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I'm here for you  作者: 君影しのぶ
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立花垂穂 Taruho Tachibana

紹介編 一人目

 うちの学校は変だ。

 いや、幼小中高とこの学校に所属し小等部より寮生活をおくってきた俺が、ココ以外の学校はどんなモノなのか実体験としては知るわけがない。

 が、知識を得ていくうちにおかしいぞと思いだす。そして、決定的なのは高等部より外部から来た友人。変だときっぱりはっきり断言されやっぱりかと疑いなく納得した。


 ちなみにココ、聖代学園は幼稚舎から始まり大学院まであり、幼稚舎から高等部までは男子オンリーだが大学部からは共学になるので、変なのは高等部までであろうと推測される。

 ……まぁ、かなり俺の願望が入っている推測ではあるが。




「月哉様、課題を見せてくださいっ」

 恥も外聞もなく頭を下げると、長い前髪の奥にある分厚い眼鏡がキラリと光る。

 怖いです。

「してこなかったの?」

 たぶん、前髪切って眼鏡を変えるかコンタクトにするかしたら、キミはもっと友達が増えると思うな。俺らがいるから増やす必要はないけど。

「してきてません」

 待ち望んでいたゲームがですね、やっと昨日届いたのですよ! 課題なんてやってる場合じゃないでしょうっ!

 今はファミコンにハマっててさ。ネットオークションに暇さえあれば接続している。

 そして長い間欲しかったクラシックゲームの一本がやっと手に入ったとあっちゃあ……。

「馬鹿なの?」

「ハイ、馬鹿デス」

 心の叫びは口に出さなかったが、俺という人間がどういう人間か一ヶ月足らずで把握してしまった元外部生はため息をついた。

「ほっとけ、馬鹿は痛い目を見ないとなおらん」

 なんだかんだ言って優しい月哉はノートを広げ出すが、当然のように横やりが入った。

 この課題を出した教師が課題をしてこなかった生徒をどう扱う人間か分かっているくせに……いや、分かっているからこそ、そんなことを言う平凡は平凡にあるまじき威圧感を発していた。

「要ちゃん……」

 名前を呼んだ途端、バシッと頭を叩かれる。

「いいじゃん、要ちゃんって可愛くて」

 なんて言った月哉は叩かれない。

「差別だ」

「馬鹿は痛い目を見せないとな」

 偉そうなこの上から目線の平凡は、顔こそ一般大衆に埋もれてしまいそうではあるが、学年トップの頭脳を誇る。

 母方の名字を使っているのでバレていないが、幼稚舎からの友人である俺達幼なじみ連中は知っている。コイツの家は世界展開しているとある同族経営企業で、自身は跡取り息子であると。

「要、暴力はいけないよ」

 これ以上ないだろうというぐらいの棒読みで月哉が対峙している俺たちに言ったが、その手は携帯端末を弄っているし視線はその画面を注視している。

 完全にオタ……げふん、げふん。

 俺の考えていることを察知したようにキラリと眼鏡がまた光った。

「また、アイツか」

 要さん、なんでそんな苦々しげなんですか?

「中等部に編入してくるみたい」

「ブラコンが……」

 話についていけず首を傾げる俺に、月哉の唯一よく見える唇も苦笑いを刻んだ。

 ……ちゃんとしたら、かなりいい線いく気がするんだけどな。形の良い唇と顎の線を見つめながら俺が考えていると、またバシッと頭に衝撃が走る。

「見るな、減る」

 はっ?

「減らないよ、要」

「いや、減る。俺が減るって思ったら減るんだ」

 もうやだ、この俺様……。

 月哉は要のルームメイトだ。

 どうやらこの学校に来る前からの知り合いらしく、珍しく要が権力を行使してルームメイトにしたようだ。

 それはつまり、俺の側から見ると幼稚舎から慣れ親しんだルームメイトに追い出されたってこと。

 追い出されて落ち込んでいる俺をフォローしたのは、追い出した要ではなく、本人の意図しないところで要因となった月哉である。

 しかしその一件ですっかり月哉に懐いた俺が気に入らない要は、ことある事にちくちくイジメてくれるのであった。

 ……俺、虐げられすぎじゃね?

 てか、要って月哉に惚れすぎじゃね? 要の差し金で同室になったって知っている人間が少ないから噂になってないけど、確実にそうだよね。


 気を取り直す。

「月哉って兄弟いるんだ?」

「兄一人弟一人」

「ふ~ん、弟、可愛い?」

 ちなみに、要には弟妹がいるが外見だけはちまちましてて可愛らしい。中身は兄貴に準ずる。

 そして、俺は一人っ子。兄弟に憧れていたが、要の弟妹により夢破れた……。

「カワイイ……?」

 なんか面妖なことを聞いたって反応だな。

「お前のとこもかわいげがないのか……」

「一個しかかわらないしな……アイツ、もう俺よりデカいし」

「アイツに比べたら、俺のとこのジャリどももまだ可愛いだろう」

「まぁ、お前のとこは確かに可愛いよな。まだ小さいし」

 要のミニ版のアレらが可愛いだとう?

 しかも小さいことがそんなに重要か。

「垂穂もあったことある?」

「あるよ……」

 あまり思い出したくない記憶だ。

「可愛いよねぇ」

 うなずけない。うなずけないぞ……。

「要……」

 こっそり耳打ちする。

「もしかして月哉は懐かれているのか?」

「……兄貴の俺によりも懐いているぞ」

 さすが要のミニ版……。

「月哉の兄弟は強烈だぞ」

「そんなに……?」

「あんなブラコン見たことない」

 ……お前に強烈って言われるほどとは、どんだけなんだ。

「なに二人でこそこそしてるの?」

「お前の弟が来たら大変だって話だ」

「やっぱりそう思う? 今年はまだ大丈夫として、問題は来年だよね……」

 いや、ホントどんだけ?

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