勇者? 再来
…勇者? 再来…
しばらく歩くと、下に転がった鍋とリリアーヌを見つける。
ホッとした、思った通りリリアーヌが鍋を落としただけのようだ。
「リリ、どうしたの……よ」
私はそこで違和感を感じる。
リリアーヌは私に気付いたようだ。
「ス、ス、スズキが……」
そう言うとリリアーヌは正面を指差した。
顔を上げるとスズキが困惑したような顔をしている。
「たしかにスズキね、それがどうしたのよ」
「か、肩に……」
リリアーヌがそう言うのでスズキの肩をよく見ると、言葉を失った。
スライムを、それも青いスライムを乗せているのだ。
「何か、懐かれたんだけど……ダメだった?」
スズキは気まずそうにそう聞いてきた。
ダメとかそう言った話では済まない、一生に一度見るか見ないかと言われるスライム。
私も絵以外、初めてみた。
そしてそのスライムは、存在自体疑われている、青いスライムだ。
通称、青いスライムの救い。
大雑把に言うと、青いスライムと、それを肩に乗せたエルフの英雄神話だ。
この神話は、カリーヌ王国建国以前から親しまれてきたものだ。
その神話以外に、青いスライムの存在を示すものがない。
その伝説の青いスライムは今、目の前にいる。
それも、スズキの肩に乗っているのだ。
驚くなかれという方が無理だ。
「こいつ、なかなか面白いよ、こうやったら伸びるし、ほら」
そう言いながら、スズキはスライムを両手で伸ばす。
驚愕のあまり固まって、何も言えない。
「ス、スズキ、それ以上はやめてくれ。頭が混乱して死にそうだ」
先に復活したのか、リリアーヌがそう注意した。
「そうか? にしてもこいつ撫で心地最高だよ、よしよしよし」
スズキは猫を可愛がるようにスレイムを撫でている。
わ、私も頭が……
「レリア姫どうしたんですか、こんなと……」
ソレーヌもやってきたようだ。
「あ、あれは……、幻覚ですかね」
「……信じたくないけど、現実みたいね」
スズキと伝説のスライムが戯れているとか、信じたく無い。
「わ、私の王子様が……」
そういえば、ソレーヌはあの神話に出てくるエルフに憧れていたな。
私はそう思ってソレーヌの方を向くと、ソレーヌは糸が切れたかのようにふらっと倒れた。
リリアーヌが、ソレーヌの異変に気付き、駆け寄ってくる。
「ソレーヌ、ソレーヌ! 大丈夫か!」
私は呆然と、その様子を眺めていることしかできなかった。
新年明けましておめでとうございます。




