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1-4.5

勢いよく生徒会室のトビラが開いた。

入ってきたのはいかにも機嫌が悪そうな顔をした男子生徒。俺と同じ2年だな。

「今日一体何が起きているんだ。1回目は見逃したがさすがに1日に2回目となると見逃せんぞ。説明してもらおうか」

このタイミングで入ってきたということは、こいつも吸血鬼か。これで今日1日で4人も吸血鬼に出会ったぞ。いや、生徒会メンバーの中にもどうせ吸血鬼いるだろうから実際はもっとなんだろうが。

長瀬が小声で俺に教えてくれる。

「あいつの名前は華京院竜(かきょういん とおる)。俺達と同じだ。で吸血鬼の中で古くからある血筋の御曹司。将来の出世が約束されているエリート中のエリート。当然秀才だ。リーダーシップもあって、こいつの下につく学生も多いらしい」

いかにも!って感じだな。人間の世界に上下関係身分の差があるように、吸血鬼の世界にも当然のようにあるわけか。


長瀬が続ける

「生徒会に入っているわけじゃないんだが色々と口出ししてくる。今回はおそらく血の匂いを嗅ぎつけたんだろう、俺が一番心配していたんけど予想通りになったか…」

吸血鬼は当然嗅覚が人間よりも優れている。その中でも血の匂いには特に敏感で結構な距離が離れていても気づくらしい。実際こいつも気づいたのだろう。

華京院は俺のほうをチラりと見た。

「見慣れない顔が一人いるな。見たところただの人間のようだが…」

「ええ、そうよ。確かに先程彼の血を吸ったわ。ちなみに朝にも相沢さんが彼の血を吸ったわ」

華京院の顔がさらに険しくなる。そして俺を睨みつける。

「おいそこの人間、もしこのことをバラしたら命は無いと思え、俺はこのことを知らせなければ」

といいながら生徒会室を出ようとしたが生徒会長に止められた。

「待って竜。丁度良いわ。あなたも話を聞いていきなさい。重大なことだから」

「俺は今忙しいんが…チッ、まあいい。お前が呼び止めるほどだ、何かあるんだろう」

華京院は嫌々ながら踵を返す。



「さて、話を戻すけど。この人間_百鬼君というわ。今回の話し合いは彼についてのものよ。長瀬君、彼にもわかるように吸血鬼伝承とはどんなものか答えてくれるかしら」


「吸血鬼伝承。俺らが吸血鬼としての教育を受けるとき最優先で覚えさせられることだ。さっきも言ったが吸血鬼の歴史といってもらっていい。偉人の生年月日から難病の治し方まで色々書かれている。で、今回重要になってくるのは『伝説』部分だな。」


華京院が確認するように声を出す。

「胡散臭い記述ばかりの部分だな。確証が無かったり、考えられないような事象がそこに分類される。事実なのかどうかはともかく、もしもそれが事実なら世界を根本から揺るがす事件に発展しかねないようなことばかり書かれていたはず。そこがどうした、フッ まさかこの人間が伝説的存在だとでも?馬鹿馬鹿しい」

聞くだけ無駄だったとでもいうような表情の華京院。それほどまでに伝説ってのはありえないことばかりなのだろうか。

「彼がサキュバスだといっても?」

俺がサキュバス?サキュバスなら聞いたことがあるぞ。確か、男を惑わせて生命力だか精力だかを奪う夢魔だったはず。どっかの映画で見た設定まんま言ってるだけだが

女の夢魔がサキュバス、男の夢魔がインキュバスだと記憶しているが…俺は男だぞ。サキュバスじゃなくてイキュバスじゃないのか?というかどっちにしろ、それじゃ俺悪魔じゃねーか、俺って人間じゃなかったのか?

いや、待て俺。俺の両親は両方ちょっと変だが人間だぞ。

「いや、俺人間だろ。そもそもサキュバスって女の夢魔だろ?俺男だぞ」

思ったことを言った俺だったが完全にスルーされた。的外れなことを言っているのだろうか。俺の知識上は正しいことだと思うんだが…

「バ、バカな…サキュバスだと?そんなありえない力を持った奴がいるなんて信じられるか。こいつを見ても特に何も感じないんだぞ。本当にサキュバスだとするなら」

と勝手に話を進めてしまっている。何を言っているか全く分からん。

困っていると親切な長瀬が囁いて教えてくれた。

「お前の言ってるサキュバスと、俺らの言ってるサキュバスはベツモンだ。力が似ていたから、その名を借りただけでイコールじゃない」

なるほど、吸血鬼伝承上のサキュバスは俺の知ってる夢魔って意味のサキュバスとは違うってことか。

「長瀬サンキュ」

そんな会話が聞こえたからか、小難しいことばかり言っていた華京院が説明を交えた話に切り替えた。

「吸血鬼伝承でのサキュバス。吸血鬼を誘惑し自らの血を吸わせる代わりに、吸血鬼の力を奪う能力や吸血鬼を操る能力などを持つ。また、通常の人間より遥かに多い量の血が生成されるようになっているらしいが、稀にしか現れないため詳細な情報は一切無し。

