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この星空の下で  作者: sinson
第二章 王都アントワーヌへ
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勇者? 再来

…勇者? 再来…


しばらく歩くと、下に転がった鍋とリリアーヌを見つける。

ホッとした、思った通りリリアーヌが鍋を落としただけのようだ。

「リリ、どうしたの……よ」

私はそこで違和感を感じる。

リリアーヌは私に気付いたようだ。

「ス、ス、スズキが……」

そう言うとリリアーヌは正面を指差した。

顔を上げるとスズキが困惑したような顔をしている。

「たしかにスズキね、それがどうしたのよ」

「か、肩に……」

リリアーヌがそう言うのでスズキの肩をよく見ると、言葉を失った。

スライムを、それも青いスライムを乗せているのだ。

「何か、懐かれたんだけど……ダメだった?」

スズキは気まずそうにそう聞いてきた。

ダメとかそう言った話では済まない、一生に一度見るか見ないかと言われるスライム。

私も絵以外、初めてみた。

そしてそのスライムは、存在自体疑われている、青いスライムだ。


通称、青いスライムの救い。

大雑把に言うと、青いスライムと、それを肩に乗せたエルフの英雄神話だ。

この神話は、カリーヌ王国建国以前から親しまれてきたものだ。


その神話以外に、青いスライムの存在を示すものがない。

その伝説の青いスライムは今、目の前にいる。

それも、スズキの肩に乗っているのだ。

驚くなかれという方が無理だ。

「こいつ、なかなか面白いよ、こうやったら伸びるし、ほら」

そう言いながら、スズキはスライムを両手で伸ばす。

驚愕のあまり固まって、何も言えない。

「ス、スズキ、それ以上はやめてくれ。頭が混乱して死にそうだ」

先に復活したのか、リリアーヌがそう注意した。

「そうか? にしてもこいつ撫で心地最高だよ、よしよしよし」

スズキは猫を可愛がるようにスレイムを撫でている。

わ、私も頭が……

「レリア姫どうしたんですか、こんなと……」

ソレーヌもやってきたようだ。

「あ、あれは……、幻覚ですかね」

「……信じたくないけど、現実みたいね」

スズキと伝説のスライムが戯れているとか、信じたく無い。

「わ、私の王子様が……」

そういえば、ソレーヌはあの神話に出てくるエルフに憧れていたな。

私はそう思ってソレーヌの方を向くと、ソレーヌは糸が切れたかのようにふらっと倒れた。

リリアーヌが、ソレーヌの異変に気付き、駆け寄ってくる。

「ソレーヌ、ソレーヌ! 大丈夫か!」

私は呆然と、その様子を眺めていることしかできなかった。


新年明けましておめでとうございます。

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