宿に泊まろう
…宿に泊まろう…
僕らは、馬車に乗り王都アントワーヌに向かった。
何かとても急いでるらしく、夕方まで休憩なし、ノンストップだった。
やっと馬車が小さな町に止まった。
「うっぷ、酔った」
酔い止めを飲んでいたが、酔ってしまった。
「あらスズキ、酔い止めを飲んでおきながらみっともないわね」
レリア姫が涼しげな顔をしながら言った。
「酔い止めが、効かなかったんだ」
僕は苦し紛れにそう答えた。
「酔い止めは効いているわよ、さすがにあの揺れだと普通酔ってしまうわ、ほら、あんな風に」
言われて見ると、顔色の悪いソレーヌが、涼しい風に当たっていた。
「ソレーヌは信用できないと言って、飲まなかったのよ」
レリア姫がそう言った。
そこにリリアーヌがやってきた。
「リア、やっと宿屋があったよ」
あれ? レリア姫とは呼ばないの?
僕はそう思い言おうとした。
「レリアひ……もごもご」
レリア姫に口を押さえられた。
「スズキ! 私、お忍びで来てるの! 他人の前で名前を出さない! 誰に聞かれるか、わからないじゃない!」
帽子で隠れた僕の耳元にレリア姫が、器用に小さな声で怒鳴った。
そう言われると、そうだな。
「ごめん、ならリアと呼ばせてもらうよ」
「頼んだわよ」
レリア姫がそう言うと、僕から離れた。
「やっと野宿から解放だわ、さあ宿に行きましょう」
そして僕らは宿に泊まることになった。
宿に着くとリリアーヌが、受け付けのおじさんから鍵をもらっていた。
「みんな、ごめん、混んでいて1室しか取れなかった。」
「「「えっ」」」
リリアーヌがそう言うと僕、ソレーヌ、レリア姫の声が重なった。
「すまんな、部屋は広いから4人でも寝れるだろう」
エルフのおじさんはすまなそうに言った。
「兄弟だから特に問題はないのだろう?」
おじさんは続けてそう言ってきた。
僕はとっても驚き、間違いを訂正しようとした。
「それは、ちが……」
今度はソレーヌに止められた。
「何も言わないでください」
ソレーヌに小さな声で言われた。
「どうしたんだい?」
おじさんはそう聞いてきた。
「何でもないですわ」
レリア姫がそう答えた。
「でも、その少年が……」
おじさんがそう追求しようとしたが、リリアーヌが抑えた。
「家族の話ですので、あまり踏み込まないでください」
「わ、わかった、奥の部屋です。どうぞごゆっくり」
おじさんはリリアーヌの威圧に負けたみたいだ。
僕は3人に引きずられ、部屋に入った。




