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この星空の下で  作者: sinson
第一章 すべての始まり
15/32

揺れる馬車で

…揺れる馬車で…


「は~~っ」

僕は精神的疲労で疲れ果てている。

リリアーヌに運ばれ馬車まで戻ったのはいいが、

いやよくないが、その後レリア姫に散々ネタにされた。

「あら、荷物持ちどころかお荷物になったスズキお嬢様、何かお悩みでも?」

いや、まだネタにされている。

悩みの種はあんただ!

「姫様、やめてください」

お付きのメイド、ソレーヌが言った。

ありがとう、ソレーヌ。

「お荷物のため息など聞きたくありません。こっちも疲れてきます」

前言撤回、あんたもひどい。

まあでも前回、馬車に乗った時よりはマシだ。

あの時僕は、この揺れに酔って気分が悪くなった。

そして、後頭部を殴られ気絶してしまったし。


ソレーヌが何だか近づいてきた。

「聞きたいことがあるのですが……」

何だろう。

「どうしたの?」

「あなたは何者ですか?」

ああっ、言ってなかったか……

なんて言えばいいのだろう。

まず、正直に言う。

だめだ、変人扱いされる。

旅人とかどうだろう。

いや、色々聞かれたら確実にボロが出そうだ。

こうなれば誤魔化すか……


深く考え込んでいた頭にソレーヌの声が響いてくる。

「あの~聞こえてますか」

意識が現実に戻された。

やべ、早く返事をしなきゃ。

「えっとですね……あっそうだ、これからど……」

「スズキ、誤魔化すのはだめよ」

だめだ、レリア姫によって退路が断たれた。

こうなれば……あれしかない。

「じ、じつは、おおおぼえていないのです。」

やべ思いっきりどもってしまった。

ソレーヌとレリア姫はなんだか冷たい目線を送ってくる。

「そんなのな……」

「ソレーヌ、もういいわ、ところで記憶のないのスズキさん」

レリア姫は、僕の目を覗き込むかのように見てきた。

「あなたは、どこまで覚えていないの?」

えっとどこまで覚えていないことにしようか。

名前、と年齢、性別ぐらいは覚えていても問題ないだろう。

あっ、持ち物も知っていないとやばいかも、そこ突かれると痛いし。


今度はレリア姫の声が響いた。

「スズキ!」

またもや、思考の海に行ってしまっていた。

「えっと、レリア姫。少なくとも自分に関することと、このリュックサックの中身は覚えています」

「ふーん、そうなんだ~、でさっき飲んでいたものは何?」

レリア姫が興味深そうに聞いてきた。

う〜ん、酔い止めぐらい言ってもいいのだろう。

「酔い止めです」

僕の答えを聞き、ソレーヌが言う。

「酔い止め?酔い止めって外を見るか、涼しい風にあたるぐらいじゃないですか」

それにレリア姫が答えた。

「さっき馬車に乗る前に、スズキがなんだかキラキラした板を押して出してたあれよ」

「ああ、あれですか、あの小さい粒に酔い止め効果があるんですか?」

ソレーヌは不思議そうに僕ではなく、レリア姫に聞いた、ってなんでだよ。

「今のスズキをご覧なさい。前に乗った時と違い、全く騒がしくないわ」

「確かに、すごいです、姫様」

ソレーヌはキラキラした目でレリア姫を見た。

すごいのはこの酔い止めだと思うのだけど……

「それを、見せて、キラキラした板ごと」

レリア姫がそう言って右手を差しのばした。


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