吸血鬼にとっては非常に厄介な力で、伝承上では3度その存在が記述されている。一度目は己の力をコントロールできず、その存在を恐れるものや信教するものが現れ対立、大戦争の引き金になった。上位の吸血鬼が総出でサキュバスを滅ぼしたという。

二度目は自らの力を最大限利用し吸血鬼界のトップ近くまで上り詰めた。また、人望も厚くサキュバスとしての力を行使せずともトップまでいけたのではないかと言われている。

三度目はサキュバスと子を成すと最強の吸血鬼が生まれると言われサキュバスの奪い合いが発生。サキュバスの精神が病んで耐えられなくなり自殺。


ようは、サキュバスってのは吸血鬼を惑わす奴。すごい奴はトップに立ったが、戦争の原因になったり自分の子孫問題なんてくだらないことで自殺した奴もいる。 ってことか。確かにすごい力だ。

「ちなみに、三度目のサキュバスの出現は戦数百年前らしいぜ」

長瀬が追加で教えてくれた。

ん、でも確か人間と吸血鬼の間には子供が出来ないんじゃなかったか。じゃあサキュバスって人間じゃいのだろうか。

「人間と吸血鬼の間には子供は出来ないんだろ?じゃあ一体サキュバスはどんな存在なんだ?」

「俺達が知っているのは伝承から仕入れた情報だけだ。詳しいことは知らん」

華京院は早々と答えた。千年以上も前のことなら知ってるわけねーか。

「サキュバスがどんな存在なのかなどどうでもいい、そんなことよりこんなバカそうな奴が本当に伝説のサキュバスなのか?」


「俺はそうだと思うぜ。今は感じないけど、朝こいつが放っていたオーラみたいな?何かは俺の理性を完全に飛ばしたからな。相沢もそうだろ」

「ええ、なんていうんだろう。とにかく本能に直接訴えかけられる感じ?多分1回味わってみないと分からないと思う」

「一回味わってって…俺は食い物じゃねーぞ!」

さすがの俺も黙っていられるわけがない。人を馬鹿にしてんのか?

「ここで私が先程血を吸った理由になるわけ。今は全くといって言いほどそういう感じがしないかもしれないけれど、彼の血を飲んでみてわかったわ。彼はサキュバスである可能性が高い。もしくはオールマイティ持ちか。けれど、長瀬君たちが言っていたことから考えるに、オールマイティではなくサキュバスである可能性が高い。それが私の結論よ」

オールマイティ?ボードゲームとかでよくみる何の役にでもなるっていうアレか。

華京院は考え込んでいる

「聖沢ですら吸える血だと…?それならば俺もいけるか…?」

さっぱりだ 

「吸血鬼は力が強い人ほど血の好み?というか吸える血を持つものが少なくなるんだ。でオールマイティっていうのは極稀に、本当稀なんだぞ、どんな力の強い吸血鬼でも吸うことが出来る体質の奴がいるんだよ。ちなみにサキュバスは無条件でオールマイティと同じような特性らしい」

吸血鬼として力が弱い人は力が弱いかわりにどんな人間の血でもパワーアップできる。

そして力の強い吸血鬼は強い代わりに吸える人間が限られてくるってことか。

今の話を聞いている限り、華京院と生徒会長はかなり力が強い部類の吸血鬼ってことだろうか。

「聖沢家と華京院家みたいに、力は遺伝するんだよ。だから名家なほど力が強い。生徒会長とか華京院も相当力が強い。だから吸える血を持つものって相当限られているらしい。名家の人間は事実上オールマイティ持ち以外から血を吸って力を得るのは絶望的だとか」

へぇ。でも名家っていうんだから、自家専用のオールマイティ能力持ち人間を雇ってそうだ。吸血鬼の存在を話さないだけで相当の金がもらえるなら喜んでやるだろうしな


俺の考えたことがわかっているかのように、長瀬が苦笑して言う

「さっき言った通りオールマイティ持ちは超貴重だからな。百鬼が思ってるほどゴロゴロ転がってる存在じゃない。あと、血の増加速度は一般人と同じだ。だからそう頻繁に同じ人から血はもらえない。ま、だからこそオールマイティの奴は貴重なんだけどな」

「あと、力が得られない人間からは血は吸えない。だから名家になればなるほど本能の欲求を抑える必要があるんだ。こいつらは多分血を吸ったことなんて無かったんじゃないか?」

さっきが生徒会長の初めての吸血だったわけか

でもよく考えたら相沢と比べたら血を吸うのが上手くなかったか?やっぱり血を吸ったことある気がするな


その後、現時点での知識では到底現状把握すら難しいだろうということでそのまま解散となった。明日の放課後までに各方面から情報を仕入れてくるらしい。

とんだ一日だったぜ。2人から血を吸われ、「我々は吸血鬼だ」と説明されて。さらには俺は伝説的な存在のサキュバスかもしれない!だぜ。

まったく、退屈しない高校生活になりそうだ。




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