早くしてください」

もうダメだ……仕方ない帽子を脱いだ後説得するか……

そう思い僕は帽子に手をかけた。



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